窪田恭史のリサイクルライフ

古着を扱う横浜の襤褸(ぼろ)屋さんのブログ。日記、繊維リサイクルの歴史、ウエスものがたり、リサイクル軍手、趣味の話など。

リサイクルウエスの環境優位性

2010年07月28日 | ウエスものがたり
 ウエスものがたり【最終回】「リユースの力、エコソフィーの力」で、追加の資源投入を極力排したリサイクルウエスの環境優位性についてお話ししましたが、この度、社団法人 産業環境管理協会が行ったLCA調査によりますと、上のグラフのように、レンタルウエスとの比較においてもライフサイクルベースでのCO2排出量が1/10に抑えられるということです。

 調査はレンタルウエスを10回クリーニングした場合と、同等の作業においてリサイクルウエスを使用した場合とを比較していますが、レンタルウエスは洗って使いますので、ウエスそのものの最終処分量はリサイクルウエスの方が多くなります。

 しかしながら、ライフサイクルにおけるCO2排出量はレンタルウエスの方がずっと多くなっています。その内訳を見てみますと、CO2排出量の約半分はクリーニング工程に集中しており、調査の結果から、この部分における環境負荷が大きなウェイトを占めていることがわかります。

 もうひとつ、調査の結果とはかかわりありませんが、重要なポイントがあります。リサイクルウエスの原料は、一旦廃棄された衣料、つまり社会的にはすでに廃棄量としてカウントされたものであるという点です。つまり、使用済みのリサイクルウエスを処分したとしても、社会的総量としてのゴミの発生量はほとんどかわらないということになります。

 この点は、「リユースの力、エコソフィーの力」で申し上げたこととほとんど同じですが、意外と盲点なのではないかと思います。

 繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした

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ウエスものがたり【最終回】リユースの力、エコソフィーの力

2008年07月02日 | ウエスものがたり


上の表をご覧ください。これは経済産業省が2003年に行なった『繊維製品のLCA調査報告書』よりウエスを新しい綿布をつかって生産した場合とぼろ(古布)をリユースして生産した場合のエネルギー消費量をCO2量に変換した比較です。木綿というと天然素材=環境に良い、というイメージをお持ちの方も多いのではないかと思いますが、木綿というのは実はその生産過程で膨大なエネルギーを必要とするのです。しかしウエスを作るために新たに木綿という資源を投入する代わりに、すでに衣料としての役割を終えたぼろをリユースした場合、両者のライフサイクルにおけるCO2発生量を比較すると、累積でぼろを利用したウエスのCO2発生量は前者の場合のわずか1/100にすぎません。
 
 どうしてこのような驚くべき違いが発生するのでしょう。それはぼろウエスが既に存在している、しかも一旦洋服や布としての役割を終え廃棄された物を原料として使用しているため、綿布を生産するために投入した膨大な資源やエネルギーの追加投入を抑えることができるからです。しかしぼろウエスの原料である服や布も生産の過程で資源やエネルギーを消費するではないか、それを考慮に入れていない比較は詭弁ではないかと思われる方もいらっしゃるかもしれません。果たしてそうでしょうか。

 例えば、布(または衣服)を一単位作るのに必要なエネルギーを10、ウエスを作るのに必要なエネルギーを10としましょう。ウエスを新しく木綿を栽培して生産する場合、ウエス1単位を作るために必要なエネルギーは20になります。一方、衣服を再利用してウエスを作る場合、同じ20のエネルギーで衣服とウエス2単位を作ることができます。実際にはぼろウエスを作る場合もエネルギー消費はありますが、この例の場合その量は無視できるほど極小と見なして差し支えないでしょう。したがって既に存在している資源を有効活用すれば同じエネルギー投入で社会厚生2単位を実現でき、逆に言えば投入エネルギーをそれだけ節約することができるというわけなのです。

 よく同じECOでもECONOMYとECOLOGYは二律背反で両立しない、と言われます。しかし先ほどの例で見たように、社会厚生を維持しつつ環境負荷を減らすという「両立」は「リユース」によって実現可能であることにお気づきでしょうか?環境負荷を減らすだけならそもそもエネルギー消費をしない、ごみを出さないというのが最も有効であるのは言を俟たないのですが、経済活動の結果、資源やエネルギー消費が必然的に発生するのであればこれらを可能な限り有効に使うことで経済活動と環境負荷低減のバランスをとるのが最も有効な手段なのです。それでは両者のバランスをとる「支点」となるものは何か、それはわたしたち一人ひとりの「知恵」(SOPHIA)です。このような視点がこれからの時代に必要なのだと思います。

