7月26日、日頃お世話になっている株式会社MANY ABILITIES、野原秀樹先生の第2回「利他メソッド」無料勉強会(オンライン)でお話しさせていただく機会をいただきました。野原先生はYMS(ヨコハマ・マネージャーズ・セミナー)でも最多登壇いただいている先生です。
「利他メソッド」とは、野原先生の提唱する、より良い人間関係の構築、他を思いやる心の醸成、仲間と共にやりがいを実感できる、他者のよろこびを自らのよろこびと感じることができる人材を育成し、成長、変革できる組織を開発するメソッド(株式会社MANY ABILITIES、HPより)を言います。先月より、この「利他メソッド」を実践されている株式会社ミヤマエの宮前昭宏社長を中心とする、主に大阪の中小企業経営者の皆様との勉強会が始まりました。
ハーバード大学、ロバード・ウォールディンガーによる、同大学2年生の学生とボストンの極貧街で育った同年代の少年たち724名を75年にわたり追跡した有名な調査では、人を健康に幸福にするのは、富でも名声でも 無我夢中で働く事でもなく、「良い人間関係」であったということを明らかにしています。他者と健全な関係は他者への貢献から始まりますが、他者への貢献は同時に自尊感情も高めることが脳神経学者リリングらの実験で分かっています。つまり、「利他メソッド」で言うところの「他者のよろこびを自らのよろこびと感じることができる」ということです。
「他者への貢献」と「自尊感情」は相補的な関係にあります。他者への貢献は自尊感情を高めますが、自尊感情の高いことが他者への貢献を健全な形にもします。何故なら、共依存的な他者への貢献は自尊感情が低いために生じると考えられるからです。つまり、自尊感情と他者への貢献の健全な相互作用が人間関係の質を高め、幸福感の増進に繋がるということです(これを今回参加されたある社長は、経験的に「ハッピー・スパイラル」と呼んでおられました)。
では、その「自尊感情」を高めるにはどうすればよいのか?アメリカ心理学の父とも言われるウィリアム・ジェームズの時代から、自尊感情(ジェームズは「自己重要感」と呼んでいますが)は人間の根源的欲求とされているはずですが、人間は外部環境の影響を受けて育つので、現実にはこの欲求が必ずしも満たされる環境にいるとは限りません。その結果、人は満たされない自尊感情を補償する様々な行動をとるようになり、それが様々な問題を引き起こします。当然、人間関係にも良くない影響を及ぼすでしょう。
しかし、我々は環境を選んで産まれてくるわけではありません。したがって、所与の環境の中で健全に自尊感情を高めていくには、無意識に行われる補償行動を回避する、何らかの視座が必要になります。僕は心理学の専門家ではありませんが、経験的に理解している範囲において、この点の最も基本的な部分、「自己受容」についてお話しさせていただきました。普段から野原先生のお考え、また今回のテーマである「利他メソッド」に共通する点が多かったためです。
距離的にも離れ、全く違った仕事をしていますが、参加された中小企業経営者の皆さんとお話しさせていただいて、経験や表現方法は違っても、ベースのところではみな同じようなことを考えていらっしゃるのだということが分かりました。それだけでもとても心強く感じました。逆にベースは同じでも、その表現方法は千差万別ですので、大変勉強になりました。
繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした