窪田恭史のリサイクルライフ

古着を扱う横浜の襤褸(ぼろ)屋さんのブログ。日記、繊維リサイクルの歴史、ウエスものがたり、リサイクル軍手、趣味の話など。

お米をしっかり食べて健康的に痩せる、おにぎりダイエット-第169回YMS

2024年10月12日 | YMS情報


 10月9日、NATULUCK関内セルテ 801にて、第169回YMS(ヨコハマ・マネージャーズ・セミナー)を開催しました。今回の講師は、株式会社BePlus 代表取締役の小澤幸治様。「ダイエットの敵」とされがちな炭水化物である「おにぎり」をしっかり食べて、手軽に簡単に行える「おにぎりダイエット」についてお話しいただきました。



 おにぎりダイエットは、何と女性なら1日に6個、男性なら7個のおにぎりを食べながら、無理なく健康的に痩せていこうというものです。「こんなに食べても大丈夫なのか?」というのがまず驚きでした。

 ポイントは、摂取カロリー<消費カロリーの原則です。この関係が成り立っていれば、食べても自然に痩せていくのです。では、どの位のカロリーなら消費しても良いのか?簡単な目安として、次の計算式で把握します。

①BMI(ボディマス指数)を求める
BMI = 体重(kg)÷{身長(m)×身長(m)}

 BMIが18.5未満が低体重、18.5以上25未満が普通体重、25以上が肥満とされます。男性なら22、女性なら21が標準です。現在23.8の僕は、BMI22にするには62.83㎏(標準体重)にしなければならず、5㎏ほど体重を落とさなければならないということになります。

②適性エネルギー量の計算
適正エネルギー = 標準体重 × 係数(25~30)



 僕の場合、車通勤+デスクワークのため、運動強度はかなり低いと考えられるので、係数25として、適性エネルギー量は1570.75kcalということになります。2021年(当時47歳)に体重を68.8㎏から半年で60.1㎏に落とした時、1日の摂取カロリーは平均1,055kcalに抑えていました。それを考えると、1,570.75kcalも摂取して良いのか、というのは意外でした。おにぎり1個のカロリーを200kcalとすると、確かに7個食べても1,400kcalなので摂取カロリー<消費カロリーの関係が成り立つわけです。

1.糖質制限ダイエットの落とし穴

 さて、ダイエットは長期戦であり、体重は一進一退を繰り返しながら落ちていくものなので、少しでも上手くいかないとやり方に疑問を感じ、集中できなくなってしまいます。したがって、「痩せる理論(しくみ)」について理解しておくことは、ダイエットを継続させる上で重要です。ダイエットは、①カロリー制限ダイエットと②糖質制限ダイエットに大別され、おにぎりダイエットは前者です。一方、巷で人気なのは後者の方ですが、これには大きな落とし穴があります。

 まず、糖質制限をする理由として、糖質(ここではお米)を摂取するとなぜ太るのかについてのメカニズムについて考えてみます。①糖質(炭水化物)を食べる→②グルコースとなり血糖値が上がる→③インスリンが分泌される→④グルコースを脂肪細胞に引き込む→⑤太るという仕組みです。さらに、人は食事をすると代謝量が増加します。これを食事誘発性熱産生(DIT)といい、蛋白質は摂取エネルギーの約30%、糖質は約6%、脂質は約4%を消費すると言われています。糖質制限ダイエットは糖質を制限し、蛋白質中心の食事となるため、この高い食事誘発性熱産生も利用できるという理屈です。

 しかし、糖質制限ダイエットにはデメリットもあります。一つ目は、強い空腹感。血糖値を上昇させない ため、何を食べても空腹な状態が続くことになります。満腹中枢を刺激するには、胃を拡張させる、よく噛む、血糖値を上昇させることが必要です。二つ目は、強い疲労感。糖質(炭水化物)は三大栄養素のうち最も効率の良いエネルギー源です。糖質を制限すると、脳のエネルギー源であるブドウ糖が不足し、代替エネルギー源としてケトン体を生成するまでの間、エネルギー不足のために疲れやすくなる傾向があります。三つめは、維持が難しいということです。糖質制限ダイエットは、短期間で劇的に痩せますが、リバウンドするのです。エネルギー不足により、脂肪細胞ばかりか、筋肉細胞までも分解してしまい、太りやすくなるのです。

2.カロリー制限ダイエットについて

 では、炭水化物を食べて痩せる、カロリー制限ダイエットについて。日本糖尿病学会は、減量や生活習慣病の食事療法として糖質制限食は、現時点ではエビデンスが不足しているとの見解を示しており、引き続きカロリー制限食を支持しています。おにぎりダイエットは、この日本糖尿病学会の糖尿病治療食事療法の考え方をベースにしています。

 糖尿病食には3つのルールがあります。①摂取カロリーの制限を守る、②栄養バランスを整える、③1日3食規則正しくです。①については既に述べました。② PFCバランス(蛋白質、脂質、炭水化物の比率)のことですが、炭水化物40%~60%、タンパク質20%、脂質20%~30%に抑え、食物繊維の多い食材を摂ることを心がけます。要するに、炭水化物を摂る一方、脂質を抑えるということです。前述の2021年のダイエットの際、PFCバランス(蛋白質、脂質、炭水化物の比率)はカロリー比で、平均38.4:11.6:50.0であり、悪くはなかったと思うのですが、摂取カロリーが少なすぎたようです。確かに痩せはしましたが、筋肉量も落ちてしまうのが悩みでした。日本糖尿病学会が推奨する具体的なメニューを見てみると、ご飯に焼き魚、納豆、鶏の胸肉、皿だ、キムチ、キノコ、海藻類、野菜たっぷりの具沢山味噌汁など。要するに、普通の量の和食メニューと考えて差し支えないでしょう。③については、少量を頻度よく食べるのが良く、可能なら4食や5食に分けてもいいそうです。

3.カロリー制限ダイエットの具体的な方法

 さて、僕のように好き放題飲み食いしている人がいきなりカロリー制限ダイエットに取り組むのはストレスになり、持続しない恐れがあります。今回のお話のポイントを一言で表すとすれば、「ストレスなく、難しく考えない」です。そこで、以下の①から④へと段階的に進めていきます。

①量で調整。ご飯よりむしろおかずを減らす
②お菓子・ジュースを控える
③調理方法を選択する。なるべく油を使わないもの
④おすすめの食材を取り入れる。少しずつ栄養バランスを調整する。

 現在は、写真を撮るだけで自動的にカロリーやPFCバランスを出してくれるアプリも沢山あるそうです(例えば、カロミル)。大事なのは完璧を目指そうとせず、細かいことより空腹感を起こさせないことです。したがって、もし夜お腹が空いて寝られないというのであれば、おにぎりを1個食べても良いのです。たかが200kcal程度です。 



 それから、どうしても飲み会があったりということがあります。そんな日は、前後含む3日(最大4日)で摂取カロリーを調整します。ただし、夜飲むからと昼食を抜くというのはダメで、むしろ飲み会行く前に先におにぎりを1個、2個食べる方が良いそうです。また、アルコールを飲むのは構いませんが、飲み過ぎると筋肉を分解してしまいます。度数の高い酒を飲んで、早めに酔っぱらってしまうのが良いでしょう。

