窪田恭史のリサイクルライフ

古着を扱う横浜の襤褸(ぼろ)屋さんのブログ。日記、繊維リサイクルの歴史、ウエスものがたり、リサイクル軍手、趣味の話など。

仕事を活かす交渉理論―第67回燮(やわらぎ)会

2024年12月12日 | 交渉アナリスト関係


 2024年12月6日、品川区の文化コミュニティ施設「きゅりあん」にて第67回燮会が開催されました。燮会は日本交渉協会が主催する交渉アナリスト1級会員のための勉強会です。今回も新1級会員の皆さんを含む大勢の皆様にご参加いただきました。ありがとうございます。



 今回も前回の北九州大会に続き、2部制で行われました。第1部は定例の「交渉理論研究」第25回。「第三者の介入(1)」と題してお話しさせていただきました。



 これまでは、主に二者間交渉を前提として議論を進めてきました。今回のテーマは、その二者間交渉に第三者が介入するパターンを想定します。第三者介入の形態は、ファシリテーター、調停者(メディエーター)、仲裁者(アービトレーター)に分類されますが、ここでは仲裁者について扱います。

 特に、「非評価的仲裁」という、ジャッジではなく解決策を提案する、どちらかといえば調停者に近い仲裁を行うNJA(中立的共同分析家)という第三者を想定します。NJAは交渉を可能な限りFOTE条件(完全情報に近い条件)で分析し、それを基に「公平な分配」を解決策として提案します。公平分配については、「第22回交渉理論研究」で規範的解として、① 合計最大基準(双方の価値の合計が一番大きくなる合意点を選ぶ)、② 最大最小基準(取り分が少ない方の価値が最大になる合意点を選ぶ)、③ ナッシュ交渉解(資源配分が最も効率的な合意点を選ぶ)をご紹介しましたが、次回はさらに一歩踏み込んだ規範的解を検討します。



 第2部は、1級会員松丸昌幸さんによる事例発表。「交渉理論を組み込んだコミュニケーションエラーの分析」と題してお話しいただきました。

 およそ30年にわたり医薬品業界で勤務されている松丸さん。医薬品業界には、MR(医薬情報担当者)と呼ばれる職種があります。MRは、製薬会社を代表して、医薬品の適正使用のため医療関係者に医薬情報(医薬品の品質、有効性、安全性など)を提供する役割を担っています。一般に医薬品の営業と思われがちですが、医療機関への医薬品の販売は法令によりおこなうことができず、これはMSと呼ばれる医薬品卸売会社の営業職が行います。

 交渉アナリストとしての観点から見た松丸さんの問題意識は、MRという仕事は、患者の利益、医療従事者の利益、副作用(という不利益)に関する情報提供を通じて、無意識に価値創造型の統合型交渉を行っているにもかかわらず、多くの場合、医療従事者の理解(類推)に依存したコミュニケーションレベルに留まっているため、そこから生じる誤解が創出されうる価値を妨げている(例えば、提案した医薬品が使われないなど)のではないかということです。

 そこで、無意識の統合型交渉を交渉理論を通じて顕在化させ、整理することにより、コミュニケーションの非効率を低減しようという試みをご本人は「趣味」と仰っていましたが、自主的に行っておられます。具体的には、

1. MRと医師のコミュニケーションの基本構造
2. コミュニケーション自体が成立したか否か
3. コミュニケーションエラーが起こりやすいポイントと原因

を分析します。つまり、効率的なコミュニケーションを妨げる要因を特定するのです。要因の特定ばかりでなく、エラーが生じる頻度、理由、タイミングなども交渉理論を用いて検討します。そしてこれも交渉理論に基づいて、どのようなコミュニケーションにステップを踏むべきかを明示します。

 MRという明確に定義された職種が持つイメージも重要な要因です。MRの業務は情報の提供・収集・伝達と法令で明確に定義されているために、これがフレーミングとなって「立場」のレベルでの情報に留まってしまうのです。これをより付加価値の高いものにするには、交渉理論の基礎が教えるように、立場の奥に存在するニーズに到達しなければなりません。ニーズを把握しきれていないために、前述の患者、医療従事者の「利益」と「提案」がずれてしまうのです。また、MRと医療従事者との関係という業界慣習も一つのフレーミングです。上記のように交渉理論を当てはめるとMRの仕事も立派な交渉であるにもかかわらず、その認識が生まれにくいようです。

 情報の提供・収集・伝達を何を目的に行うか?これを交渉理論をベースに再定義することにより、MRの仕事をより社会的に価値の高いものにすることができるのではないか?現在、松丸さんは社内のMRへの交渉理論の導入を進めておられるそうです。

 以上で、2024年の燮会は終わりです。新年は3月に対面とオンラインのハイブリッドで開催されます。

繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした
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日本交渉学会全国大会に参加しました

2024年11月12日 | 交渉アナリスト関係


 11月9日、京都大学吉田キャンパスにて開催された、日本交渉学会の全国大会に初めて参加しました。時間の都合で最後の基調講演は拝聴できなかったのですが、研究発表でとったメモのみ簡単にまとめておこうと思います。

1.田代耕平氏(弁護士・札幌総合法律事務所)
『合理的交渉人モデルの実態調査』

 立命館大学の東川達三は、経済学の合理的経済人モデルを交渉に当てはめた「合理的交渉人」は存在しないと述べている。しかし、オンラインフリーマーケットのような匿名性の高い環境では、合理的交渉人モデルが表出するのではないかという仮説の下、インタビューとアンケート調査による実態調査を行った。

 結果。大島(2006)によれば、オンラインフリーマーケット「メルカリ」はオンラインオークションサイト「ヤフーオークション」と比べ、人に対する信頼が希薄と言われている。実際、アンケートによると、オンラインフリーマーケットでの売買交渉で「うざい」と感じたことの実に56%が「無理な値下げを要求された」となっている。

 オンラインフリーマーケットでジオラマを出品した40代男性。購入者が「(思っていたのと違い)見劣りがする」というクレームを入れ、修理を要求。しかし、「見劣りがする」というのは購入者の主観の問題である。結果的にこの出品者は、他のジオラマを無償でつけることで妥結を図った。出品者曰く、「(商品を手に取れない)フリーマーケットであることを売買双方が受け入れる必要がある」とのこと。また、5回以上の出品経験がある20代女性は、「相手がマナーを守る相手であるかを見極めることが重要である」と述べている。

 仮説ではオンラインフリーマーケットの売り手、買い手双方が合理的交渉人として振舞うと想定していたが、実際には出品者の方が購入者より交渉力が弱く、利己的に行動するのは購入者の方に偏っているように思われた。売り手と買い手とでは損失回避行動の目的が異なるのではないかとの結論。

2.加納榮吉郎氏(株式会社コベルコE&M 機電事業部・専門部員)
「交渉者が怒りを表出することの得失について」

 従来のハーバード流の交渉研究は、感情の影響に対して無頓着であったと思われる。しかし、現実の交渉では、戦略的に「怒り」を利用する者がおり、実験では純粋な分配型交渉では怒りの感情を表した交渉者の方が良い結果を収めたとの報告もある。しかし、「怒り」の濫用は、人間関係にダメージを与える恐れもある。「怒り」を表出するメリットとデメリットを力関係と時間について見てみると、力関係で強者にある者は「怒り」の表出によって意思を押し付けることができるのかもしれないが、弱者にある者は、報復を受ける恐れがある。また、時間について見てみると、「怒り」の表出は短期的には功を奏するかもしれないが、長期では怒りの内容の正当性が検証されるため、有効に作用しない可能性がある。

3.塩津裕子氏(オフィスArt de Vivre代表)
「発達段階と出生順位特性がもたらす交渉能力への影響」

 幕末に蝦夷地の探索や北海道の地図(北海道の命名者でもある)、アイヌ民族の研究などを行った松浦武四郎を例に、地理的環境要因、出生順位特性、後天的環境要因などが対人能力、恐らくは交渉能力に与える影響について調査。松浦武四郎は伊勢・松阪の商家の四男として生まれた。伊勢は「お伊勢参り」で全国から旅行者が集まる土地であり、武四郎は幼年時代から異文化コミュニケーションの能力を磨いたと思われる。四男として生まれ、年上に可愛がられる、甘え上手、対人能力に長け、要領が良い、自己主張ができるといった末っ子気質を持っていたと考えられる。反抗期の16歳の時に家で、長崎で異国文化に触れ、蝦夷地への関心を持つ。蝦夷地探検およびアイヌ民族との交流の足跡をたどると、武四郎が双方の利益を考える、双方の目的と問題点を双方で解決す、相手のメンツを立てる、対話を重視する、相互依存的で協力的であるといった互恵型交渉を行っていた様子が窺える。

4.麻殖生健治氏(立命館大学)録画発表
「古事記と交渉」

 古事記を交渉の視点から見ると、上巻は「計略交渉」のエピソード、中巻は「(交渉ではなく)武力」のエピソード、下巻は「対等交渉」のエピソードに分類することができる。上巻は天岩戸、因幡の白兎、国譲りなどに計略交渉、すなわち詐術の様子が見られる。中巻は神武東征、日本武尊の熊襲建、出雲建征伐(詐術も感じられる)、神功皇后の新羅親征に代表されるように、交渉を用いない武力制圧の話が続く。下巻は、垂仁天皇と皇后狭穂姫命との間で交わされた説得交渉、応神天皇の後継をめぐる、大鷦鷯尊(仁徳天皇)と菟道稚郎子の譲り合い、顕宗天皇が父の仇である大泊瀬天皇(雄略天皇)への復讐を試みたが、兄の億計皇子に諫められ思いとどまったエピソードなど、武力による皇位継承や復讐などから脱皮し、聖徳太子の「和を以て貴しとなす」で結ばれる。古事記には詐術、武力、交渉という問題解決の発展段階が見て取れる。

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7年ぶり2度目の九州開催-第66回燮(やわらぎ)会

2024年10月27日 | 交渉アナリスト関係


 10月26日、北九州市(小倉)にて第33回以来7年ぶり2度目の九州開催となる第66回燮(やわらぎ)会に参加しました。燮会は日本交渉協会が主催する交渉アナリスト1級会員のための勉強会です。

 今回の燮会は2部構成。第Ⅰ部は、今回の小倉開催のためにご尽力いただいた、地元北九州市小倉北区出身の1級会員末永正司さんより、「方言(北九州弁)と交渉」と題してお話しいただきました。

 まずは、県外の人から博多弁と一括りにされやすい北九州弁の基礎講座から。意外だったのですが、博多弁と北九州弁はそれぞれ肥筑方言系と豊日方言系とで、系譜が異なるそうです。そして。標準語、博多弁、北九州弁の比較もあったのですが、なるほど一覧表にしてみると結構違いがあるものですね。北九州弁には、愛媛や中国地方(山口、広島など)と似ていると思わる言葉が幾つかありましたが、確かにそれらの言葉は博多弁には見られません。

 そして、北九州弁の特徴を大雑把にまとめると、

●命令、強制、強い依頼が多い
●強調表現が多い
●敬語表現がない

ということができ、これらは同じ九州の中でも博多弁や熊本弁などにはないようなのです。簡単に言うと、「強い口調」ということができそうですね。そして会話表現の特徴として、

●言葉を短くしがち
●早口

といったことが挙げられます。そうなるとより強い口調、ひょっとすると知らない人が聞いたら「ちょっと怖い」と感じるかもしれません。本当は、怖いわけでも怒っているわけでもないそうです。

 さて、こうした方言の話がどう交渉に繋がるのかですが、まさに上記のような北九州弁の持つ特徴が交渉の場に応用できるのではないかということでした。確かに、語数が少ない、早口、語気が強いとなれば、威圧感があるように感じられるかもしれません。これで思い出したのが、「沈黙戦術(Flinch)」と呼ばれる話法です。これは、相手の提案に対し沈黙することで、その提案が馬鹿げているというシグナルを発し、相手が提案を取り下げたり、譲歩することを狙ったテクニックです。北九州弁的話法には、沈黙戦術と似た効果が期待できるのかもしれません。



 第Ⅱ部は、僕から「『孫子』の兵法と交渉学」と題してお話しさせていただきました。2500年も前に書かれたと言われている最古の兵法書『孫子』を現代の交渉理論の言葉に置き換えて理解すると同時に、散逸しがちな交渉の各理論を逆に『孫子』に当てはめて整理することで、系統的に理解できるようにしようという試みについてお話しさせていただきました。いずれこの話は、ポッドキャスト「トレードオンの交渉学」でもお話しさせていただく予定です。



 終了後は小倉駅近くの居酒屋に場所を移して懇親会が行われました。燮会でのテーマがユニークだったこともありますが、地方大会ということでほとんどの皆さんが宿泊されるということで時間の余裕もあり、大いに話が盛り上がったのと同時に大変勉強になりました。これは地方開催の良さだと思いますので、より多くの1級会員の皆さんが今後も地方大会に参加していただけたらと思います。

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自分も良し、相手も良し、雰囲気も良しー第65回燮(やわらぎ)会

2024年09月22日 | 交渉アナリスト関係


 9月20日、オンラインで開催された、第65回燮会が開催されました。燮会は日本交渉協会が主催する交渉アナリスト1級会員のための勉強会です。



 二部構成で行われる今回の燮会の第Ⅰ部は、いつもの「交渉理論研究」第24回。「統合型交渉の理論(4)非協力的な相手」と題してお話ししました。統合型交渉の理論の最終回になります。



 これまでの議論は、双方の交渉者が「テンプレート」と呼ばれる表を作成し、そこで開示される各交渉問題の重要度、各問題で合意可能な選択肢に基づき、価値を交換するという方法で進められてきました。この、いわば完全情報を前提としたやり方をFOTE(Full Open True Exchange)と言います。しかし今回は、相手がテンプレートを作成せず、部分的にしか情報を開示しないPOTE(Partial Open True Exchange)と呼ばれる、より現実の交渉に近い想定で議論を進めます。

 この場合、自分(AAA)はテンプレートを作成するのは自由ですので、最初にテンプレートを作成し、自分自身の個々の問題に対する重要度、各問題の解決策に対する価値を明確にしておきます。また、この交渉で最低限獲得したい価値、すなわち留保点(RV)も決めておきます。この場合、留保点は各問題ごとではなく、各課題の合意の総体(契約)に対して設定します。なぜなら、各問題ごとに留保点を設定してしまうと、それが価値交換の足枷となるなるためです。



 最初の交渉。今回は情報を部分的にしか公開しないので、各問題の重要度は定性的にしか分からない(ここでは、高中低の3段階)ものとします。価値交換は、双方の価値に相違がある場合の方が容易であるため、まず10個の問題のうち、問題の重要度に差のある6個の問題を1セットとして交渉することとします。ここで重要なルールとして、交渉の結果得られた各問題の合意は、後で変更可能な「暫定合意」であることとします。

 こちらはテンプレートを作成しているため、交渉結果を定量的に評価することができます。交渉の結果、AAAは48点を獲得しました。留保点を52点と設定していたため、4つの課題を残して悪くない結果だと言えます。さて、残る4課題の交渉で4点を獲得すれば、AAAはとりあえず留保点に到達します。しかし、交渉はできるだけ野心的な目標を設定した方が良い結果に結びつくことが多いとAAAは知っているので、2回目の交渉に向け、より野心的な目標(アスピレーションレベル:AL)を目指すことにしました。

 AAAは考えます、仮に交渉相手(BBB)が獲得する価値がゼロで、自分が全ての価値を総取りできたとすれば、最大実現可能価値は100です。しかし、双方留保点以下では合意しませんので、実際の最大実現可能価値は100-RVb(BBBの留保点)となります。BBBの留保点がどこかは分からないので、AAAは最大実現可能価値を75点と仮定しました。AAAから見て、留保点に上乗せして実現できる価値の余剰は75-52=23点となります。

 しかし、最大実現可能価値を本当に実現しようとすると、その結果はBBBにとって著しく不満足なものであり、交渉も必然的に分配型となってしまいます。いくら目標は野心的な方が良いとは言っても、恐らくこれでは交渉そのものが成立しないでしょう。そこで、AAAは余剰の60%を達成できれば十分野心的であると考えました。AAAのアスピレーションレベルは、52+0.6×23=65.8点となりました。



 2回目の交渉。残る4問題をまとめて交渉します。1回目の交渉で信頼が構築されたと考えたAAAは、BBBに対し、4問題についてはテンプレートで定量的に評価しませんかと提案しました。BBBは驚いた様子でしたが、合意しました。2回目の交渉で、AAAの獲得した価値は何と67.4点となり、アスピレーションレベルをも上回りました。BBBも満足そうであり、交渉は大成功に終わりました。



 さて、ここからさらに価値を創造する方法があります。ライファが提唱する「合意後の合意」という方法で、先ほどの合意そのものを暫定合意とし、それをBATNAとすることでオープンに交渉するというものです。この方法は、交渉結果が不服であればBATNAに戻ってそれを最終合意とすればよいので、より正直な情報交換を促します。「合意後の合意」の結果、双方最終合意に至り、AAAの価値は71点に達しました。最大実現可能価値を75点と想定していたことを考えれば、ほぼ理想に近い結果を得たのではないでしょうか?



 第Ⅱ部は、1級会員の高橋道生さんより、「交渉と心理的作用について」と題してお話しいただきました。高橋さんは、「心理交渉術スペシャリスト」と呼ばれる、交渉アナリストとは別の民間資格をお持ちで、今回はそちらの視点からお話しいただきました。
「相手も自分も納得いく結果を、良い雰囲気で達成できることを目標としているため交渉学を学んでいる」とおっしゃる高橋さんが、交渉時に効果的な心理対策として大切にされているポイントを順番に挙げていきます。

1.「好ましい人」だと思われたい

 「上機嫌」、「よく笑う」、「(他の人と一味違う)好ましい人柄の評判が立つ」ことが、交渉結果に良い影響をもたらすことが、実験で明らかになっているそうです。特に日本人は、「交渉が上手くいった要因」として、「相手を心地よくさせられたか」を挙げる人が、他国の人と比べ多かったそうです。

2.第一印象の大切さ

 初回の交渉での第一印象の影響は大きく、それを覆すのは容易ではないそうです。実験によると、最初の交渉で成功すると、次の交渉でも成功し、最初の交渉で失敗すると、次の交渉でも失敗する傾向があったそうです。

3.雑談

 前述の第一印象はもちろん、これから交渉を円滑に始めるためにも、アドリブでない、アイスブレイクとなる雑談は重要です。例えば、自己紹介の際、名前を覚えてもらうための工夫をしたり、高橋さんの場合、アメリカ留学時に、名前が「Michio」なので、ミッキーマウスのネクタイを着用して会話の取っ掛かりにすることもあったそうです。

4.しぐさから読み取る相手の心理状況

とは言え、自分本位ではなく、相手の心理状況に気を配ることが大切。そのためには、交渉前はもちろん、交渉中に現れる相手の非言語情報(しぐさ、表情など)を読み取り、相手の本当の感情や真意を汲み取る姿勢を見せます。

5.心を解きほぐす

 「好ましい人」だと思われるようにするのは、それが信頼を生むからです。信頼が生まれるようにするのは、それが交渉の良い結果につながるからです。他者からの好意を生む方法としては、上記に挙げた方法以外にも、単純接触効果(ザイアンス効果)、ミラーリング、We話法などがあります。

6.接触の取り方

  対面、電話、メールといったコミュニケーション手段の中で、対面が最も望ましいと言われますが、必ずそうであるとは限りません。状況や自他の性格に応じて使い分けるのが良いようです。例えば、相手に好かれているなら対面で、嫌われているならメールでと言うように。また、実験ではコミュニケーション手段に対する好みに男女差があることが分かっており、男性は対面を好ましいと感じていたのに対し、女性はメールなどの手段の方が好ましいと感じていたそうです。もちろん、全ての男女にこれがあてはまるというわけではありません。

7.頼みごとの承諾は、報酬と比例するのか?

 実験結果による結論から言うと、報酬による差はなかったそうです。金額よりも「報酬を渡す」という気持ちが大切なようです。

8.雰囲気作りが大切

 和やかな雰囲気は、安心感を与え、交渉に協力的な姿勢を引き出します。一言でいうと「身体を包み込むような優しさ」で、部屋の温度、温かい飲み物、甘いお菓子、良い香りなどに気を配ります。暖色、観葉植物、明るい照明なども影響を与えます。船舶関係のお仕事をされている高橋さんは、雨天での荷下ろしの際、積み荷を濡らさないよう、都度ハッチを閉めてもらうお願いをしていました。それは運送業者として当然のことなのですが、船員にとって大きな負担となるのも事実でした。そこで高橋さんは、そのようなお願いに行く際、必ず船長さんに温かい缶コーヒーを持って行っていたそうです。

9.主導権の取り方

 相手をさり気なく誘導していく方法です。あからさまに誘導しようとすると、人は操作されていると感じ、抵抗します。そこで、直接的に要求や提案をするのではなく、相手に意見を求めたり、考えさせたりする、あるいは選択肢を用意して選ばせることで、相手に「自分で選択した」と無意識に感じさせます。前者を「結論留保」、後者を「オプション法」と言います。

10.得する声

 「分かってはいるけど、そこまでの心の余裕が…」と高橋さんは謙虚におっしゃっていましたが、実験によれば、「魅力的」だと評価された人の声には、以下のような特徴があったそうです。

①言葉が明瞭である
②トーンは低め
③大きさは大きめ
④発音、発声が鼻にかからない

11.心理作戦はバレてしまったら逆効果

 当たり前のことですが、これまで挙げてきた心理テクニックは、さり気なく使うもので、操作されていると相手が感じれば、それは逆効果になってしまいます。僕が知っている例では、交渉が終わった後、手の内をSNS上で自慢気に晒している人がいました。笑いごとのようですが、今の時代、意外と落とし穴になっているかもしれません。

12.プレゼンテーション

 伝えたいことは左側に。文字は大きく、少なめに。訴求ポイントはさり気なく挿入しておくだけでも効果的。ロゴやキャッチコピーなど印象付けたいものは、数回(3回程度)登場させます。

 今回は以上ですが、高橋さんが交渉の心理的側面に関心を持たれたのは、交渉の際に、「いかに相手に自分の気持ちを伝え、仕事を達成することができるのか?」悩んでいたことからだったそうです。

繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした
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今年も事例発表三本立てー第64回燮(やわらぎ)会②

2024年06月18日 | 交渉アナリスト関係


第3部:「実践的交渉戦術と実例」 



 第3部は、いつも交渉関連の書籍に取り上げられているトピックから、それに合った交渉事例をお話しいただいている、篠原祥さん。今回の関連書籍は以下の通りです。









 今や広く知られていますが、ダニエル・カーネマンによると、人間の脳は情報を処理する際に直感的思考であるシステム1と、論理的思考であるシステム2という二つのモードを使い分けているそうです。冷静な交渉者は、システム2を使って交渉していると思いますが、交渉が難航している時、とりわけ①平行線であることが明らかな時、②立場による違いの隔たりがある時、③交渉が長引き、感情的な対立が発生している時などは、なるべく交渉相手にシステム2を使わせたくない時があります。

 では、人はどのような時、システム1に頼りがちになるのか?①疲れている時、②情報量・選択肢が多い時、③時間がない時、④モチベーションが低い時、⑤情報が簡単で見慣れすぎている時、⑥気力や意志の力がない時などが挙げられます。ということは、その様な状況を作り出せば、相手はシステム1に頼る傾向が強まるわけです(逆も然りであることは、頭に入れておかなければなりません)。交渉学においても、相手をシステム1のモードにするための戦術や陥りがちなバイアスが取り上げられています。例えば、

・時間のプレッシャー(Deadlines):相手の決定に一方的に期限を設ける戦術。
・口車戦術(Snow Job): 相手がどの情報が重要で、どの情報がそうでないか判断しかねるほど多くの情報で圧倒する戦術。専門用語の多用もこれに含まれる。相手には非常に高い認知負荷がかかるため、無抵抗に合意してしまうことがある。
・利用可能性ヒユーリースティック:簡単に想起できる情報に頼って判断してしまう傾向のこと。

などがそれにあたります。システム1に頼らせたいのは、システム1には騙されやすい、認知バイアスにより判断を誤りやすいといった欠点があるためです。篠原さんの経験では、口車戦術(Snow Job)は欧州の交渉者が使ってくる戦術として3本の指に入るほど頻繁に見られるものだそうです。

 そのような戦術に対する対処として、

1.理解していないことには同意しない
2.要約を求める(最近では、オープンAIも使える)
3.口車戦術(Snow Job)で返す

といった方法があるということでした。

第4部:「『コミュニケーション』と『広報』・『報道』」 



 第4部は、中沢則夫さん。1.広報(コミュニケーション)の基礎、2.よい広報(=よいプレゼン)のために留意すべきこと、3.報道対応上注意すべきこと、についてお話しいただきました。情報が盛りだくさんでしたので、ここでは要約してお伝えしたいと思います。

1.広報(コミュニケーション)の基礎

1.「広報」と「報道」の違い
・広報対応業務…情報を分かりやすくお知らせする仕事
・報道対応業務…取材者の関心事項に応える仕事

2.その他
・公聴…広く意見や問い合わせを受ける
・情報公開…「行政文書開示制度」に矮小化されていることは多い
・パブリック・アクセプタンス…社会的受容性、社会的合意形成。戦略的に行う必要がある。
・広告…通常は商業広告を指す

3.「広報」の英語訳と使い分け
・Public Relation…若干表面的
・Communication…広報対象への情報伝達(通常は望ましいものを指す)
・Disclosure…公表が義務化されている情報の開示
・Media Handling…報道対応を指すことが多い
・Advertisement…商業広告

4.Communication の諸タイプ
・コミュニケーションの概念は広い…指示、報告、伝承、交渉、調整、すべてコミュニケーション
・情報発信者、受信者も幅広い

5.コミュニケーション・ループ


6.コミュニケーションの事故
・伝言ゲームの悲劇
・受信者の理解不十分による悲劇
・情報の第三種過誤による悲劇
・情報の毀損、憶測や曲解による悲劇

7.広報意図
・政策広報
・世論形成……特定の世論を形成するために広報することがある
・存在の誇示
・アドバルーン…世の中がどう思っているのかを調べる、不都合な情報を小出しにしておくことでガス抜きをするなど

2.よい広報(=よいプレゼン)のために留意すべきこと

1.プレゼンの目的と手法
・プレゼンのタイプ
① 正確な事実を伝える
② 受信者の共感を得る
③ 受信者を説得し、行動を起こさせる

・どのプレゼンをしているのかを意識することが重要
① 数字、5W1H 簡潔
② ムードを盛り上げる仕掛け
③ 受信者が主体的に考えられる材料の提供

2.プレゼンで心掛けるべきこと
・受け手の関心を的確に把握する…関心を向けさせるための仕掛けが有用
・広報情報の伝達経路、伝達速度を理解する…ビジュアルも重要(話し手の見た目、資料の見た目)、情報が伝達される過程で正確さは減衰する、一般に悪事は伝達速度が速く、浸透度が高く、かつ不正確に伝わる、単純な話ほど浸透度は高い
・TPOに合った話題、論法、資料を使う…第一受信者のTPOだけに注力しないよう注意
・明確なメッセージを持つ…受け手に沿う論法、メッセージは明確かつ簡潔に(多くて3つ)
・分かりやすい言葉の使用を心がける…専門用語を使わなければならない時は、分かりやすい解説で補う。
・単純な論理を用いる…せいぜい三段論法ぐらい、論旨展開は、「起承転結」または、「序破急」
・安定感を持った口調・文体を用いる(つまり、平易)…話すスピードは一定に。A4用紙4行を30秒が目安。準備・トレーニングが必要。 
※参加者が上司から言われた教え:「プレゼンをする時は、相手が酔っ払いだと思え」

3.「分かり易さ」と「正しさ」のトレードオフ
・正しくても伝わらなければ意味がない
・正確であること≒全てを開示すること、を理解する
・一般的には正しいことより分かりやすいことの方が大事
・脚注の活用、予め限界に言及しておく

3.報道対応上注意すべきこと

1.報道対応の現場= 事件・不祥事対応
・どこまで情報を公表するか?
・緊急記者会見…適切な方法と対応者、内容の正確さ
・経済部記者の動きと社会部記者の動きはまるで違う
・会見前の利害関係者への根回し

2.報道対応で気を付けるべきこと
・窓口の一本化
・電話取材は録音されているものと心得る
・会見における注意事項…これまで述べてきた、適切な対応者、会見で伝える範囲、見た目、感情的にならない
・悪い情報はエスカレートするので、直ちにラインに共有、
・悪い情報の公表の可否・要否の判断
・公表する際は、時間を空けない、嘘をつかない、想定問答を用意

 最後に、今回のお話しに関連して、参加者から出たヒントの幾つかを挙げます。

※(簡潔にまとめさせるために)わざと小さなフォントの使用を禁止する。
※資料のまとめとプレゼンの練習を繰り返す(その過程で、論理の矛盾に気づいたりする)
※上記と同じように、スタートアップではプレゼンの訓練をすることが多い。それよりビジネスモデルが磨かれてくる
※会見で、自由にしゃべりたい上司とリスクを回避したい部下(第2部の話であったように、内部調整が必要)
※マンガのようなビジュアルと簡潔な言葉でまとめるという考え方も有効
※プレゼンは場数 練習 重要なプレゼンならビデオを撮って確認するのも有効

 今回のお話しの結びに、中沢さんの考える「知的活動」を構成するのは、「予測力」と「伝達力(つまり、コミュニケーション力)」であるということでした。



 懇親会は、当社からわずか240mのところにある割烹「仙や」で行われました。マンションが立ち並ぶ下町の中にポツンと現れる美しい日本庭園が魅力のお店です。ちょうど庭の紫陽花が満開でした。

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今年も事例発表三本立てー第64回燮(やわらぎ)会①

2024年06月17日 | 交渉アナリスト関係


 6月15日、今年も弊社会議室にて第64回燮会を開催しました。燮会は交渉アナリスト1級会員のための交渉勉強会です。昨年は5月開催でしたが、今年は6月に戻りました。今回で8回目の横浜開催、過去の開催内容は、下記をご覧ください。

【過去の横浜開催】
第60回燮会
第55回燮会
第48回燮会
第42回燮会
第37回燮会
第32回燮会
第27回燮会

 さて、今年は全部で4部構成。いつもの理論研究と、通常の燮会より多くの時間が取れることを活かしての、1級会員による事例発表3本立てでした。



第1部:「交渉理論研究」第23回「統合型交渉の理論(3)」 

 第1部は、定例の「交渉理論研究」、第23回。「統合型交渉の理論(3)」と題して、お話しさせていただきました。



 本題に入る前に、岐阜大学の佐藤幹晃氏、寺田和憲氏、南カリフォルニア大学のジョナサン・グラッチ氏による論文“Teaching reverse appraisal to improve negotiation skills”を要約したスライドをご覧いただきました。というのも、前々回「統合型交渉の理論(1)」において、統合型交渉における合意可能範囲(ZOPA)が何故扇形になるのを示しましたが、当論文の実験で使われた交渉シミュレーション(最後通牒ゲーム)のサンプル動画が、これをビジュアルで理解するのに非常に分かりやすかったからです。論文も非常に興味深いものでした。



 さて、本題です。前回までで統合型交渉の理論的基礎は終わりましたので、今回は以下の点についてお話ししました。

1.(交渉ロールプレイの合意の分布から)現実の交渉では多くの交渉者がテーブルに価値を残してしまう
2.対策:「合意後の合意」による価値創造
3.統合型交渉を阻むバイアスについて(ゼロサムバイアス、反射的価値下げ、社会的効用、根本的帰属の誤り)

第2部:「南大洋州島嶼国でのインフラ構築提案における交渉」



 第2部からは1級会員による事例発表。まず、北川敬司さんより、「南大洋州島嶼国でのインフラ構築提案における交渉」と題して、大規模なプロジェクトをめぐる国際交渉の事例についてお話しいただきました。

 ある南の島に対し、北川さんの会社では大規模な太陽光発電施設の提案を行いました。その島は、南洋の小さな島国であるがゆえに、不安定な電力供給に悩まされていました。しかし、これといった資源は持たないものの、太陽光だけは豊富であったので、提案に至ったという訳です。「授人以魚 不如授人以漁((飢えた)人に魚を与えることは、漁を教えるのに及ばない)」という格言がありますが、北川さんらは、ただインフラを整備するのではなく、その島がその先も自立的に運用できるよう、「島の人たちが自ら成長できること」をテーマに、

① 可能な限り現地の資材を使う
② できるだけ現地の人を雇う
③ 問題が発生しても、現地の人だけで縮退運転(フォールバック(※))できるようにする

※システムなどに障害が起きた時、性能の低いシステムに代替したり、機能を限定して運用したりすること。

などの提案を行いました。

交渉ポイント1:社内説得

 さて、本交渉を通じて北川さんが感じられたことのポイントの一つ目が、「社内説得の難しさ」です。しばしば、「外部交渉より内部交渉の方が難しい」と言われますが、本件も例外ではなかったようです。交渉の初期段階では、社会的意義こそ理解されるものの、経済合理性やリスク面などで疑問が呈され、その説得に苦労したそうです。中期段階では、交渉のセオリーに則り、キーマンの関心事を探りながら説得を進めましたが、これまたキーマンによって関心事が異なるため、その調整も容易ではありません。一枚岩になるのは難しく、そのため部分的に承認を得ながら進めていきました。後期段階においては、キーマン同士の不仲が露呈。問題解決の成否と直接関係のない要因が意思決定に影響を及ぼすという不合理も現実の交渉ではままある話です。北川さんは、キーマンの関心事に基づき、それぞれが受入れられやすい切り口で説得を試みました。因みに、ハーバード大学のジェームズ K.セベニウスは、このようなやり方を「アコースティック・セパレーション」と呼んでいます。後になって振り返ると、第三者やさらに上層部に働きかけることもできたのではないかと、ご本人は分析されています。

ポイント☞交渉相手の選択、交渉相手の事前プロファイリング

交渉ポイント2:仲間集め

 複雑な交渉では、誰と組むか、あるいは組まないかの判断が重要になります。また、誰からどの順番で交渉していくかも重要になります。なぜなら、ある当事者との交渉結果が別の当事者との交渉に影響を及ぼすことがあるためです。とりわけ相手が外国ともなれば、この作業は容易ではありません。さらに言えば、交渉の過程で生み出した選択肢もどの順序で提示するかも結果に影響を及ぼします。特に、望ましいプロジェクトチームの組み合わせになるまで柔軟に調整できるよう、最後まで暫定的な状態でその余地を残しておくことが難しかったそうです。前述のセベニウスは著書『最新ハーバード流 3D交渉術』の中で、当事者の選定にあたっては「全当事者相関図」、交渉の順序を決めるにあたっては「逆方向マップ」の作成を勧めています。



 北川さんらが取り組んでいたのはまさに「3D交渉」でした。政府と民間企業とでは関心事が異なるため、価値交換の仕方が通常のビジネスとは異なっていたこと、共通ゴール(島の人たちが自ら成長できること)の設定は交渉当事者の姿勢に影響を及ぼすため、これを最初にしっかりと固めておくことが非常に重要であるといったことが、この仲間集めでの教訓になります。

ポイント☞チームミーティング時の交渉、チーム対交渉相手、政府系組織の関心事

交渉ポイント3:初心忘るべからず

 交渉が日本と相手国双方の民間企業ばかりでなく、政府関係者なども巻き込み巨大化、複雑化するにつれ、関係者の期待値も高まっていきました。ところが、その結果、内部の意思決定者がリスク回避的になり、過度なリスクヘッジをするなど思わぬ副産物も生まれてしまいました。しかし、やはりその際に大事だったのが共通ゴールだったそうです。

交渉結果

 ところが、思いがけないことが起こります。いよいよ合意という段になって、同国で政権交代が起こり、プロジェクトそのものが御破算になってしまったのです。ということで、北川さんは本件を交渉に失敗事例としてお話しされていたのですが、交渉の何を以て成功と見なすのかは難しいところです。例えば、ヘンリー・キッシンジャーは、1973年のパリ和平協定でベトナム戦争を休戦に導きましたが、2年後のサイゴン陥落で、アメリカが支援した南ベトナム政府は消滅してしまいました。本件の場合、確かに合意にも至りませんでしたが、交渉プロセスについては概ね成功だったと言えるのではないかというのが、お話を伺っての感想です。もちろん、北川さんはエドウィン O.ライシャワー博士のように、同国の市民と対話するなど、さらにやれたことがあったのではないかと、今後の課題を挙げておられました。

<つづく>

繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした
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交渉学の活用による紛争解決ー第62回燮(やわらぎ)会