 したがってナカノ株式会社ではこのようにECONOMYとECOLOGYをSOPHIAによって結びつける概念を”ECOSOPHY”(エコソフィー)と呼び、企業活動の根本概念として位置づけています。ぼろウエスの果たす役割はエコソフィーによって機能的優良性を超え拡大していくのだ、また拡大させていかなければならないとわたしたちは考えているのです。

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ウエスものがたり【第九回】ぼろウエスの今日的意義

2008年07月01日 | ウエスものがたり
第二回でお話ししましたが、ここでもう一度ウエスを作るのに何故ぼろ、つまり使い古した布を使うのかについておさらいしましょう。木綿は何度も洗濯を重ねると脂分が抜け、繊維の表面も程よく荒れて水や油を良く吸い取るようになります、つまり良く使われた木綿ほど優れたウエスになったから、ぼろが使われたのです。したがってウエスにぼろを使うのはリサイクルがこれほど社会的な問題としてクローズアップされるはるか以前から、その機能的理由によってごく当然のことだったのでした。



 それに加えてぼろウエスの今日的意義として、大量に排出されるようになった古着を活用するための有効な手段の一つということがいえるでしょう。さらに地球温暖化防止のためCO2削減目標が国際条約となった今日、ウエスのように一度廃棄された古着を再利用するというリユースはCO2発生を抑制する極めて有効な手段として見直されるべきものとなっています。

 ウエスは自動車のように排気ガスを出すわけではありません。それなのに何故ぼろから作られたウエスを使うことが廃棄された古着の削減につながるだけでなくCO2発生抑制につながるのでしょうか。それはぼろウエスを使うことによって、新しい綿布や繰り返しクリーニングして使うレンタルのウエスを使った場合に発生するであろうCO2を未然に抑止できるという「機会損失の抑止」という考え方にもとづいています。さらに今日、製品の環境負荷を測定するのにはその対象となる製品が使用されたり廃棄されたりした場合だけでなく、その製品を作るために投入した資源やエネルギーなど製品の生い立ちから廃棄まで(これを製品のライフサイクルといいます)全ての過程における負荷を考慮に入れることが主流となっています。これをライフサイクルアセスメント(LCA)といいます。このLCAの手法によると、その製品が存在することによって発生するトータルの環境負荷を比較することができるのです。例えば、太陽電池パネルが環境に良い側面をもった製品であることは間違いないのですが、太陽電池パネルが環境にどれほど良いのかを測定するにはその製品がもつ性能だけでなく製造するために投入した資源やエネルギーも考慮に入れなければ不十分であろうというのがLCAの考え方です。

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ウエスものがたり【第八回】ウエスができるまで-包装

2008年06月30日 | ウエスものがたり
 
 ようやくウエスの包装です。包装は先ほど計量のときに平らに伸ばして積み重ねたウエスを二つ折りにし、ビニール袋に詰めます。こうすることでウエスを使うとき一枚一枚取り出しやすくなるのです。包装されたウエスは一袋2kgあり、5袋つまり10kgを一単位として結束され出荷されます。

 さてこれまで4回にわたりウエスができるまでの工程をお話してきました。次回からはウエスにぼろを使うことの今日的意義についてお話したいと思います。

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ウエスものがたり【第七回】ウエスができるまで-品質検査

2008年06月29日 | ウエスものがたり
 たかがウエス、されどウエス。ウエスは製品として出荷される前に何度も何度も徹底して検査が行なわれます。今日この記事を読まれることでウエスがただの切れ端ではない、立派な工業製品であるということがお分かりいただけると思います。ではその検査工程を順を追ってご説明しましょう。

 裁断が終わると、まず付属物が残っていないか金属探知機で検査を行ないます。



機械による検査で合格してのちさらに検査員による検査を行ないます。



そして良品として合格したウエスを商品として使う際に取り出しやすいように1枚1枚伸ばしながら計量用バスケットに入れ、計量を行ないます。計量する秤も正確な入数を計測するため1日に2回検査されます。その様はまるで肉を計り売りする精肉屋さんのようです。