 ダイエットは長期戦です。脂肪だけで体重を落とすには、月2㎏程度が限界ですので、月1㎏~1.5㎏減を目安とします。個人的に課題だと思ったのは、よく噛むこと(本当に噛まない)と適度な運動です。

4.ダイエットを継続するためのマインドセット

 ダイエットを継続するために、まず以下の5つを頭に入れておくことが大事です。

①痩せても周りに気づかれない…少しずつの変化なので、それは当然だと思うことです。
②停滞期は必ず来る…停滞期は身体の防衛本能の一つです。停滞するのは当たり前と心得、ストレス緩和のため、時にはチートデイを作るのも方法です。
④不健康に痩せなさい…ダイエットを始めるとぼーっとしたり、力が入らなかったりすることがあります。これは満腹中枢が正常稼働していないためです。だからといって、栄養失調や身体に害が及ぶことはあり得ません。
⑤やる気は続かない…ダイエットは長期戦なので、やる気を低下させる時が来ます。

 したがって、持続させるためには、①たとえ0.1㎏の変化でも褒めることです。喜びは習慣化につながります。次に、体重は一進一退で減っていくものなので、②1週間単位で一番体重の低いところで体重を比較します。短期の増減で一喜一憂しないことです。そして、③ストレス食いを防止するため、食事以外のストレス発散方法を事前に見つけておくことです。④運動をする場合、退屈な運動は続かないので、例えばボクササイズのような、ある程度複雑性を持ったものが良いでしょう。

 実は、50歳を過ぎてから覿面に痩せなくなり、今年8月半ばに人生最大の体重を記録してしまいました。そこから一時風邪をこじらせたことも手伝い、現在4㎏ほど減っているのですが、標準体重には程遠いです。月1㎏を目安とするなら、来年3月頃には標準体重を達成したいですね。そのために、今までできていたこと、できていなかったことが今回のお話でハッキリしました。コロナ禍でやめてしまったボクシングフィットネスもいずれ再開したいと思います。



繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした

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人生を変え、組織を変え、地域を変えるキャリアツーリズム®ー第168回YMS

2024年09月12日 | YMS情報


 9月11日、NATULUCK関内セルテ 801にて、第166回YMS(ヨコハマ・マネージャーズ・セミナー)を開催しました。今回は、株式会社せんのみなと 代表取締役社長 高崎澄香様より、「非日常の体験で人生を変える『キャリアツーリズム®』」と題してお話しいただきました。



 僕が「キャリアツーリズム®」について初めて聞いたのは、昨年3月にZOOMでの勉強会でお話しさせていただいた時です。その時参加されていた、同社共同代表の長嶺将也さんに「ぜひYMSでお話を」とお願いしたのが同年6月、それから1年3ヶ月を経てようやく実現の運びとなりました(YMSは大抵1年先までの講師が確定しているため、どうしてもお待たせしてしまうことになってしまいます)。遠く、千葉県香取市からお越しいただきありがとうございます(Googleマップで調べたところ、「せんのみなと」さんが出てきました)



 さて、高崎さんは2021年に千葉県香取市で株式会社せんのみなとを創業。築100年の古民家を改装し、「泊れるキャリア相談所」として活用されています。元々人材紹介会社でコンサルタントをされていた高崎さん、コロナ禍で恐らくメンタルの面で休職していく人が相次ぐ状況の中、「遊びながら、事業しながら、社会に役立つ」、人間らしい生き方、人間らしい世界を目指し、古民家から組織コンサルティング、キャリア支援、キャリアツーリズム®の研究・推進を行っておられます。

 そんなお二人は、会社のパーパス、『体験と会話で生業の可能性を拡げ「ここにいて良かった」と誇れる人・社会を共創すること』を非常に大切にされています。オンライン上とはいえ、僕が長嶺さんとお会いしたのも、自分のパーパス、企業のパーパスについて考える勉強会、「実践型パーパス経営ラボ」においてでした。このパーパスがどういうことなのか、後のお話で明らかになります。

 まず、「キャリアツーリズム®」に先立ち、なぜ都会から離れた古民家に宿泊して自身のキャリアについて考えるのか?ということについてですが、「日常から離れること」に大きな意味があります。非日常的な空間に身を置き、リラックスした環境で、時にはお酒を酌み交わしながら対話する。そうすることで、日常の思考の枠組みを外れ、より深く自己を見つめたり、環境のとらえ方が転換したりすることが期待できます。

 もう一つ、「キャリアツーリズム®」に連なる大きな出来事として、2022年に、「キャリア相談だけで日本一周できるか?」という、広報を兼ねたプロジェクトを実施されたそうです。それも相談料は任意の物々交換で。それこそ缶コーヒー1本という方もいらっしゃれば、数万円という方もいたそうです。この各地を回ったことが、全国の地域事業者とコミュニティづくりを推進するきっかけとなりました。

 いよいよ、「キャリアツーリズム®」についてのお話です。そもそも人はなぜ旅をするのか、その動機や目的はそれこそ十人十色の多様な価値観があると思いますが、キャリアツーリズム®は「旅」が持つ性質を利用して、「自身でキャリアを切り拓く力を身に着けること」を目的としています。キャリア相談に旅を結びつけることで、例えば次のようなことが期待できます。

1. 物理的な移動…一言でいえば「気分転換」ですが、日常から離れた環境に身を置くことは、精神的にリフレッシュすることが分かっており、これを「転地効果」と言います。リラックスした環境に身を置くことで、普段気づかなかった本音が浮かび上がってくることがあります。僕も閃きやパラダイムシフトは、海外出張した先のホテルで起こることが多かった気がします。
2. 第三者との対話…キャリアツーリズム®では、旅先で出会う、バックグラウンドの全く異なる第三者と対話することになります。そこでは、第三者からの「問い」を通じて自己理解を深め、潜在意識下に眠っていた価値観などを顕在化していきます。例えば、都会に暮らす農業とは全く縁のない相談者が、農家の人から発せられる予想外の切り口からの「問い」により、パラダイムシフトが促される可能性があります。
3. 異なる価値観と文化…キャリアツーリズム®は一種の越境学習ですが、異なる価値観と文化に触れることは自己理解や成長を促す効果が期待できます。
4. 目指す方向性…対話を通じて、自分と組織のパーパスを明らかにします。

 この他、そもそも既存の枠組みから外れる経験をすることで、想定外のことにチャレンジできるようになります。また、受け入れる地域の方も、外部から異なるバックグラウンドを持った人々と交流することにより刺激になるようです。近年、メディカルツーリズムやウェルネスツーリズムが世界的に盛んになっていますが、将来的に「自己理解と成長、そして共創」を目的として外国人が来日するようなことにも繋げていきたいとおっしゃっていました。

 キャリアツーリズム®は、下図のような個人の行動変容のメカニズムを刺激するものと言ってよいでしょう。



 なぜ今、キャリアツーリズム®なのか?それには、日本における働き方、キャリアの重ね方の変化が背景にあります。大雑把に言えば、企業が個人のキャリアを用意し、一つの組織の中で評価されることが社会的成功とイコールだった時代から、様々な場所で経験を積み、自分自身の成功のために自ら進む形への変化です。後者を「キャリア自律」と呼んでいます。キャリア自律型の時代は、決して組織と個人が対立関係にあるのではなく、むしろパーパスを共有しながら良い関係性を築いていくことが重要になります。

 なぜなら、キャリア自律型の人は、雇用の安定性や働く仲間との関係性(これらも重要ですが)よりも達成感やパーパスへの共感、成長を重視しているからであり、そうした個人で構成される組織は、むしろ成長しやすいという関係にあるからです(下図)。





 さて、ここでワークショップを行いました。最初に個人で、以下の問いについて考えます。

問.あなたが考える理想の町についてイメージしてみて下さい。

 次に、グループで次の問いについてディスカッションしました。

問.チームで理想の街をつくるとしたら、

・どんな雰囲気で どんな人がいるか?
・何を大事にしている町か?
・その町の中であなたは何をしている人か?
・その町でやっていけないことは何か?

 後で分かったことですが、これはキャリアツーリズムの疑似体験でした。これを物理的に離れた場所に身を置き、(YMSのような知己ではなく)第三者と対話し、時間をかけて行うとさらに深いものになるということです。

 現在、キャリアツーリズム®には以下のような様々なプログラムがあります。

 宮城県三陸…「復興から学ぶレジリエンス」
 和歌山県熊野…「歩く世界遺産 歩いて自分を見つめ歴史を学ぶ」
 千葉県香取…「伊能忠敬とリスキリング」

 キャリアツーリズム®を通じた交流は、コミュニティづくり、地域創生にもつながります。こうしたキャリアツーリズム®の特徴は、以下の5つにまとめられます。

1. 旅とキャリアの研究
2. 実践的なプログラム
3. 組織開発と採用の専門家
4. 地域事業者との連携
5. 地方創生、CSR

 地方との取り組みとしては、キャリアコンサルティングの他、大学でのキャリア講義、地域おこし協力隊のキャリア支援などを行っています。一つの例として、今年、地方のまちづくりや人材の確保、PRやビジネスを通じて地域経済を創発していく「Community Branding Japan」プロジェクトが始まりました。例えば、青森市で廃棄コスメを「ねぶた祭」の山車の染料として再利用するねぶた師の支援、北海道夕張郡長沼町で、本屋減少問題に立ち向かう主婦が立ち上げた、町の小さな本屋さん「KIBAKO」の支援、空き家問題を抱える鳥取県湯梨浜町で古民家を改装したサウナを手掛ける会社のPRおよびブランディング支援などです。

 キャリア支援を行ってきた高崎さんは、その過程で培ったチーム作りの手法は、基本的にまちづくり、仕事づくり、コミュニティづくりでも同じだとおっしゃっていました。YMSも過去何度か、まちづくり、地域創生に携わる人をお招きし、お話を伺ってきました。そうした方々が有機的につながり、さらに大きな力となるといいですね。

【参考:地域づくりをテーマにした過去のYMS】
第162回:「日本の田舎をどうにかしようと思ったら、東南アジアでホテル経営をしていた件」
第152回:「地域の自立・自走を目指す伴走型支援」
第143回:「主力サービスのピボットと社名変更に至る道のり~地方創生の現状と私たちが目指す地域活性化~」
第108回:「沖縄の演劇、芸能活動を通じた地域振興の取り組みについて」

繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした

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オリンピックにかこつけて、フランスワインを楽しむ-第167回YMS

2024年08月08日 | YMS情報


 8月7日、今年で10回目を迎える恒例のYMS(ヨコハマ・マネージャーズ・セミナー馬車道十番館ワインセミナーを開催しました。

【過去のワインセミナーの様子】
2023年:酷暑にこそ合わせたい!ワインと料理のマリアージュ
2022年:真夏にガブ飲みできるスッキリ爽やかワイン
2019年:おうちで楽しめるテーブルワイン
2018年:ワインを飲んでいる時間を無駄な時間だと思うな。その時間にあなたの心は休養しているのだから
2017年:酷暑の中でさっぱり飲めるワイン特集
2016年:世界が認める勝沼甲州ワインを軸にした日本ワインとフレンチのマリアージュ
2015年:夏に合うワインと料理のマリアージュを楽しむ
2014年:注目のジャパニーズ・ワインを楽しむ
2013年:手ごろなワインと料理のマリアージュを楽しむ

 台風5号の接近に伴い、南から異常とも思える湿った空気が流れ込み、時に雷鳴も轟く蒸し暑い夜。こんな日は、冷たいワインで涼をということでいつも大変ご好評いただいています。また、今回の出席者は33名となり、YMSの延べ参加者総数が3,000人を超えました(3,001人)。本当にありがとうございます。

 さて、今年のテーマは、「目的はワイン、目標は3,000人。パリオリンピックを記念して、フランスワインを楽しむ」。オリンピックに因み、フランスワインに絞りました。ラインナップは以下の通りです。



・マム・グラン・ゴルドン(シャンパン)
・アルベール・ビジョ― シャブリ ラ・キュヴェ・デパキ 2021
・アルベール・ビジョ― ドメーヌ・アデリー メルキュレ アン・ピエール・ミレ 2020
・ドメーヌ バロンド ロートシルト サガR
・ムスカデ・セヴール・エ・メーヌAC
・ロゼ・ダンジューAC
・M.シャプティエ コート・デュ・ローヌ ブラン ベルルーシュ
・M.シャプティエ コート・デュ・ローヌ ルージュ ベルルーシュ



 また、毎年馬車道十番館さんがワインに合うお料理を提供してくださいます。今年は特にワインと料理のマリアージュが素晴らしいと感じました。

・一口オードブル パテ・テリーヌ盛り合わせ
・真鯛と桜海老のサフラン風味ピラフ
・牛頬肉の煮込み 赤ワイン風味のデミグラスソース
・鶏胸肉の蒸し焼き 夏野菜入りガーリックソース
・豚ロース肉のロースト 茸入りマディラソース
・オーストラリア産ローストビーフ開化風 野菜炒め添え
・つぶ貝と飯蛸のトマトソースのショートパスタ
・白身魚の白ワイン蒸し 海老飾り カルディナール風



 最後に、開催に際し、いつも多大なご尽力を頂いている株式会社横濱屋の山本社長、馬車道十番館の本多社長に心より御礼申し上げます。

繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした

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人気Youtuberになるまでと、今後の飛躍ー第166回YMS

2024年07月11日 | YMS情報


 7月10日、NATULUCK関内セルテ 801にて、第166回YMS(ヨコハマ・マネージャーズ・セミナー)を開催しました。3月から始まった「比較的若手シリーズ」の最終回、本当の若手、人気Youtuber、TikToker「金持ち一家」の永斗志善様にご登壇いただきました。



 テーマは、「発達障害が拓いたYouTube JAPANトップクリエイターへの道 〜生意気小僧を添えて〜」。2024年7月現在、YouTubeチャンネル登録者数215万人、TikTokフォロワー72万人。昨年度8月実績で再生数日本ランキング5位、登録者増加ランキング4位、総視聴数25.7億回(現在30億回に達しているそうです)を誇る5人組Youtuber「金持ち一家」になるまでの生い立ちと、SNS動画クリエイターとして成功するまでの紆余曲折、そしてこれからの展望についてお話しいただきました。

1.クリエイターとしての礎を築いた子供時代

 志善さんは東京吉祥寺生まれ。いわゆる発達障害と目される子供で、教室でじっとしていられず、気に入らないことがあるとすぐ癇癪を起す、興味のあることには飛びつくけれども、そうでないことはたとえ必要とされていてもやらない、そんなタイプだったそうです。父親は非常に躾の厳しい方でしたが、とにかく子供の好奇心を満たしてくれました。例えば、家族でキャンプに行っても、皿から匙から全て現地で手作り、食材も捕まえたものがなければ食べられないというような、徹底ぶりでした。その代わり、そこから子供は多くの知恵を吸収したことと思います。

 しかし、その父親が小学校6年生の時に他界。荒れた生活を送るようになります。比較的学業成績の良い中学校に通っていましたが、同世代の子供とは話が合わず、学校にも行かなくなり、話し相手は専ら大人に。受験も望めないので、高校は底辺私立校へ進学。絵に描いたような荒れた学校でしたが、ありえないようなことが日々起こる刺激的な環境で、居心地は良かったそうです。そのまま底辺の大学に進学しましたが、12単位しか取れず、卒業は絶望的に。そんな時、母親から舞台演劇をやらないか、という話が来ます。「失敗したら悲惨だけれども、もし成功したら面白い」と考えて受諾。この考え方はその後の人生の選択においても受け継がれているように思います。

2.舞台演劇を経てYoutuberに

 舞台演劇の世界では1000人規模の舞台やディナーショーなどに携わり、やがて運営を仕切るようにもなります。しかし、能力が認められ、出世した結果起こりがちなジレンマですが、クリエイティブな仕事からデスクワーク中心に。幼少期のお話から分かるように、刺激をエネルギーに変えるタイプだけに、舞台の世界を離れます。しかし、離れてしまうと自分には再就職の武器になるような学歴も何もない。そこで、歌舞伎町の夜の世界に身を投じますが、嘘と裏切りの世界に人間不信に陥り、その世界からも離れます。しかし、その時に出会った、優秀だがやはりどこかおかしい仲間たちとYoutubeとTicktokを始めました。

3.解散の危機。試行錯誤の末、人気Youtuberへ

 とはいえ、最初はズブの素人。言い方は悪いかもしれませんが、いろいろと耳目を惹くような長時間の馬鹿げた動画のために、収益もないのに自腹で出費を重ねる日々が続きます。動画作成は思ったよりも難しく、お金は出ていくけれども再生回数が伸びず。

 そんな日々が2年半も続いた結果、ついに仲間内で解散の話が持ち上がります。話し合いの結果、「1月1日から3月15日までの間にTicktokの登録者数が3万人に届かなければ解散」ということになりました。個性が強すぎ、一枚岩とはお世辞にも言い難いグループでしたが、2年半も無収益で続けてこられたのは、Youtuberであることよりも、それが一緒にいる理由になるから、理由が欲しかったと志善さんは言います。

 さて、背水の陣となり、2年半の反省から自分たちに長編動画は向かないと判断し、短編のノンバーバル(サイレントではないけれども、台詞より動きで魅せる)動画に切り替えます。動画を幾つか拝見しましたが、舞台の経験も大いに生きているのではないかと拝察します。短編動画を仮投稿として次々にリリース。その中から反応の良かった動画とそこそこに終わった動画を比較し、反応が伸びた要因と思われるものを次の動画に反映させました。しかし、それが必ずしも正解とは限らず、本当に何の変哲もないことが思いがけず成功要因になったりすることがあるということでした。そんな試行錯誤を繰り返し、約束の1月1日から新アカウントで再出発。結果は何と、3日で登録者数2万人達成という快挙でした。その後、100万回再生を超えた動画2回、約束の3月15日には登録者数10万人を突破、1年後には50万人に達していました。

 その頃、Youtubeにショート動画の機能が誕生し、TickTokの動画をYoutubeにも展開するようになります。最初は伸び悩みましたが、ある時一つの動画がヒットすると、その他の動画も伸び、トータルで再生回数1億回を超え、YoutubeのJapanランキングに名を連ねるまでに。

4.これから

 ノンバーバルの動画は言語に依らないため、年齢、性別、国境の壁を超えます。志善さんらの動画は、日本を越え、すでに東南アジアを中心に多くのファンを獲得しています。先日、第162回YMSで講師を務めていただいた海老名栄人さんとカンボジアに行った際、現地で多くの「動画を見ています」という人がいたそうです。

 さらに、培ってきた経験とノウハウを生かし、企業によるSNSを活用したプロモーションのコンサルテーションも行っています。その特徴は、企画から動画作成に至るまで、外部委託せず一気通貫して自ら行うという点です。言われてみればそうなのですが、再生回数という点では、SNSは効果測定がハッキリしていますし、無責任なことをすれば、本業の方が大打撃を被ってしまいます。そうした厳しさを担保に、自分たちを使って欲しいということでした。

繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした

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エンターテイメント界からのぞく、すぐそこにある未来ー第165回YMS

2024年06月13日 | YMS情報


 6月12日、NATULUCK関内セルテ 801にて、第165回YMS(ヨコハマ・マネージャーズ・セミナー)を開催しました。3月から始まった「比較的若手シリーズ」も佳境です。

 今回の講師は、プロミュージシャンで株式会社SAKAY ENTERTAINMENT代表取締役の酒井俊光様。19歳からプロギタリストとして活動、コロナ禍であらゆるイベント活動がなくなる中、それまで副業として行っていた動画編集の幅を広げ、現在はSNS運用代行(編集・撮影)を主軸として、ミュージックビデオ撮影、編集、エンタメ業界以外でもイベントの会場選定やPV作成、プロモーション支援などを行っておられます。そんな酒井さんに、「エンターテインメント業界が経済に及ぼす影響」と題してお話しいただきました。



 初めに、エンターテイメント業界とは、スポーツ、テレビ・ラジオ、映画、音楽、アニメ、ゲーム、舞台・イベント、テーマパーク・レジャー、動画配信など、非常に幅広い業界を包含する概念です。したがって、その裾野は我々が思っているよりも広く、雇用創出、収益増加、観光産業の発展、技術革新の促進など、多岐にわたる影響を経済に及ぼしています。

 例えば、地方で大規模なイベントが行われ、そこに人が集まると、地元のレストランやホテル、小売店、観光産業などに10%~30%の売上増が見込まれるそうです。しかもそれは、コロナ禍で一旦ゼロになり、未だ回復途上にある直近の数字であり、本来はもっと見込めるそうです。

 「戦争は発明の母」という言葉があります。同様に、エンターテイメント業界も様々な技術革新を促す土壌があります。むしろ、エンターテイメント業界で起こった技術革新が軍事転用される例さえあります。例えば、VR(仮想現実)/AR(拡張現実)技術を用いた軍事訓練は、元はゲームから生まれたものです。もちろん、その逆も起こり得るでしょう。そしてエンターテイメント業界で起こる技術革新は、我々の日常生活をも変えていく可能性を秘めています。例えば、観客が観客席から鑑賞するのではなく、自らも参加する体験型(没入型)演劇、「イマーシブシアター」は、VR/AR技術の進展により今後ますます発展し、そのノウハウがエンターテイメント業界を超え、私たちの生活にも浸透していくことでしょう。その他、5G技術によりリアルタイムデータ処理が可能となり、リアルタイムストリーミング(ライブストリーミング)はよりタイムラグのないものとなります。企業で言えば、リアルタイムのデータをマーケティングに活用することが可能でしょう。エンターテイメント業界には欠かせない著作権管理をAIにやらせるということも行われているようです。

 一方、このような技術革新の副産物として、新たな課題も生まれています。例えば、誰でも手軽に発信ができるようになった結果、二次創作の商業化、AIによるコンテンツ自動生成ツールの登場、NFT(非代替性トークン。デジタル上の資産鑑定書のようなもの)の無許可販売などが起こり、著作権、知的財産権の保護がより困難になっています。また、ストリーミングサービスで大量のコンテンツが配信されるようになった結果、質の低いコンテンツも大量に出回るといったことが起きています。



 最後に、総務省が出している「5Gで繋がる世界」という動画を見ました。



 それで思い出したのですが、40年前に「ミーム いろいろ夢の旅」という科学教養アニメがありました。当時は子供心に「本当にそんな未来が来るのか?」とわくわくしたものでしたが、「5Gで繋がる世界」は遠い未来ではなく、部分的には既に起こっている「すぐそこにある未来」という印象でした。ということは、その結果起こる私たちの生活や取り巻く環境の変化もある程度予測の範囲内と言えます。しかし、そうなった時、今は当たり前のように見えて、今後その価値が高まっていくもの、あるいは生活環境が変わっても普遍的に残る価値、そうしたことに想いを馳せることは、40年前の「ミーム」のようにわくわくします。

 懇親会は、関内駅前周辺の再開発でセルテと共にあと1年半で46年余りの歴史に幕を下ろす「スポーツカフェ ヤンキイス」で行われました。まさに横浜大洋ホエールズから横浜DeNAベイスターズの歴史と共にあったお店で、子供の頃から知っていたので寂しいです。

繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした

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今求められるエンゲージメント向上と”複”業のはなし-第164回YMS

2024年05月09日 | YMS情報


 5月8日、NATULUCK関内セルテ 801にて、第164回YMS(ヨコハマ・マネージャーズ・セミナー)を開催しました。

 今回の講師は、株式会社ケーエムシーコーポレーション取締役/BRMz合同会社共同代表の熊澤祐喜様。前半/後半の二本立てで、今注目されているエンゲージメント向上と人手不足の問題解決に資する「クルージングを利用したエンゲージメント向上/複業人材活用のすすめ」というタイトルでお話しいただきました。



1.クルージングを利用したエンゲージメント向上

 エンゲージメントとは信頼や愛着といった意味で、これが従業員の生産性向上や組織への定着の基盤となることから、以前より労働力の流動性が高まり、かつ人手不足が深刻化する昨今、優秀な人材を確保・定着させるために注目されている概念です。従業員の会社組織に対する信頼/愛着であればそれは「従業員エンゲージメント」ですが、同じことが企業と顧客との関係についても言え、長期的/繰り返しの取引で売上を向上させる基盤として築く、顧客の企業に対する信頼/愛着であれば「顧客エンゲージメント」となります。

 エンゲージメントに対する注目の高まりを受け、近年ではエンゲージメント向上に関わる様々なサービスが登場しています。その中で、熊澤さんの家業の一つであるクルージング事業を従業員や顧客(友人や家族でも良いです)のエンゲージメント向上に役立てようというのが今回のお話しです。

 なぜエンゲージメント向上にクルージングが資するのか?それはクルージングという「体験の共有」ができるためです。社会心理学者のレオン・フェスティンガーによると、体験の共有は、たとえそれが逆境や試練であってもエンゲージメントを高めるのだそうですが、かなり前にこのブログでとり上げた経営コンサルタント、パインとギルモアの「経験価値」のように、その体験が娯楽・教育・脱日常・美的という4つの要素が組み合わさることによって生み出された感情的、身体的、知的、精神的レベルにポジティブに働きかけるものである場合、満足感やロイヤリティが向上します。

 従来も従業員や顧客のエンゲージメントを高めるため、社員旅行、飲み会、運動会、接待といった試みがなされてきました。しかし、そうした試みが時代の変化に伴い効果的でなくなってきたのには様々な理由があるでしょうが、一つにはこれらの試みには「娯楽・教育・脱日常・美的」という要素が欠けていたためではなかろうかと個人的に思います。いずれにせよ、従来の試みに代わる新たなエンゲージメント向上手段が求められているのであり、その選択肢の一つとして東京湾に面する横浜や東京においてはクルージングがあるのではないかということです。

 クルージングは、先に挙げたような従来のエンゲージメント向上手段と比べ、特別感があり、参加容易性があり、時間がかからず、アクセスが良く、価格も手ごろといった特徴があります。さらにクルージングには、

娯楽/教育:海側から見る陸地の美しい景色、パーティー、船上での音楽など
非日常:船上という空間にいること、ゴージャスな船内や食事など
美的:やはりゴージャスな船内、美しい景色など

というように、前述の四要素がふんだんに詰まっていることが分かります。その性質が、特別な経験を提供し、エンゲージメント向上に役立つという訳です。

 質疑の中で出てきたことですが、今後心理学的な側面からクルージングのエンゲージメント向上に寄与する効果測定ができたら面白いと思います。

2.複業人材活用のすすめ

 後半は「復業人材活用」についてのお話しです。ここで敢えて「副業」ではなく「複業」の字を用いているのは、「本業の片手間」という意味ではなく、「複数の仕事をする」人材を指しているためです。近年、あらゆる産業が人材不足に悩まされています。しかしながら採用は遅々として進まず、時間とコストがかかり、仮に雇ったとしても、育ったら離職してしまう。一方で解雇は容易ではない。このような企業が抱える問題に対する解決策の一つに前半部の「エンゲージメント向上」があるとも言えますが、また別の、採用に代わるアプローチとして考えられるのが、後半部の復業人材です。

 30年ほど前、企業組織のダウンサイジングの一環として、アウトソーシングが流行りました。しかし、このアウトソーシングは、業務を外部委託する代償として、業務ノウハウの蓄積ができない、コストが高い、業務内容について逐一相談、指示する必要があるといった欠点があります。これと比べると復業人材は低コストで、そもそも副業や転職希望者ではないので、転職市場に現われてこない人材を獲得できる利点があります。実際、復業人材活用に取り組む企業の数は年々増えており、復業人材サービスを提供するプラットフォームも5年間で4.2倍に増加しています。

 もちろん復業人材活用にあたっても注意点はあります。一つにはマッチングサイトを利用すると人材の質にバラツキがでること、時間に制約があり、成果にどれだけコミットしてくれるか不透明であること、依頼事項が明確にできていないことなどです。このような点を曖昧にしたまま復業人材を活用すると、契約した人材が課題に応えるスキルを持っていなかったり、どこまで実務にコミットするかについて双方齟齬があったり、求める成果の認識に差があったり、結果として何も進まないという失敗につながる可能性があります。

 そこで熊澤さんが共同代表を務めるBRMzでは、クライアント企業の課題と目標を明確化し、課題解決や目標達成に必要なプロセスやスキルを洗い出し、その上で適切な人材の割り当てを提案します。例えば、課題が「営業活動の生産性向上」であったとした場合、その課題を細分化していくと下の図のようになります。