2023年12月06日 | 交渉アナリスト関係


 2023年12月1日、品川区の文化コミュニティ施設「きゅりあん」とオンラインとのハイブリッドで第61回燮会が開催されました。燮会は日本交渉協会が主催する交渉アナリスト1級会員のための勉強会です。今回も北は秋田から西は福岡まで大勢の1級会員の皆様にご参加いただきました。ありがとうございます。

 今回は篠原さんによる、「実践的交渉戦術と実例」はお休み。二部構成で、まず第Ⅰ部として僕から「第22回交渉理論研究」についてお話しさせていただきました。テーマは、「統合型交渉の理論(2)-テンプレート分析(パイの増大と切り分けについて)」。



 前回は「テンプレート」を用いることにより、異なる尺度を持つ価値をいかにして交換し、増大させていくかについてお話ししました。これは「価値交換」とよばれる「統合型交渉」における大きなテーマの一つです。今回はもう一つの大きなテーマである、「価値の増大とその分配について」。これを交渉学の世界ではしばしば「パイの増大と切り分け」と呼んだりします。



 分配型交渉において、合意可能範囲(ZOPA)は一次元の線形で表現されます。これに対して統合型交渉においては、ZOPAが二次元平面で表されます。なぜそうなるのか?まずはその過程についてお話ししました。



 次に、統合型交渉において増大させた価値をどのように分配するか、という問題。先のZOPAの図において、原点から遠い合意点(つまり、外縁の線上にある点)ほど価値が高いと考えることができますが、それが交渉当事者にとって公平かどうかは別の問題になります。例えば、ZOPAの外縁の線と縦軸との交点が合意点であったとすれば、それは当事者Aによる価値の総取りということになり、総価値としては高くても、著しく不公平ということになります。

 現実の交渉の場面では、交互に欲しいものを選ぶとか、じゃんけんをするとか、一方に分けさせ、もう一方に好きな方を選ばせるといった、双方を納得させるための様々な方法がありますが、規範的な分配の方法として、以下の3つを考えます。

合計最大基準(双方の価値の合計が一番大きくなる合意点を選ぶ)
最大最小基準(取り分が少ない方の価値が最大になる合意点を選ぶ)
ナッシュ交渉解(資源配分が最も効率的な合意点を選ぶ)

 ここでは、Excelで作成したテンプレートをソルバー機能で解析し、上記3つの基準に当てはまる価値の組み合わせを算出します。しかしながら、どの基準が正解かということはありません。どの基準にも一長一短があります。例えば、「合計最大(Max-Sum)基準」は価値の総計こそ最も大きくなるものの、分配の格差が大きくなる可能性があります。「最大最小(Max-Min)基準」は、混合戦略を許容すれば理論上両者の取り分は一致します。最後の「ナッシュ交渉解」は、価値の配分の効率(交渉学の世界ではよく「価値を交渉テーブルに残さない」といった言い方をします)の点で優れており、社会的に望ましいということができますが、やはり分配の格差が残る可能性があります。結局、どの基準を採用するかは当事者同士の問題になります。



 続いて第Ⅱ部。お話しいただいたのは、鮫島法律事務所、1級会員で弁護士の鮫島千尋さん。以前、同じく弁護士で1級会員の指宿昭一さんのお話しでもありましたが、交渉学で学ぶ極基本的な交渉用語を活用するだけで、現実の交渉が整理しやすくなり、良い結果に結びつくことがあります。今回は架空の事例から、交渉学が現実の交渉(ここでは紛争解決)にどのように活用できるのかについてお話しいただきました。

 事例は不倫発覚に伴い不倫相手の妻から慰謝料を請求されるという、よくある話です。ここからは交渉学で使われる基本的な用語を使いながら話を進めていきましょう。

1.出発点/留保点/目標点/ZOPA/BATNA

 仮に訴えている妻をA、訴えられている依頼人をBとしましょう。当初、Aの慰謝料請求額は300万円でした。これに対し、B側は「今すぐ払えるのは75万円が限界である」と回答します。この300万円と75万円が交渉のスタート地点です。従って、これらを「出発点」と言います。

 次に、Bは自分が払える限界の額を考えます。今は75万円しか払えませんが、数ヶ月後にボーナスが入れば、一括払いは無理でも、分割払いで225万円までなら何とか払えるかもしれません。しかし、できれば150万円ぐらいで納めたいと思っています。この支払限界の額、これより大きければ最早交渉できないので、交渉を留保するという意味で「留保点」と呼びます。そして、できれば150万円で納めたいというのはBの目標であるので、これを「目標点」と言います。

 同様に、相手方のAにも留保点と目標点があるはずです。しかし、BにはAの正確な留保点と目標点は分かりません。そこで同様の事案での相場を参考にします。相場はおおよそ150万円~180万円であることが分かりました。そこで下限の150万円をAの留保点と仮定します。また、目標点は相場の上限である180万円と出発点と仮の留保点との差額の中間点である225万円の間であろうと仮定しました。



 以上をまとめたものが上図です。青の棒グラフはAが交渉しようと考えているだろうと想定される範囲です。オレンジの棒グラフはBが交渉しようと考えている範囲です。この両者のグラフが重なり合っている範囲、つまりAとBの留保点の差額は、双方が合意しても良いと考えていると想定される範囲になります。これを「合意可能範囲(ZOPA)」と言います。

 もう一つ、「BATNA」と呼ばれる重要な概念があります。BATNAとは、一般的には当該交渉が決裂した場合の最善の代替案と考えられていますが、より正確には「当該交渉で合意するために利用できる最善の代替案」になります。いずれにせよ、当該交渉が決裂した場合はBATNAがとり得る選択肢となります。この場合、示談が成立しなければ裁判に移行する可能性が高いので、それが双方のBATNAです。

 なぜBATNAを考えるのが重要かというと、より有利なBATNAを持っていれば当該交渉における交渉力が高まるからです。しかしBさんの場合、ただでさえ状況が不利な上、裁判となればさらなる費用や時間がかかることになるので、残念ながらBATNAは弱いと言えそうです。

2.譲歩のダンス

 次に「譲歩のダンス」について説明します。交渉で合意するためには、交渉の過程で双方が歩み寄りながら、お互いの出発点の乖離を埋め、合意点を探らなければなりません。譲歩のダンスとは、この交渉過程で出された提案/対案の軌跡を言います(下図)。



 上のグラフのR1上の点がお互いの出発点、R4上の点が最終的な「合意点」を表しています。出発点の時点で、双方の金額には225万円の開きがあります。2回目の交渉で、Aは300万円を225万円に減額してきました。一気に25%もの減額です。これはどうしてでしょう?やはり目標点は225万円付近にあるのかもしれません。これに対し、Bも20%上乗せし、「数ヶ月後にボーナスが入れば90万円までなら払える」と対案を出しました。

 しかし、前述のようにBATNAはBの方が不利なのです。しかし、交渉過程でのやり取りから探ってみると依頼人のAはどうも早期解決を望んでいるようであるということが分かりました。つまり、金額以上に交渉を長引かせたくない理由がある、AのBATNAも思ったほど強くなさそうです。

 3回目の交渉で、Aはさらに20%、180万円まで減額してきました。これに対し、Bは「分割払いになってしまうが、105万円までなら払える」と対案を出し、態度を保留しました。ただし、今後不倫が物理的に起こらないような対策も提示し、Aへの配慮も見せています。最終的に、4回目の交渉で両者は105万円で合意しました。

 さて、改めて譲歩のダンスのグラフを見てみましょう。交渉学における譲歩の第一原則は、「いきなり大幅な譲歩をしないこと」、そして第二原則は「譲歩幅を徐々に狭くすること」です。前者の理由は、いきなり大幅に譲歩してしまうと相手に対して譲歩の余地が十分あるというシグナルとなってしまう可能性があるからであり、後者の理由は、譲歩幅を徐々に狭くすることで合意点に近づいているというシグナルとなるからです。しかしながら、今回の例を見ると、Aはいきなり大幅な譲歩をしてしまっています。実際それがシグナルとなり、Aが実は和解を急いでいるということが分かりました。そのため、Bは徐々に譲歩するという戦術をとることができたのです。また、この例のように、時間の制約は、交渉に大きな影響を及ぼす可能性があります。

3.留保点は変わる可能性がある



 さて、ここで一つの疑問が生じます。それは、両者が最初に想定したZOPAの外で合意しているという点です。もちろん、あくまでAの留保点は仮定ですので、想定していたZOPAが間違っていたと考えることもできます。しかし、Aには「交渉を長引かせたくない(そしてもちろん訴訟にも持ち込みたくない)」という事情(ひょっとすると金額よりこちらの方が主目的だったかもしれません)があり、留保点を超えてでも合意を優先した可能性が大いにあります。このように留保点は(したがって、ZOPAも)交渉過程で変化する可能性があるのです。

4.プリンシパル・エージェンシー問題

 エージェント(代理人)がプリンシパル(依頼人)の利益に反し、エージェント自身の利益を優先する行動をとってしまうことを経済学の用語で「プリンシパル・エージェンシー問題」と言います。事例からの推察にはなりますが、Aが留保点を超えてでも合意を急いだのには、AよりもA側弁護士、すなわちエージェントの思惑が働いた可能性もあります。例えば、本件がA側弁護士にとってあまり利益になるものではなかったとした場合、できるだけ早期に処理してしまいたいと考えていたかもしれません。