 計量されたウエスは包装される前、さらに精度の高い金属探知機で付属物が残っていないか検査されます。この金属探知機は加工食品の検査で使われるものと同じものです。



 工程は前後しますが、この金属探知機による検査はウエスを包装した後もう一度行なわれます。



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ウエスものがたり【第六回】ウエスができるまで-裁断作業

2008年06月28日 | ウエスものがたり
ウエス原料が選び出されたら、次にそれらを裁断します。かつて裁断には剃刀や鎌が使われていましたが、高度成長期ごろから写真のような電動裁断機が使われるようになりました。このウエス用裁断機は日本で発明され、現在では世界中でこの形の裁断機が使われています。



 かつて日本人の衣料は和服が中心で、洋装が普及した戦後でも例えば「サザエさん」で見られるように家の中では和装ということが続きました。和服、和裁は糸をほどけば元の四角い布に戻るように作られており、着古したものを仕立て直したり、雑巾として使ったりするのが非常に便利なようにできていました。しかし昭和40年代以降、国民生活が完全に洋服中心となると立体裁断である洋服をいかにウエスとして使いやすいように平面に、しかも無駄なく裁断できるかということが課題となりました。しかも洋服は形状が極めて多岐にわたるので、洋服ごとに裁断の仕方が微妙に違ってきます。こうした課題については各々のウエス屋さんが工夫を凝らし、独自の裁断方法を編み出しているものと思います。



 しかも拭き物として使うウエスは洋服についているボタン、ファスナー、ピンや装飾などを取り除かなければなりません。この作業を裁断しながら行ないます。また、デリケートな作業に使う柔らかいウエスや薄手であることが求められるウエスの場合、拭き物に適さない襟や袖口の厚い部分も取り除かれます。そうした諸条件を満たした上でなおかつ拭き物として使うのに適した大きさでなければなりません。通常ウエスの標準的な大きさは30cm×30cm~60cm×60cmですが、それはこの位の大きさが拭き取るのに一番使いやすいからです。

 さらに一枚として同じ古着はありませんので、ウエスは都度内容の異なる原料から極力品質が一定するように調整を行なわなければなりません。この作業は丁度ワインやウィスキーのブレンダーと同じように、熟練と勘が頼りになります。ウエスというと布をただ切っただけのように思われがちですが、このように実は意外と職人技なのです。

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ウエスものがたり【第五回】ウエスができるまで-選別作業

2008年06月27日 | ウエスものがたり
ウエスは大抵の場合一般の家庭から回収された衣料の中からウエスに適したものを選び出して作られます。選び出されるのは一言でいえば「綿素材」ということになりますが、具体的な衣料の種類で申し上げますと、Tシャツ、肌着、シーツ、Yシャツ、ブラウス、ポロシャツ、パジャマ、エプロン、浴衣、綿スカート、綿ズボンなどになります。これらを前回申し上げた素材、色、厚みなどによってさらに細かく仕分けするのです。このようにして選び出された衣料や布をわたしたちは「ウエス原料」と呼んでいます。



 加えてウエス原料はただこうした衣料や布を分ければ良いというのでなく、第二回でお話したように水や油の吸収性に優れる「何度も洗濯を繰り返されたもの」である必要があります。例えばおろしたてのTシャツでもウエスらしきものは作れますが、決して良いウエスとはなりません。吸収性の悪いウエスでは何度も拭かなければならないので作業効率が低下する上、使用量も多くなってしまうからです。

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ウエスものがたり【第四回】ウエスの種類

2008年06月26日 | ウエスものがたり
さて、前回まではウエスという産業がどのようにして興ってきたのかについてお話してきました。これからはウエスというものが実際どのようなものなのか、どのようにして作られるのかなど珍しいウエスの製造過程についてお話していきたいと思います。ウエスを日々お仕事で使っていらっしゃる方でも、そのウエスがどのようにして作られるのかご存知の方はなかなかいらっしゃらないと思います。ただ初めにお断りしておきますと、ウエスの種類や名称、製造工程などは生産される地方や業者によってまちまちであり、これから申し上げることがウエス全般について必ずしも汎用的に当てはまるものではありません。その点をあらかじめご了承ください。



 一口にウエスといってもその種類は用途、素材、色、厚み、大きさなどによって実に様々であり、ナカノ株式会社で扱っているウエスだけでもざっと50種類にのぼります。これでもかなり統合・整理した方であり、かつてはさらに多くの種類がありました。したがって非常に大雑把な分類になるのですが、おおよそウエスは以下のような要件が仕様用途に応じて複合的に組み合わさって分類されます。