 その様にして細分化された課題の内、今回は何に取り組むのかによって適した人材が異なってくるはずです。復業人材はあくまで選択肢の一つであり、場合によっては社内人材を活用したり、採用に動いた方が良い可能性もあります。

 数ある復業人材系プラットフォームの中で、若手中小企業診断士からなるBRMzが提供するサービスは、前述のように課題をヒアリングしてから人材を提供するので、複業人材活用や協業に慣れていない企業が利用するのに適しています。副業人材活用にはメリット/デメリットがあり、どのように使うかも千差万別であるため、まず「何を実現したいのか?」という利用する側の目的意識が大切だと言えるでしょう。

 一見全く違ったテーマでのお話しのようですが、このように通してみれば、いずれも企業が抱える「人材」に関する課題へのアプローチであることが分かります。個人的には、このような選択肢もあるのだという新鮮なお話しで勉強になりました。

繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした

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目的は事業永続、目標は…-第163回YMS

2024年04月14日 | YMS情報


 4月10日、NATULUCK関内セルテ 801にて、第163回YMS(ヨコハマ・マネージャーズ・セミナー)を開催しました。

 今回の講師は、株式会社Gene(ゲン)代表取締役、坂東大毅様。「ベンダーマネジメントのすすめ~ 外部のデジタルの専門家たちとどうやりとりを行えば、自社のデジタル導入がうまくいくのか ~」と題してお話しいただきました。

 同社のHPを参照すると、「日本の企業文化に合うDXを」と題した、事業理念が目に飛び込んできます。かいつまんで言うと、日本のデジタル化が遅れているのは、日本らしいデジタルを実現できていないからではないか、という問題提起です。

 しばしば「日本のデジタル化が遅れている」ことの理由として、日本企業における「利用する側のITリテラシー不足」、「変化に対する対応力の低さ」などが挙げられますが、仮にこうした要因が日本企業の文化的あるいは組織構造的要因だったとすると、日本企業は以前からそのような体質だったということになるので、かつてどうして海外の先進事物を巧みに取り入れ、独自化することで世界をリードするモノづくり大国を築き上げることができたのかの説明がつきません。

 歴史を振り返ってみると、日本は古来より海外から文化を取り入れながらも、それを自国の文化に合うように改良し、独自化してきました。故稲盛和夫氏は、そのような創造性のあり方を、アメリカ型のようなゼロから何かを生み出すのではなく、「日々連綿と重ねる絶えざる創意工夫の道」と表現したそうですが、そうだとすると、日本におけるデジタル化による変革がなかなか進まないように見えるのも、そもそも日本とはデジタル技術を取り入れ、日々創意工夫しながら漸進的に変革を進めていくのが得意な文化であるためか、あるいはそうした文化にとって概して得意とは言えない「何か革新的なものを生み出す」というアメリカ型の変革を期待したために失敗に終わっているかのいずれかと考えられます。



 さて、前置きが長くなりましたが、本題に移りたいと思います。大抵の企業(事業会社)では、デジタル化(以下、DXと総称されることが多いので、ここでもそれに倣います)を推進するのに、様々なデジタルベンダー(WEBシステムやサービスを提供する企業)との連携が不可欠です。しかしながら、事業会社はデジタル技術について、ベンダーは事業の具体的な内容やプロセスについて互いに情報の非対称性があるため、両者を橋渡しする(デジタル技術について知識を持ち、事業会社の側に立った)役割が必要になります。坂東さんの会社(以下、Gene)は、自らシステム開発をするのではなく、事業のデジタルに関わる構想の具体化から実現まで一元的にサポートしています。自社が持つソリューションを提供することが目的ではないので、構想段階から導入後の事業成長を目的とした絵を描くことができます。また、デジタルベンダーが提供するサービスには、開発ばかりでなく、デザイン、マーケティングなど様々な分野がありますが、Geneではそれぞれの分野で強みを持つ業者を選定し、とりまとめることが可能です。また、Geneが仲介することにより、事業会社、個々のベンダーは自分にしかできない本業に集中することができます。これは伝統的な日本のモノづくり、例えば着物の製造過程が製糸、染め、織り、仕立てというように分業で成り立ち、それぞれが自分の強みを磨き上げてきたのと似ています。

 冒頭で触れたように、日本のデジタル化は遅れているといわれています。とは言え、国内におけるIT投資は、2026年には年間23兆円にも達するだろうと予測されているのです。ところが、坂東さんの肌感覚にはなりますが、恐らくデジタル導入した結果、上手くいっている企業は1割に満たないのではないかということです(各コンサルティング会社や省庁による調査でもDX成功率はバラツキはあるものの3%~16%という結果が出ています)。つまり、巨額な投資こそ行われているものの、その9割が無駄になっているということになります。これは、デジタル化が難しいからではなく、そもそも失敗するやり方をしているからだというのが坂東さんの見方です。

 「失敗するやり方」とは、前述の事業会社とデジタルベンダー間に存在する情報の非対称性の他、プリンシパル・エージェント問題(代理人が、依頼人の利益に反し、自らの利益を優先する行動をとってしまうこと)といった力学が、コストを継続的に増やしてしまうという構造的課題を無視してしまうことです。そのために生じるムリ・ムダ・ムラをなくすことで、推定20兆円に及ぶ投資損失を活かすことができれば、日本のDXは劇的に進む可能性があります(何しろ9割が無駄になっているのですから)。

 さて、事業会社とデジタルベンダーを仲介する役割は、以下の3つに大別されます。

①ベクトルマネジメント…課題定義、方針決定、判断基準の明確化等
②プロジェクトマネジメント…ステークホルダーを巻き込み、プロジェクトを推進する
③デジタルベンダーマネジメント…ベンダーの専門性を引き出し、活用することでプロジェクトの目的を実現する

 これらのいずれが欠けても事業会社のデジタルベンダーの連携は困難になります。Geneはこれら3つの役割を担うことができますが、とりわけ③デジタルベンダーマネジメントは専門性が高いため、事業会社で内部化することが難しく、それだけGeneが担うべき分野となります。

 さて、そもそも事業会社にとってなぜDXが必要なのでしょう?運営コストを下げる、価値を上げる、顧客との関係を深める等さまざまな理由がありますが、とどのつまりは「事業を永続させること」です。デジタル化したから変革が起こるのではなく、事業永続のために必要な変革を起こすために有用だからデジタル化するのです。その点を念頭に置いた上で、ベンダーマネジメントのポイントをまとめると、以下の8つが挙げられます。

0. 相手(デジタルベンダー)の力学を知る…前述の「プリンシパル・エージェント問題」を見極めるということです。
1. 問いを正しく立て、相談する…顕在化している課題が本当の課題ではない。解決策よりも、本当の目的を知る、そのためには正しい「問い」が重要。
2. 常に事業運営することを前提に意思決定をする…目の前のプロジェクトではなく、その後の事業運営を踏まえた最適化を考える。
3. 運営する前提で意思決定するための前準備…業務オペレーションと価値がどこにあるのかを明確にする。上手くいっている時の通常オペレーションだけでなく、例外のオペレーションも考慮に入れた効率化を考える。
4. 属人的=非効率ではない…イノベーションは属人的要素から生まれる。価値を生む「意味のある非効率」と「意味のない非効率」を峻別する。

 これで思い出すのが、17年前に読んだ和菓子屋「たねや」社長山本徳次氏が著書『商いはたねやに訊け―近江商人山本徳次語録』で述べておられた「表の非効率と裏の効率を使い分ける」です。

 「お客さんに見えないバックヤードは徹底的に効率化する。しかし、お客さんを相手にする店頭では逆。徹底的に非効率でいい」。

5. 運営する前提で意思決定するための判断軸…デジタル化によって減らせるものもあれば、増えるものもあるということを見極める。また、上手くいかなかった場合のことも考える。
6. ぶつかり合う関係ではなく、前向きに取り組んでもらう…全てのステークホルダーがWin-Winの関係であること。
7. プロジェクトのゴールは、アウトプットではなく達成条件を言語化する…技術や環境などが激しく変化する中、プロジェクトの初期段階でアウトプットを明確に定義するのは困難。それより、何をもって成功とするのか、達成条件を言語化しておくことが大事。


※「意味のある非効率」の図

 今回は「(デジタル)ベンダーマネジメントのすすめ」ということでお話しいただきましたが、その要諦はDX推進に留まらず、我々の日々の事業活動における意思決定においても当てはまるものばかりでした。IT関係に不慣れな人には一見難しく聞こえたかもしれませんが、自分の良く知る分野に置き換えてみると理解しやすいのではないかと思います。

繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした

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どうせ誰もやらないから、やる-第162回YMS

2024年03月21日 | YMS情報

※閉眼していたので、目を描き足しています。

 3月13日、NATULUCK関内セルテ 801にて、第162回YMS(ヨコハマ・マネージャーズ・セミナー)を開催しました。

 YMSも14年目となり、メンバーの年齢もそれなりに上がってきた中、今回から7月まで、比較的若手の経営者シリーズです。



 先頭バッターは、キャラバン合同会社代表の海老名栄人様。「日本の田舎をどうにかしようと思ったら、東南アジアでホテル経営をしていた件」と題し、「できない」を「できる」に変える逆転ビジネスについてお話しいただきました。

 お話の始まりは海老名さんが20代の頃、2000年代初頭に遡ります。学生時代、バックパッカーとしてアジアを中心に世界中を旅してきた海老名さんは、「自分は会社勤めには向いていない」と悟り、学生起業します。事業内容は何と刺青の彫師。特に刺青に関心があったわけではなく、コストを賭けず手に職をつけられるものということで選んだのだそうです。彫師の修行も、師匠の彫師が弟子をとらない方針だったため、傍で見学して覚えたのだとか。加えて、バンドをやっていた関係から、当時黎明期にあったSNSを活用してライブハウスにバンドを連れてくる仕事も手掛けるようになります。ライブハウスに来る人達はタトゥーを入れる人もそれなりにいるため、この仕事は刺青の仕事と相乗効果も生みました。のっけから破天荒なお話ですが、このようなある物とある物を掛け合わせて価値を高める発想はすでに海老名さんに備わっていたようです。この仕事は上手くいき、お金が貯まるとまた海外へ旅に出ていたそうです。

 ところが、2011年に発生した東日本大震災により、イベントというイベントが自粛ムード。さらには節電の風潮もあり、イベント業務が暗礁に乗り上げてしまいました。そこで海老名さんは、当時普及し始めていたスマートフォンに目をつけ、スマートフォンや光回線を販売する業務を始めます。この仕事は時代の潮流に乗り大ヒット、青森県に初めて5Gの電波塔を設置したのは、海老名さんなのだそうです。

 そして7年前の2017年、高齢の父親と祖母の介助のため、故郷の青森に戻ることになりました。

 2020年、世界が新型コロナウィルスによるパンデミックの波に覆われます。スマートフォンの事業はそれなりに順調でしたが、既にスマホは一般化し、海老名さんにとって遣り甲斐が失われていました。そんな中、目に入ったのは、「自然豊かで産物も多く、観光資源もある。さらに人は勤勉で腕も良い」にもかかわらず、衰退する一方の故郷(青森県五所川原市)でした。そしてその姿は、多くの発展途上国を見て歩いてきた海老名さんの目に、発展しつつも未だ40年前の内戦の後遺症が残るカンボジアと重なって映りました。培ってきた経験を故郷に何か還元できないのか…?

 ここで青森県について簡単に振り返ってみます。県人口、約124万人。月平均最高気温は28.4度 と日本一涼しい都道府県です。三方を海に囲まれ、中心部は山、さらには複雑な海岸線といった地形の特色もあって産物は豊富。青森といえばリンゴ、ニンニク、マグロなどが有名ですが、その他にもホタテ、ゴボウ、アンズ、カシス、ブラックベリー、イカ、鮭、白魚、豚など多くの名産があります。馬肉もあり、他県のそれと比べて肉質が柔らかいのだとか。公衆浴場の数も日本一で、しかも温泉です。文化としてはねぶた祭が有名ですが、五所川原市は「立ちねぶた」といって、高さ20m、重さ16トンにもなる巨大な山車が特徴で、「青森三大佞武多」に数えられています。このように豊富な産物、観光資源がありながら、宿泊施設が少なく、活かしきれていない、と海老名さんには映りました。

 一方、カンボジアです。一言でいうと、赤土と密林の国。アジア最貧国の一つでありながら、国民幸福度はトップクラス。僕のブログにもいくつか掲載していますが(下記参照)、観光資源と水資源が豊富です。米の生産も多いので、貧困層もお金はありませんが、飢えてはいません。現在、首都のプノンペンなどは急速な発展を遂げています。理由はいくつかありますが、ドルが流通しており、外国人が参入しやすいこと、安く豊富な労働力、若年人口が多いといったことが挙げられます。また、日本は内戦後のカンボジアの復興、地雷除去や遺跡の修復などに大きく貢献したため、カンボジアは親日国でもあります。しかしながら、近年の日本の衰退により、発展途上国の人たちにとって日本が出稼ぎの地として魅力が低下しているのも事実です。

 片や人口が減り衰退の一途をたどる故郷、片や日本に親しみを持ち、働きたいとも思っている沢山のカンボジアの人たち。「日本が再び選ばれる国になるために、今のうちに両国に強力な導線を引いておく必要がある」、そう考えた海老名さんは、新型コロナの影響で閉鎖が相次いでいた、カンボジアの一大観光地シェムリアップで2022年、DEN HOTELを創業します。さらには、職業訓練のためのDEN SCHOOLが来月開校予定です。因みに下の写真は、カンボジアの生胡椒です。そのまま、つまみのように食べられます。



アンコール・ワット
アンコール遺跡の壁画①-マハーバーラタ
アンコール遺跡の壁画②-ラーマヤナ
アンコール遺跡の壁画③-乳海攪拌
アンコール遺跡の壁画④-チャンパ王国との戦闘
アンコール遺跡の壁画⑤-凱旋祝宴の様子
タ・プローム
バヨン寺院
アプサラ-カンボジア伝統舞踊
カンボジアの踊り
カンボジア・カルチャー・ヴィレッジ

 故郷にあっては、2023年、「もったいない」を「ありがたい」に変える会社、キャラバン合同会社を設立。農業、飲食、クラフトを三大基幹事業とし、かつそれぞれを有機的に組み合わせることで、地方創生とアジアビジネスの融合を目指しています。

