10月24日、日本交渉協会主催の第9回ネゴシエーション研究フォーラムに参加してきました。
今回の講師は、Gift Your Life株式会社・代表取締役の豊福公平さん。「すごい交渉術~交渉の神様が教えてくれた5つの法則~」と題してお話いただきました。
ハイバーレスキュー隊員から外資系大手生命保険会社へ転職、ライフプランナーとして活躍された後、会社を設立された豊福さん。聞いたことのあるプロフィールだと思っていましたら、以前豊福さんの御著書『すごい交渉術』を読んだことがあったのを思い出しました。
本題に入る前からまず感じられたのは、豊福さんの熱のこもったお話のされ方です。勇気なのか活力なのか誠実さなのか、人により様々な感じ方があったのではないかと思いますが、いずれにせよその会場を包み込んだ「熱」が今回の講義そのものを一層魅力的なものにしたことは間違いないと思われます。本当に人に響くものは、「何を話したか」よりも「どのように話したか」なのだなと改めて感じた次第です。
さて、タイトルにもある通り、第一部は「交渉の5つのステップ」についてのお話だったのですが、お話の前提となるキーワードがまず2つありました。ひとつは、「交渉は勝ち負けではない」ということ、もう一つは交渉を通じて“Getting more”(少しずつ改善していく)という基本姿勢です。後者は特に交渉学の世界的権威である、ペンシルバニア大学ウォートン校のスチュアート・ダイアモンド氏の言葉だそうです。
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その上での、「交渉の5つのステップ」を以下にまとめたいと思います。
1.目標の確認
・明確であるか。
・相手によりルールやスタンスが異なる。
・不等価交換が大切。
・ありのままの自分でいる。
2.準備
・目標の再確認。
・最悪の事態を想定しておくこと。
・可能な限りの情報収集。
3.交渉の現場
・互いのニーズを知る。
・100%の貢献に徹する(勝ち負けではない)。
・交渉が上手くいっているかをチェックする。
4.アプローチ
・新たなアイデアはないか。
・相手の障害となっているものはないか。
・第三者の影響力は。
5.行動
・交渉成立とフォローアップ。
・交渉を習慣化する。
より詳しくは、前述の『すごい交渉術』をお読みいただければと思います。
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この5つのステップから見えてくることは、交渉とは「人間力」であるということです。即ち、相手との違いは利益の宝庫であり、信頼関係構築のための宝庫であるということ。最近、何かの本で読みましたが、「好き」と「嫌い」という正反対に見える感情は、脳から見ると実は余り違いがないのだそうです。それゆえ「好き」も「嫌い」も容易に逆転しえます。「好き」の本当の反対語とは、「無関心(無視)」なのだそうです。
そして、ありのままの自分でいること。誰の得にもならないようなことは言わないこと、しないこと。つまり、交渉とは人生のあらゆる場面に存在し、人生に活力を与え、そして人生を輝かせるものであるというのが第一部の結論でした。
第二部は、交渉が人生をより良くする("Getting more”)ものであるならば、交渉主体である「自分」にもっと焦点を当てて良いのではないかというお話でした。すなわち、まず自分が本当に大切にしている価値観(アイデンティティ)に気づくこと。そして人の持つ価値観は十人十色であるということを認識すること。そのために36枚の価値観カードの中から自分が本当に大切にしている価値観を6つ絞込み、さらにそれを絞り込んでいくというワークを行いました。
多くの人が人生の大小様々なレベルで目標を立てながら、叶わずに終っていることの原因は、その目標が自分のアイデンティティと合致していないからだそうです。逆に合致していれば、それを具体的にイメージできますし、日常の行動に無理なく落とすことができます。そして、実践頻度が高ければ高いほど願いが叶う確度は高まるということです。豊福さんの会社では、それを個人ばかりでなく、組織のレベルで落とし込み、毎日実践しているのだそうです。
繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした