窪田恭史のリサイクルライフ

古着を扱う横浜の襤褸(ぼろ)屋さんのブログ。日記、繊維リサイクルの歴史、ウエスものがたり、リサイクル軍手、趣味の話など。

国力とは何か―経済ナショナリズムの理論と政策

2011年07月23日 | レビュー(本・映画等)
  本書は、2008年に出版された『経済はナショナリズムで動く』(PHP研究所、絶版)を加筆・改訂したものです。

  『経済は~』の時もそうでしたが、本書をお読みになられ、「当たり前のことを当たり前に述べているだけではないか」という感想をお持ちになられた方も多いのではないかと思います。実際、その通りだと思います。

  その「当たり前」を何故改めて問い直さなければならないのか。それはわが国の支配的な言論にその「当たり前」がほとんど見られない、あるいは誤解されているために、「当たり前が当たり前ではない世の中」になってしまっているからであろうと思います。

  詳細は本書をお読みいただくとして、ここでは本書の最も重要な概念である「経済ナショナリズム」について簡単に整理してみたいと思います。

  まず、経済ナショナリズムを理解するには、一言で「クニ」と言ったときのステイト(国家)とネイション(国民)を明確に区別なければなりません。経済ナショナリズムに対する誤解の多くは、そもそもこのステイトとネイションの区別が曖昧であるところにあります。

  本書によれば、ステイト(国家)とは、「政治的・法的な制度あるいは組織」(p.78)のことであり、我々が一般的にイメージする政府や省庁がこれにあたります。これに対し、ネイション(国民)とは、社会学者のアンソニー・スミスの定義によれば、「歴史的領土、共通の神話や歴史的記憶、大衆、公的文化、共通する経済、構成員に対する共通する法的権利義務を共有する特定の人々」(p.78)のことを指します。すなわち、ネイション(国民)とは、「構成員の社会的想念によって統合される共同体」と言い換えることができます。

  したがって、ナショナリズムとは、「ネイション(国民)に対する忠誠のイデオロギーあるいは感情」(p.78)を言うのであり、政府などステイト(国家)に対する忠誠のイデオロギーはステイティズムとしてナショナリズムとは明確に区別されます。

  以上のことを理解すると、経済ナショナリズムは「ネイション(国民)に対する忠誠のイデオロギーを持った経済政策」となり、その目的は「ネイション(国民)の経済的利益の増大」ということになります。経済ナショナリストにとって、ステイト(国家)は「ネイション(国民)の経済発展のために必要な手段」(p.81)なのです。

  経済ナショナリズムは、経済自由主義と対立する概念であるかのように誤解されていますが、経済ナショナリストの目的はネイション(国民)の経済的利益の増大ですから、採用する経済政策はその目的に適うと想定される限りにおいて、プラグマティックに変化します。つまり、目的に応じて保護主義的政策を採用することもあれば、経済自由主義的政策を採用することもあるのです。したがって、経済ナショナリズム=保護主義というのは誤っています。この点については、より具体的な以下の著作についてのレビューも掲載しておりますので、そちらもご覧いただければと思います。

自由貿易の罠 覚醒する保護主義
「TPP開国論のウソ」①
「TPP開国論のウソ」②
「TPP開国論のウソ」③
「TPP開国論のウソ」④
「TPP開国論のウソ」⑤

  ゆえに、経済ナショナリストは、ステイト(国家)の利益には合致するが、ネイション(国民)の不利益に繋がるような政策には反対します。例えば、国民にとって不利益であるにも関わらず、省益拡大を企図したような政策などです。個人的には昨今のデフレ下における増税論などまさにその様なものではないかと考えていますが、そうした政策には反対の立場を採ります。

 以上が、経済ナショナリズムについての極基本的な理解です。この経済ナショナリズムが何故今重要であるのでしょうか。それは、70年代末に興り、90年代以降文字通りグローバルな規模で急拡大した経済自由主義の極端な形態である「新自由主義」の破綻が、2008年以降、誰の目にも明らかになっているにもかかわらず、わが国の支配的な言論がそうしたイデオロギーから未だに一歩も抜け出せていないからです。

 2008年以降、僕は複数の経済学者から「人々を幸せにすると信じて打ち込んできた経済学が本当に人を幸せにするのか疑わしくなってきた」という告白を聞かされたことがあります。それは、経済学の主流である新古典派の想定する「経済厚生の最大化」が、元より完全情報や金銭的利益のみに動機付けられる合理的個人というおよそ現実ではあり得ない仮定の下に導き出された結論であるからというだけではなく、経済学のいう経済厚生は必ずしもネイション(国民)の経済的利益とは一致しないということが明らかになったからではないでしょうか。

 経済ナショナリズムを理解すること、それは経済政策の目的が「国民の経済的利益を増大させること」という「当たり前」に立ち返るということなのです。

国力とは何か―経済ナショナリズムの理論と政策 (講談社現代新書)
クリエーター情報なし
講談社


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ARINCOの夏限定シーズンロール「夏」

2011年07月18日 | 食べ歩きデータベース


 最近、桜木町に行く機会がなく、遅くなってしまいましたが、「」の時もご紹介したARINCOさんのシーズンロール「夏」です。



 「春」の時と同様、しっとりとした純白のスポンジに爽やかな酸味のクリームチーズと生クリームを合わせ、そこに夏らしく桃の果肉がたっぷりと入っています。良く冷やしてから食べると美味しいです。

 「春」の時の牛皮のような、ちょっと驚きの捻りはありませんでしたが、逆にこのシンプルさがこの蒸し暑い夏にはちょうどよいと思います。


ARINCO Colette-Mare みなとみらい店

横浜市中区桜木町1-1-7
Colette-Mare みなとみらいB1



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第10回YMSを開催しました

2011年07月14日 | YMS情報


  2011年7月13日、横浜伊勢佐木町のCross Streetにて、記念すべき第10回のYMSを開催しました。



  会場となったCross Streetは伊勢佐木町商店街と横浜市が最近作ったアートを愛する人たちのためのイベントスペース(同HPより)です。入口を入るとすぐ、ここ横浜・伊勢佐木町からメジャーに駆け上がった「ゆず」の大きなサインが掲げられています。会場も今回のテーマにピッタリであったかと思います。



  さて、過去9回は中小企業経営者の参加者を主体として勉強会を続けてきましたが、今回は趣向を変え、「町興しとビジネスについてのフリートーク」と題し、小林紙工株式会社代表取締役の小林光政様と株式会社エデュイットジャパン代表取締役、シネマ・ジャック&ベティ支配人の梶原俊幸様をお招きし、YMS事務局メンバーである渡邉清高さんと共にパネルディスカッション形式で行いました。

  その内容は、小林社長の「商人といえども自分のフィールド(市場)を自分で耕さなければならない」(これを社長は「商人農耕論」と呼んでおられました)という言葉に表されるとおり、中小企業が立脚しているところの地域を自ら耕し、文化を育て、人が集うことにより結果として自らも発展していくというものです。お話の中で、社長の「文化は消費しない資源である。消費しないどころか、使うことによってむしろ増えていくのである」という言葉が非常に印象に残りました。

  小林社長は、青年会議所時代から横浜版環状鉄道を構想するなど、その構想力と行動力には拝聴しているこちらまで勇躍するものがありましたが、例えば「野毛大道芸」などは今や横浜の一文化としてすっかり定着しています。また、今回のテーマの具体的事例でもあり、良く知られているところでは、かつて青線地帯と呼ばれた日ノ出町・初音町・黄金町界隈の地域浄化活動が挙げられるでしょう。

  これらの地域は元々大岡川を利用した物流により問屋街として栄えた地域でしたが、戦後は「青線地帯」(昭和30年代まで合法の売春街であった「赤線」に対し、非合法の売春街だったので、そう呼ばれました)に変貌し、赤線が廃止された後もつい最近まで売春街として残っていました。特に戦後の街の様子は売春・麻薬取引のメッカとして、黒澤明監督の映画「天国と地獄」でも描かれたほどです。したがって、周辺地域の住民には「怖い街」という印象が強かったのです。

  地域住民と警察が協力し、売春宿の一斉摘発を行ったのは2004年のことです。小林社長曰く、実際には住民と地元警察だけでこのような取り組みを行うことは難しく、地元自治体や入管など関係機関が摘発の実行とその後の処理の問題まで含め一致協力して行なわなければ、このような大掛かりな地域浄化は不可能だったそうです。

  その後、地域再生の取り組みとして、防犯拠点の設置や、武道場による人間教育、空き店舗にアーティストを集め「文化芸術振興の街」を目指すなど、様々なことが行われました。株式会社エデュイットジャパンの梶原社長が横浜に来たのはちょうどその少し前のことでした。



  梶原社長は元々吉祥寺の方でしたが、地域浄化後にゴーストタウン化した黄金町界隈のことを知り、また同地域の歴史を調べるにつれ、興味を持たれたそうです。梶原社長は2006年、「黄金町プロジェクト」というサイトを立ち上げ、この地域のこれからのあり方や、活性化のためのアイデアを自由に構想し発信する活動を始められたそうです。やがて、地元の古い映画館を買取り、シネマ・ジャック&ベティをオープン。昔ながらのレトロな雰囲気を活かしつつ、神奈川県下唯一の独立系映画館として自ら選んだユニークな作品を上映しています。興味深かったのは、古本屋を舞台にした映画を上映した際、お客さんが鑑賞後に地域の古本屋を探訪できるよう、「横浜下町古書店マップ」を作成し、配布したそうです。これぞ文化指向だと感心した次第。



  今回のYMSは、そのシネマ・ジャック&ベティ見学会も行われました。話を聞くだけでなく自分たちの目で確かめに行くことができるというのも地元で行うYMSらしさだと思います。デジタルシネマの時代ですが、貴重なフィルム時代の映写室を見学させていただきました。



  そして恒例の親睦会は映画館に隣接する中華料理店「聚香園」にて。驚くほど安くてボリュームがあり、かつ美味しかったのでこちらも嬉しい収穫でした。


Cross Street

横浜市中区伊勢佐木町4-123



シネマ・ジャック&ベティ

横浜市中区若葉町3-51

中国料理 聚香園

横浜市中区若葉町3-51-3



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暑さ対策に便利な冷感スプレー

2011年07月14日 | リサイクル(しごと)の話


  梅雨もいつの間にか明けてしまい、連日の猛暑の中、皆様いかがお過ごしでしょうか?

  今回は、そんな暑さ対策に重宝する冷感スプレー「涼しいの何でか?」のご紹介です。どこに商品名が書いてあるのかと思いましたら、「涼しいの何でか?」というのが商品名でした。

  当社でもお勧めしているこの商品、スプレーした時の冷感は市販の冷感スプレーほどでもないのですが、後から効果が出始め、そして長く持続するのが特徴です。特に暑い所から電車の車内など涼しいところに入ったときには冷たく感じます。皮膚への直接の吹き付けは避けていただきたいのですが、肌着、シャツの上からでも十分効果があります。また、匂いもほとんどありません。

  この夏も常にスーツにネクタイという僕も、これがあるとジャケットを着ていても暑くないので大変重宝しています。よく振ってからお使いください。

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淑徳大学で「よみがえり」のお話をさせていただきました

2011年07月13日 | リサイクル軍手の世界
  久し振りのブログ更新です。



  7月12日、淑徳大学エクステンションセンター、岡本慶一先生の講座「マーケティング最前線 文化志向のマーケティング」にて、「特殊紡績手袋 よみがえり」のお話をさせていただきました。



  岡本先生には4年ほど前からお世話になっていますが、実は「よみがえり」の誕生には、岡本先生からの多くの学びが関係しています。

  そうしたこともあり、昨日は誕生からちょうど2年を経過した「よみがえり」の現状を誕生の経緯からご報告させていただいた次第です。

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2011年6月アクセスランキング

2011年07月01日 | 人気記事ランキング
  2011年6月にアクセスの多かった記事、ベスト10です。

  6月は全て当月に掲載した記事がランクインしました。

  その中で、「第9回YMSを開催しました」が1位となったのは意外でした。そのYMSは早いもので、今月第10回を迎えます。これまでのYMS活動記録については、当ブログのカテゴリ「YMS情報」をご覧ください。

  2位・4位・7位に「特殊紡績手袋 よみがえり」に関する記事。7位の「横浜大世界でウケているようです」は、30日の更新でわずか1日にもかかわらずランクインしました。また、最近「よみがえり、使ってるよ」という声をいただくことが多くなりました。ありがとうございます。

  同2位の「日本プロ野球2011 横浜vsロッテ交流戦」ですが、5月の巨人戦に関する記事より多くのアクセスがありました。時代の変わりようを感じさせます。

  その他、4位・6位・8位・9位に日光関連の話題が入りました。

1 第9回YMSを開催しました
2 ヨコハマ・グッズ001特別賞授与式がありました
2 日本プロ野球2011 横浜vsロッテ交流戦
4 華厳の滝
5 「よみがえり」が動画配信されています
6 日光二荒山(ふたらさん)神社
7 横浜大世界でウケているようです
8 日光東照宮②
9 2011年5月アクセスランキング
9 大猷院

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