5.統合型交渉に向けて

 ここまでは交渉学の用語を用いて、事例を分析的に整理してきましたが、最後に鮫島さんがおっしゃっていた、より良い交渉のための大切なポイントをいくつかまとめます。

1.当事者双方のニーズを探求すること
2.当事者双方の交渉材料の把握と整理
3.ニーズの背景にある事情や思惑の把握
4.相手の想いや考えを尊重し、解決に向けた提案をする
5.自分の軸を見失わない
6.相手に判断を委ねる

 これらは、第Ⅰ部の用語を借りて言えば、価値交換によって一次元のZOPAを二次元にしていく、即ち分配型交渉から、より双方にとって望ましい統合型交渉へ移行していくためのポイントでもあります。ここでは金額のみに焦点を当てた、交渉の分配的側面を主に取り上げてきましたが、お話の中では金銭をめぐる立場の背後にある双方の様々な関心を掘り下げる過程が出てきました。紛争(コンフリクト)のより良い解決のために、交渉学をどのように活かすことができるのか、逆に交渉学を学ぶことによって現実の交渉をいかに効率的、効果的にできるかがよくわかる、学びの多いお話でした。

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日本の歴史から見る統合型交渉のヒントー第61回燮(やわらぎ)会

2023年09月25日 | 交渉アナリスト関係


 2023年9月22日、品川区の文化コミュニティ施設「きゅりあん」とオンラインとのハイブリッドで第61回燮会が開催されました。燮会は日本交渉協会が主催する交渉アナリスト1級会員のための勉強会です。生憎の天候で会場参加者は少なめでしたが、その分オンラインで全国から大勢の1級会員にご参加いただきました。

 今回も第60回に続き三部構成で行われました。第Ⅰ部は9ヶ月ぶりとなる「第21回交渉理論研究」。テーマは、「統合型交渉の理論(1)-テンプレート設計/評価」。2018年3月の第1回から5年半、ようやく統合型交渉の理論に入りました。



 一定の価値を分配する分配型交渉と比べ、価値を増大させ分配する統合型交渉は定性的に語られることが多く、定量的な理論で説明されることはほとんどありません。H.ライファの“Negotiation Analysis: The Science and Art of Collaborative Decision Making”では、交渉テーブルに載せられる全ての論点の価値を「望ましさ(desirability)」という単位に換算した「テンプレート」を用いて、価値交換によるパイの増大を定量的に表します。





 テンプレートによる定量評価は、当該交渉以外の最善の選択肢、いわゆる「BATNA」についても行います。こうすることで得られた値が当該交渉を続けるか、立ち去るかの留保点となり、自分が作成したテンプレートによる価値の評価が妥当なものかをチェックすることもできます。各論点の価値の総和がBATNAの値を上回っていれば「交渉」を選択することになりますので、その値が交渉の出発点となります。テンプレートの利点は自分の中の曖昧な価値を数値化することで明確にできるということです。

 テンプレートは交渉相手も作成します。とりわけ、交渉の論点はお互いに事前交渉(ブレインストーミング)を行うことで抽出します。そして双方作成したテンプレートを持ち寄り、自分にとって高く、相手にとって低い価値(あるいは自分にとって低く、相手にとって高い価値)を交換(「不等価交換」)することにとって、価値の総和を大きくしていきます。



 こうしたテンプレートはあくまで理論上のもので、実際の交渉で作成されることはほとんどないかもしれませんが、ハーバード大学のライファだけでなく、スタンフォード大学のマーガレット A.ニールのような心理学から交渉にアプローチしている学者でも、統合型交渉に際してテンプレートを作成することを勧めています(彼女はテンプレートを「論点・価値マトリックス」と呼んでいます)。

 ここでは、ニールが著書『スタンフォード&ノースウエスタン大学教授の交渉戦略教室 あなたが望む以上の成果が得られる!』の中で紹介している「『かっこいい車を買う』論点・価値マトリックス」を題材に、それで価値交換を行った場合のシミュレーションを紹介しました。今回はお話しだけでしたが、いずれロールプレイ・シミュレーションでみなさんにもテンプレート作成およびそれによる価値交換を体験していただける機会を設けられればと思っています。





 第Ⅱ部は、篠原祥さんによる、恒例の「実践的交渉戦術と実例」。今回取り上げられたのは、D.マルホトラ、M.ベイザーマン著、『交渉の達人 ──ハーバード流を学ぶ』より、「条件付き契約」と呼ばれるケースの紹介でした。



 「条件付き契約」は、「交渉アナリストニュースレター2019年5月号」で紹介した「ピタ―ド戦術」のひとつ、「コンティンジェンシー契約」と同じです。これは不確定な要素に対して相手が絶対に自信を表明する時、それを逆手に取ることでリスクを回避する方法で、相手の「偽りの創造戦術」を見抜く上でも有効ですが、①情報の非対称性があり相手の方が絶対的に情報優位である場合は機能しない、②「空手形」にならないよう、曖昧な部分について双方の見解を明確にしておく必要があるなど、いくつか注意点があります。



 第Ⅲ部は、同じく1級会員田口泰規さんよる発表。テーマは、「日本の歴史から見る統合型交渉のヒント~調和・融合の世界から~」です。

 出雲市出身で弁護士の田口さんは、司法試験勉強中に老荘、禅、易経などを読み始め、東洋思想との出会いがあったそうです。その後は仕事の傍ら武道の先生にも師事されています。交渉術との出会いは2011年だそうですが、統合型交渉という考え方の中に、東洋思想、武道との共通点を見出されたそうです。こうしたお考えの下、2021年には独立し、円満解決を目指す法律事務所maruを開設されています。

 さて、交渉理論は主にアメリカを中心として構築されたものです。したがって、その内容は多かれ少なかれアメリカの文化や慣習、価値観の影響を受けています。もちろん全体としては普遍的に有用なものですが、部分においては確かに日本人に適用するには多少のアレンジが必要なのではないかと思われる場合もあります。何故なら、理論の運用に際して、我々は無意識に東洋的精神風土の影響を受けるためです。

 交渉理論に限らず、有史以来、我々は外来の文化や思想の影響を受け続けてきました。しかし、その過程で行われてきたのは、今回のタイトルにある「調和と融合」です。交渉理論の中でも「統合型交渉」はとりわけ日本人にとって馴染みやすいものだと思われますが、それでも我々にとっての統合型交渉に調和、融合させていく過程は必要でしょう。そのために、今回は、田口さんが日本の歴史の中から統合型交渉の調和・融合のヒントとなる事例をご紹介いただきました。

1.国譲り神話~幽顕分任の神勅

 記紀に登場する「国譲り神話」とは、天津神(天照大御神)が国津神(大国主命)から葦原中国の国譲りを受ける説話です。712年に『古事記』、720年に『日本書紀』を編纂した大和朝廷は天津神の系譜とされます。つまり、この神話は大和による出雲支配の話なのですが、征服者側の記紀であるにも拘らず、「国譲り」という形をとっているところが興味深い点です。中国の歴代王朝が実質は簒奪であっても「禅譲」という形式をとったのと似ているかもしれません。

 ただ、禅譲とも違うのは、この「国譲り」の過程で、天照大御神は①大国主命が住む「天日隅宮(後の出雲大社)」を「天照大神の住居と同じように、柱は高く太い木を用い、板は厚く広くして築く」こと、②第二子の天穂日命を大国主に仕えさせること、③顕界は天照の子孫が治め、幽界は大国主が治めること(「幽顕分任」)、つまり政治と祭祀を分離して祭祀は出雲に任せることを申し出たという点です。実際、2000年の発掘調査では、高さ48mあったと推定される巨大柱の遺構が発見されています。

 つまり、統合的解決のヒントとして、

①話自体が破壊・征服ではなく統合・融合の物語である。
②異次元の解決(「土地」の支配権の分配から「幽界/顕界」という別次元の分配を行った)
③互敬・互譲であり、一方的支配ではない。
④どちらが勝ったか(勝ち方、負け方をデザインする)

といった要素が「国譲り神話」に見られます。

2.丁未の乱~十七条憲法

 538年に仏教が伝来すると、587年、仏教の礼拝を巡って崇仏派の蘇我氏と排仏派の物部氏との間で武力衝突が起こります(丁未の乱)。この結果、物部氏が敗れ、本格的に仏教信仰が始まります。蘇我氏とともに崇仏派だった聖徳太子が日本初の官寺、四天王寺を建立したのは593年のことです。604年には、聖徳太子が日本初の成文法、十七条憲法を制定。その中で、「篤く三宝を敬へ(2条)」と外来の仏教を信奉することを布告します。

 ところが、そのわずか3年後(607年)、推古天皇が「神祇禮祭の詔」を発します。簡単に言えば、「私の治世に至り、どうして天地の神々の祭りを怠ることができようか。どうか群臣たちも心を尽くして天地の神々を拝することに努めるように」というお触れです。つまり、従来の神々に仏教がとって代わるのではなく、仏と共に神々をも敬うようにということです。実際、その後の日本では神道と仏教が融合して独特の信仰体系として再構成されていきます(神仏習合)。