 事業は基本的に地元が抱える課題そのもの。例えば農業部門においては、県の食材を生産・販売しています。具体的には養鶏・養鹿の他、有害鳥獣駆除とその副産物として生まれるジビエ肉の解体処理と卸など。肉は東京にある中華料理の名店に卸しているそうです。僕の事業である衣類のリサイクルも同じですが、ジビエを作ることが目的ではなく、それがきちんと消費されることが大事です。そうでなければ持続することができません。

 飲食部門は、農業部門が生産した食材やクラフト部門で作られたお酒を販売します。また、販売するお店は、クラフト部門が建物の解体などで発生した建材を活用しています。さらに、飲食で発生した食品残渣は、農業部門に還って家畜の飼料として活かされます。

 クラフト部門は、前述のように廃墟を改装・解体するなどして活かす仕事です。青森県では人口減少に伴い、住む人のいない廃墟が問題となっています。驚いたのは、ある廃墟を海老名さんが自力で解体したということ。

 このように、ローカルの事業はそれぞれが互いに補完し機能しています。これをローカルの循環とすれば、今後、カンボジアの事業と青森の事業が補完し、グローバルの循環も生まれていくことでしょう。例えば、カンボジアで育成した人材が青森で活躍したり、青森の産物が遠くカンボジアで消費されたりというように。これを海老名さんは協調と調和、「Looserのいないビジネス」と呼んでおられました。

「どうせ誰もやらないし、近所からグローカルしていく」、「地元をどうにかしようと思ったら、カンボジアでホテルを経営していた」、こうした海老名さんのお話は、横浜でできるところから人と人の縁を繋ぎ、さらにそれを地域と地域で繋いで全体を活性化していくYMSの趣旨とも通じるものがあると思いました。何より、思い付きのやりっ放しではなく、全てを有機的に機能させていく発想と取り組みが素晴らしいと感じました。

 最後に。以前このブログで、食を通じて青森の良さを伝える、神楽坂の素敵なバル「Aotaimatsu」をご紹介しました。

繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした

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FMラジオでYMS/OMSのお話をさせていただきました

2024年02月28日 | YMS情報


 2月27日、かわさきFM加治工敦さん、金城色さんの生放送「琉球リミテッド〜かりゆし超特急〜」にて、YMS(ヨコハマ・マネージャーズ・セミナー)と先週発足したOMS(オキナワ・マネージャーズ・セミナー)のお話を渡邉理事と共にさせていただきました。

 何とある方を介してお話をいただいたのが前日の23時頃、詳細不明のまま当日の朝9時頃にようやくこの番組に出ることが分かったという次第です。実に目まぐるしい展開でしたが、逆に楽しかったです。

 ラジオはこれまで電話収録を2回ほど経験しましたが、スタジオでの生は初めてです。加治工さん、金城さんのおかげで非常にリラックスしたムードで話は進み、YMS発足の経緯と過去161回どんなことをしてきたか、また今回のOMS発足の切っ掛け、横浜と沖縄に対する思いなどをお話しさせていただきました。本業に関することも少しだけ...。詳しくは、スタジオの様子も見られる下の動画をご覧ください(7:40頃から話が始まります)。



 川崎市中原区に密着したFM局と伺っていたのですが、結構すぐに反響があり驚きました。ご縁をいただき、本当にありがとうございます。

繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした

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オキナワ・マネージャーズ・セミナー(OMS)、キックオフ-第161回YMS

2024年02月21日 | YMS情報


 2月20日、沖縄県中頭郡北谷町にて、第161回YMS(ヨコハマ・マネージャーズ・セミナー)を開催しました。

【過去2回の沖縄開催】
2016年2月8日:第67回YMS
2019年5月17日:第108回YMS

 YMSの沖縄開催はこれで3回目になりますが、今回は公益財団法人沖縄県産業振興公社様の知的財産包括支援事業の一つであり、また、YMSの沖縄版とも言うべき、オキナワ・マネージャーズ・セミナー(OMS)の第1回開催でもあります。



 さらには、北谷町商工会様のご協力を得て、同会のホールを会場として使わせていただくことができました。この度の開催にあたり、さまざまなご支援を頂いた関係各位の皆様にこの場を借りて御礼申し上げます。



 ということで、横浜からの参加者は宿泊地那覇よりバスで北谷町へ移動。



 僕はOMSの発起人たちと共に設営のため一足先に会場入りしました。



 中に入ると、地元の甲冑工房さんが制作された琉球の甲冑が展示されていました。本土と違い、沖縄の甲冑を目にすることはほとんどないので、興味深いですね。基本的に琉球の甲冑は本土の室町時代のものと同じだと聞いていますが、これは少し中国風のテイストが入っているようにも見えます。



 準備にあたりひとつ興味深かったのは、寒冷地でもないのに会場の窓が二重になっていたことです。聞いたところによると、沖縄は寒いからではなく、台風があるためこのようになっているのだそうです。



 さて、13時30分、4ヶ月の準備期間を経た第161回YMS(第1回OMS)が定刻通りに始まりました。



 テーマは『自社の知財を見つけるセミナー』、講師はYMSの発足母体となった2009年の「第4期みなとみらい次世代経営者スクール」および2011年1月12日開催の第4回YMSで講師をしていただいた、山本伸之先生です。



 さて、知的財産というと、特許権や商標権などいわゆる「産業財産権」が思い浮かびますが、知財の概念はそれよりはるかに広く、営業秘密やノウハウなども知財に含まれます。さらにそれを超えたところに人的資源や社外のネットワーク、経営理念などといた知的資産が存在ます。知的資産は企業が持つ「強み」と言い換えてもいいかもしれません。

 我々中小企業で特に特許や商標といった法的に保護してもらうような知的財産とは一見無縁と思われる企業でも上記の知的資産(強み)を掘り下げることにより、やがては知財に結び付くものが生まれるかもしれません。また中小企業の経営は経営者の属性と強く結びついていますから、組織だけでなく経営者個人の知的資産を掘り下げることが会社の知的資産、そして知的財産へと発展する可能性があります。



 そこで今回のセミナーでは、インタビューとディスカッションで参加者個人と会社が持つ価値観や強みなどを明らかにしていくワークを行いました。実感として得られたのは、質問されることによって自分の中で漠然としていた価値観や強みなどがより鮮明になったり、自分を他者の言葉で紹介してもらうことにより、自分の認識とは違った角度で価値観や強みを捉え直すことができるということでした。また、参加者の皆さんからは、「そもそもこういう思いや価値観、日ごろ抱いている課題などを誰かと共有できる場がなかった」、「自分で思っていたより深い認識を得ることができた」といった声が聞かれました。

 横浜、沖縄そして大阪から人が集まり、少なくともお互い半数は初対面から始まったセミナーでしたが、4時間という時間をかけて自己開示を行ったことにより、終盤には既に前から親密な間柄であったかのような雰囲気が生まれました。あっという間に時間が過ぎていった気がします。



 最後は、僕と先生との対談形式で、13年、160回続けてきたYMSの紹介をしました。発足したOMS、今後生まれるかもしれないその他の会のヒントになれば嬉しいです。



 そうした雰囲気の中で懇親会に移行。言うまでもなく大いに盛り上がり、その勢いは一部那覇に戻ってからも夜遅くまで続いたのでした。

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