 さらに、「十七条憲法」に見られる統合的解決のヒントを見ていきましょう。

1条
和(やわらぎ)を大切にし人といさかいをせぬようにせよ。人にはそれぞれつきあいというものがあるが、この世に理想的な人格者というのは少ないものだ。それゆえ、とかく君主や父に従わなかったり、身近の人々と仲たがいを起こしたりする。しかし、上司と下僚がにこやかに仲むつまじく論じ合えれば、おのずから事は筋道にかない、どんな事でも成就するであろう。」

10条
「心に憤りを抱いたり、それを顔に表したりすることをやめ、人が自分と違ったことをしても、それを怒らないようにせよ。人の心はさまざまでお互いに相譲れないものをもっている。相手がよいと思うことを自分はよくないと思ったり、自分がよいことだと思っても相手がそれをよくないと思うことがあるものだ。自分が聖人で相手が愚人だと決まっているわけではない。ともに凡夫なのだ。是非の理をだれが定めることができよう。お互いに賢人でもあり、愚人でもあるのは、端のない鐶のようなものだ。それゆえ、相手が怒ったら、むしろ自分が過失を犯しているのではないかと反省せよ。自分ひとりが、そのほうが正しいと思っても、衆人の意見を尊重し、その行うところに従うがよい。」

※訳文はこちらから引用させていただきました。


① 「和(やわらぎ)」という理念。統合に向かう原理(例えば上の神仏(儒)習合やクリスマスの習慣)
② 多様性、相容れなさの容認。価値判断の保留(人の違うことを怒らざれ)。
③ ともに凡夫、ともに賢愚(交渉相手に向かう心構え。あなどらない)。

3.喧嘩両成敗

 645年、大化の改新、672年、壬申の乱を経て日本は唐の制度を取り入れて中央集権化を進めていきます。701年には唐の律令を参考に「大宝律令」が施行されます。しかし、日本の律令は定着することなく、平安時代に入ると形骸化していきます。やがては公家法、寺社法、武家法などが乱立していくこととなりました(中世法)。戦国時代に入ると、各地の守護大名や戦国大名の間で分国法が制定されていきます。分国法に見られる大きな特色の一つが「喧嘩両成敗」です。

 それまでの中世法においては、例えば南北朝時代の法諺に「獄前の死人、訴えなくんば検断なし(牢獄の前に死体が転がっていても、訴える者がいなければ捜査は始まらない)」というように、自力救済色の強いものでした(例えば、曽我兄弟の仇討ち)。これに対し、「喧嘩両成敗」は、自力救済を否定し、領主に裁判権を委ねさせるものです。

 例えば、『今川仮名目録』8条は、次のようになっています。

喧嘩におよぶ輩は理非を論ぜず双方とも死罪に處すべきである。はたまた、相手から喧嘩を仕掛けられても堪忍してこらえ、その結果疵を受けるにおよんだ場合、喧嘩の原因を作ったことは非難すべきであるが、とりあえず穏便に振る舞ったことは道理にしたがった幸運として罪を免ぜられるべきである

※訳文はこちらから引用させていただきました。

 また『甲州法度之次第』17条にも「喧嘩の事是非におよばず成敗加ふべし。但し取り懸るとも雖も 堪忍せしむるの輩に於いては罪科に処すべからず」と、同様の記述があります。

 喧嘩両成敗は、現在でも慣習として根強く残っているのではないでしょうか?喧嘩両成敗に見る統合的解決のヒントとしては、

① 「衡平」、「均衡」のバリエーション。普遍的原理を定め、優劣をつけず、痛み分けを指向する。
② 抑止効果(本当に両成敗することが目的ではない)

4.山岡鉄舟の西郷隆盛との談判~江戸城無血開城~無刀流

 有名な江戸城無血開城は西郷隆盛と勝海舟との会談によって実現したと一般に理解されていますが、実際は剣豪山岡鉄舟と西郷との駿府における会談で事実上決せられたと言われています。

 1867年、徳川慶喜は大政奉還を行い、朝廷への恭順の意思を示します。しかし、朝廷側はこれを信用せず、討幕軍は駿府城まで迫ります。慶喜は恭順の意を伝えるため、山岡鉄舟に駿府行きを命じました。駿府に入った鉄舟が討幕軍の陣営の中を丸腰で「朝敵徳川慶喜家来、山岡鉄太郎まかり通る」と大音声で呼ばわって歩いて行ったというのは、鉄舟の胆力を示すエピソードとして有名です。

 西郷と面会した鉄舟は、慶喜の恭順の意向を取り次ぐ条件として、以下の5つを提示します。

①江戸城の明け渡し
②城中の兵を向島へ移す
③兵器引き渡し
④軍艦引き渡し
⑤慶喜を備前池田家に預り

 しかし、鉄舟はこの内最後の条件を拒否しました。西郷は、これは朝命であると脅しましたが、鉄舟は「もし島津公が同じ立場であったなら、あなたは受け入れられないはずだ」と反論しました。西郷はこの鉄舟の忠義心に心を動かされたと言われています。結局、慶喜は水戸藩謹慎となり、江戸城無血開城が実現しました。

 この山岡鉄舟から学べる統合的解決のヒントは、次のようなものが挙げられます。

①捨て身、真心一身(誠実であること)

 鉄舟の遺した歌に、「まこころの ひとつ心の こころより 萬のことは なり出にけむ」というものがあります。全ては自分の真心から成就するのだという意味です。西郷との交渉で圧倒的に弱い立場にあった鉄舟が、西郷の条件を全て呑んで妥協していたとしたら、慶喜の運命は変わっていたかもしれませんし、江戸は戦渦に巻き込まれていたかもしれません。また、その混乱に乗じた列強の介入を招き、日本の運命すら変わっていた可能性があります。

②相手の信頼を得る。

 この時、鉄舟と西郷は初対面でしたが、二人の間の信頼関係は生涯にわたり続きました。明治6年、西郷たっての依頼で、鉄舟は明治天皇の侍従(教育係)となります。逆に明治7年、西南戦争前、西郷を説得するため、新政府は鉄舟を西郷の下に派遣しました。この信頼関係も、両者が持つ「忠義」と「至誠」いう強い価値観で結びついたからこそ築かれたものでしょう。

③ 無刀流剣術、自然の勝

 1885年、鉄舟は49歳で一刀正伝無刀流を開きます。鉄舟の有名な言葉に「無刀とは何ぞや。心の外に刀なきなり。敵と相対する時、刀に依らずして心を打つ。是を無刀という」というものがあります。最終的な局面では、小手先のテクニックではなく心が大切になるということです。また、「無刀」とは、勝負を争わず、自然の勝ちを実現するということです。交渉も争い(相対的勝利)ではなく、争いを超越したところで勝ちをなす(絶対的勝利)という点で目指す境地は同じだと言えるでしょう。

 今回田口さんが挙げられた4つの歴史的エピソードから、皆さんは何を感じ取られたでしょうか?

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第20回ネゴシエーション研究フォーラムに参加しました

2023年07月31日 | 交渉アナリスト関係


 2023年7月29日、品川区の文化コミュニティ施設「きゅりあん」で、オンラインとのハイブリッドで行われた、第20回ネゴシエーション研究フォーラムに参加しました。

 今回は、メンタルプラス株式会社代表取締役、和田隆様より、「パワハラを解決する心理学的手法~対人関係トラブルの理解と対応方法~」と題してお話しいただきました。和田様は元々サラリーマンでしたが、働けば働くほど自身の元気がなくなっていく、周りもうつ病になっていく人たちなどを目の当たりにして脱サラを決意。職場のハラスメント防止とメンタルヘルス対策をテーマにこれまで3,000回以上の講演、5万人以上の支援をされ、メディアにも多数ご出演されています。

 今回のお話は、

1.パワハラの本質と構造を理解する
2.関係のマネジメント

の二点です。

1.パワハラの本質と構造を理解する

 今回は数あるハラスメントの中でも「パワハラ」がテーマですが、ハラスメントの中でも突出して多く、10年連続で1位なのがパワハラなのだそうです。特に、パワハラとして認められる事実が存在するかという以上に、「パワハラを受けたと感じている」人が増えているという点に注意が必要です。というのも、ストレスに対するダメージの受け方、耐性が世代によって異なっており、そのギャップに対する認識のないことがパワハラを受けたと感じる人を増やしている可能性があるためです。

 何がパワハラなのか?については厚生労働省による「職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内での優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与えるまたは職場環境を悪化させる行為」という定義があります。ポイントは、

①背景:優位性
②手段:違法・不当行為
③結果:ダメージ(身体・精神)

の3点であり、これらが揃うと、パワハラになる可能性があります。

 一つ目の「優位性」については、ほとんどの組織で上下関係は厳として存在し、無くすのは難しいと思います。また、上下関係を無くすということは権限と責任を平準化するということでもありますから、多くの組織でそれが望ましいとも言えないでしょう。逆に、三つ目の「精神的・身体的苦痛を与えるまたは職場環境を悪化させる行為(ダメージ)」、これはある程度まで取り締まることができるように思われます。「ある程度まで」というのは、二つ目の「業務の適正な範囲を超えている(不当である)」、これが難しいためです。

 何故難しいのかといえば、そこに世代間の認識、受け止める側の耐性にギャップがあるためです。したがって、現実にも「どうしたら良いのか分からない」と、少なくない上司や部下が悩んでいるのではないかと思います。これを解消するには、「パワハラの本質」を理解しなければなりません。その本質とは、パワハラは「人間」の問題ではなく「関係」の問題だということです。ほとんどのパワハラで、どちらかに一方的に原因があるというケースはまず存在しません。そして、一人だけでパワハラが成立するということもあり得ません。したがって、原因を個人に帰しても問題は解決しないのです。パワハラとは、個人の感情が絡んだ「関係」の問題だからです。

 つまり多くのパワハラは、職場におけるコミュニケーション問題、対人マネジメントの問題なのです。よく職場で「パワハラ研修をしましょう」などと言われると、「自分はパワハラなどしていないから関係ない」と思われる管理職の方もおられるでしょう。しかし、コミュニケーションの問題、対人マネジメントの問題に全く非の打ち所がないという方はほとんどおられないのではないでしょうか?そこで、後半は「関係のマネジメント」についてのお話しに移りました。



2.関係のマネジメント

 「対人関係療法」という、対人関係に焦点を当て、そこでの感情、行動、対人関係のパターンを見詰めながら問題の解決や対処法を身に着けさせる心理学のアプローチがあるそうです。対人関係療法の主要な4つのテーマの一つに、「役割期待」というものがあります。対人関係療法では、この役割期待にズレがあると対人関係にストレスを感じると考えます。「関係」における摩擦も、この役割期待のズレに起因するものと考えて良いでしょう。

 ところが、それを相手に対する性格、人格の問題と捉えてしまうから「怒り」が生じるのです。怒りは他者に向かう感情であり、生物学的には「「縄張り(生存に必要なテリトリ)の確保」のために存在すると考えられています。テリトリを侵されると、侵入者を排除するため戦闘態勢のスイッチが入ります。一方で、怒りは目的が誰かによって不当に妨害されたと感じ、かつそれを正すために状況を変えられるという見込みと、自分が行動すればそれが可能であるという自信によって生み出されます。しかし、実際は相手を変えることはできません。変えられないものを変えられると思っているので、ますます怒りが増幅してしまうというわけです。その行きついた先が「パワハラ」です。

 ですから、まず「他人は変えられない」と認識すること。そして、問題は「人」ではなく人と人との相互作用である「関係」にあると知ること。そしてとくに組織の上下関係における問題は「役割期待のズレ」に起因すると理解することが重要なのです。

 そして役割期待のズレを解消するには、コミュニケーションをとるしかありません。具体的には、相手の感情を受け止める力、相手の話を聞く力、こちらの認識や感情を相手に伝えるだけではなく、「伝わる」力などを身に着ける必要があります。これらの力は、私たちの多くは残念ながら系統立てて学んできていません。

 このことは交渉についてもそのまま当てはまります。交渉学の基本的な原則に「立場にとらわれるな、常に『関心』に焦点を合わせよ」というものがあります。人は何らかの問題があり、それを解決するために交渉するわけですが、その問題に対して交渉をする人がとる要求や提案を「立場」と言います。一方、交渉を通じて達成したい目的や満たしたいニーズ、利害のことを「関心」と言います。人はとかく表面的に見える「立場」に囚われがちなので、しばしばその根底にある「関心」に目が向けられないままに終わります。これが交渉合意を妨げる、あるいは満足度の低い合意に終わる要因であり、先の「役割期待のズレ」と同じです。

 交渉学では、そうした「ズレ」を解消するための様々なアプローチを学ぶことができますが、その多くも今回の対人関係療法におけるお話しと一致するものです。つまり、交渉学は「パワハラが生じている環境」の改善にも役立つものであるかもしれません。

繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした
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事例発表三本立て-第60回燮(やわらぎ)会

2023年05月15日 | 交渉アナリスト関係


 5月13日、第60回燮会を開催しました。燮会は交渉アナリスト1級会員のための交渉勉強会です。2016年から始まった横浜での開催(2020年は中止)、今回で7回目となります。過去の横浜開催の内容については、下記をご覧ください。

【過去の横浜開催】
第55回燮会
第48回燮会
第42回燮会
第37回燮会
第32回燮会
第27回燮会

 これまでの横浜大会は、通常の燮会では時間の制約上難しい理論の掘り下げやロープレ、ゲームなどを行ってきましたが、今回は1級会員による事例発表三本立てです。



 第1部は、荻島亮一さんより、「交渉学の視点で自動車製造の当たり前を考えてみる」。日々のお仕事の中で自分の交渉の癖を痛感されたことが交渉学を学ぶきっかけとなったという荻島さん。自分を知ることの大切さと同時に、お仕事の目線から日本も自分たちの価値に気づくことが大切なのではないかというお話でした。



 第2部は篠原祥さんによる、恒例の「実践的交渉戦術と実例」。篠原さんには第56回燮会より、交渉関連書籍の実践的な交渉術と、お仕事を通じたその活用事例を紹介していただいています。今回の参考図書は、クリス・ヴォス著『逆転交渉術――まずは「ノー」を引き出せ』。





 クリス・ヴォスはFBI主席交渉人として、20年以上にわたり人質交渉に携わってきました。人の生死がかかる失敗の許されない環境で、相手の感情に寄り添い言語/非言語コミュニケーションを駆使して彼は犯人と対峙してきました。同書は、自身の経験を交渉理論と照らし合わせて構築した、独自の交渉術を紹介しています。上は、それらの様々なスキルを僕なりに分類・再構成した図です。人質交渉という、最も過酷な交渉であるにもかかわらず、そのキーワードは意外にも「傾聴」、「共感」、「親密」、「影響」で、徹底した相手指向でした。

 同書から今回篠原さんが取り上げたポイントは、以下の二つです。

1.BATNA

 BATNAとは「交渉で合意する場合以外の代替案で最善のもの」のことで、交渉のパワーの源泉として大変重要な概念です。しかし、ヴォスによれば、脅しにも妥協することなく交渉できるというメリットがある一方、BATNAを意識しすぎることの弊害もあるということです。篠原さんのご経験では、特に厳しい交渉では心身の負担が大きい、例えば価格交渉のオファーのやり取りにおいて疲れてくると、安易に妥協してしまう恐れがあるということです。これは日本人に多い傾向ではないかともお話しされていました。また、交渉の結果到達したい目標値がBATNAに引っ張られ(このような心理をアンカリングといいます)、無意識に低く設定されてしまう恐れもあります。

2.譲歩の原則

 価格交渉における譲歩の仕方については諸説ありますが、ヴォスが同書の中で紹介しているのは、元CIAで誘拐専門コンサルタントのマイク・アッカーマンのモデルです。彼は、最初のオファー(出発点)を目標値の65%(買い手の場合。売り手であれば、+35%)に設定し、その後3段階で譲歩することを勧めています。

 一般に言われる譲歩の原則は、

①野心的な高い目標値(アスピレーション値)を慎重に考える(アッカーマンはそれを目標値の65%と述べているわけです)。
②譲歩幅は徐々に小さく。
③端数効果(端数を使ったほうが、信憑性が向上するという心理的効果)を利用する。

 篠原さんによれば、相手のオファーに対して同じノーと言うにも、状況を踏まえ言い方を工夫することが大事だということでした。



 第3部は、谷口則彦さんと和佐毅さんによる、「企業の組織再編における共創協働」。谷口と和佐さんの質疑応答という形で、和佐さんがお仕事で経験された組織統合と、そこで交渉学を活かされた事例について伺いました。

 和佐さんは食品輸入会社で長年調達を担当され、最近営業に配属となりました。交渉学を学んだきっかっけは、奪い合い型の交渉、いわゆる分配型交渉に悩まれていたことだったそうです。交渉学を学ばれる中で、交渉に正解はなく、理論と同時に場数を踏んで経験を積むことも大事だと思うようになったそうです。

 交渉の学びには終わりがなく、次第に学んだことを自分のものとするだけでなく社内にも広めていきたいと思うようになったそうです。そこで、2020年から交渉学の企業向け1日研修である「交渉アナリスト3級講座」を社内に導入しました。2021年は同研修を「社内外を問わず課題を解決する風土づくり」をテーマに行い、2022年には社員と協力してオリジナルのケーススタディづくりに取り組んだそうです。その過程で、社員が自発的に取り組んでくれたのが嬉しかったとおっしゃっていました。また、ケーススタディにより普段と違う部署の役割を演じることで、お互いの理解を深め合うことにも繋がりました。

 2023年より、和佐さんの会社は類似業務を行っていた提携会社の事業部と統合し、新会社として出発しました。組織が大きくなると縦割りな風土になりがちです。交渉学はその弊害を和らげ、全体最適を指向するのに役立つと考えておられるそうです。また、和佐さん自身も営業というこれまでとは逆の立場のお仕事に就くことになりました。営業では、傾聴、価値交換、価値創造といった交渉学のエッセンスが使えます。お客様との折衝は日々発見の連続だそうで、1回の質問だけでA4のレポート用紙にびっしり書けるほどの学びがあるそうです。これほど役立つ交渉学をぜひ広めていきたいとのこと。また、ロープレも今後は自分の交渉シーンを撮影して振り返ったり、成功事例・失敗事例を分析するようなものを取り入れていきたいということでした。

 最後に。

●自分達ならできると思えること。相違は障害ではなく、やれることが増えたのだということ。
●相手を思いやる燮(やわらぎ)の精神。
●成功体験の積み重ねと未来を見据えて考えることの大切さ。

今回の経験から得られた、和佐さんが伝えたいポイントです。

繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした
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