・素材…織物、メリヤス、タオル地など
・色…白、薄色、濃色など
・厚さ…薄手、厚手など
・大きさ…大きいもの、中位のもの、小さいもの、定型のもの

使用用途はそれこそ何かを拭く作業、磨く作業であればあらゆる所で使われますし、ちょっと変わったところでは漏水防止の詰め物として使われたりもします。一般的なところでいうと例えば色落ちの恐れのある溶剤作業や塗装作業では白色無地、柔らかいメリヤスのウエスが好まれますし、機械油をざっと拭い去るような作業では少々厚みがあり吸収性に優れたウエスが使われます。

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ウエスものがたり 【第三回】日本の主要輸出品目だったウエス

2008年06月25日 | ウエスものがたり
 一方、開国したばかりの日本に大量の綿布があることに気づいた西欧諸国はきっと驚いたことでしょう。われわれ日本人は木綿というと何か庶民的な、安いものというイメージを持っています。例えば徳川家光が慶安2年(1649年)に出したとされる、俗にいう「慶安のお触書」には「(前略)百姓は衣類之儀、布木綿より外は帯、衣裏にも間敷事」とあり、貧しい庶民でも木綿は着ても構わない、つまり木綿は贅沢品でないという認識が江戸時代の初期からあったことを示しています。ところが西欧諸国において木綿や麻は大変な貴重品でした。18世紀のヨーロッパで最大の貿易は何と奴隷貿易だったわけですが、その理由は砂糖や綿のプランテーションに大量の労働力を必要としていたからで、裏を返せばそれほど当時の西欧諸国は木綿の確保に躍起になっていたということなのです。余談になりますが幕末に日本と修好通商条約を結ぶために来日したスイスのアンベールは当時の江戸深川を観察し、「(前略)麻は、ヨーロッパの織物としては、最も高価なものなのに、日本のような国ではきわめてつまらぬものとみなされているのである」(『続・絵で見る幕末日本』講談社学術文庫)とわざわざ本国への報告書に書き残しています。

 加えて日本人には当時から風呂に入るという習慣が一般庶民の間にも浸透していました。現在のわたしたちの感覚からいえばいかにも当たり前のようなのですが、当時の欧米諸国はまだ風呂に頻繁に入るという習慣がありませんでした。実際、アメリカの大統領が住むホワイトハウスでさえ初めてバスタブが設置されたのは1853年、つまりペリーが江戸湾に現れた年のことだったのです。ですから先ほどと同じく幕末に日本を訪れた欧米人は一様に頻繁に入浴するという日本人の習慣に驚いています(尤も彼らは日本人に皮膚病や卒中で死ぬ者が多いのはこの入浴という習慣が原因である、というように否定的に捉えていたようです)。話がそれてしまいましたが、当時の日本は一般庶民に綿布が普及していたばかりでなく、入浴の習慣により洗い晒しの綿布が豊富に存在するというまさに良質のウエス原料を産出する土壌があったのです。
 
 先進工業国である欧米諸国が大量に消費する拭き物に最適な綿布に着目したのは当然の成り行きといえました。ウエスは欧米向けの輸出商品として一大産業となり、昭和10年の統計では日本の主要輸出品目第10位に位置するほどまでに成長したのでした。ウエスの輸出はその後、戦後の混乱期を除き高度成長期まで盛んに続きましたが、日本がコスト高の国になったこと、また昭和40年代以降輸出先であった欧米でも日本の技術を真似てウエスを製造するようになったことなどから今ではほとんど行なわれなくなりました。

続・絵で見る幕末日本 (講談社学術文庫)
A. アンベール
講談社

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ウエスものがたり 【第二回】日本文化が生み出したウエス

2008年06月24日 | ウエスものがたり
さて、ウエスは一般にぼろ、つまり使い古した衣料から作られます。何故わざわざ使い古した布を使うのかといいますと、その方が油をよく吸う良質の拭き物になるからです。ウエスは木綿布が中心ですが、新品の木綿は繊維に脂分を含んでおり、水や油の吸い取りが良くありません。皆さんもおろしたてのタオルで髪を拭くと水の吸収が悪くて使い難いという経験をしたことがあると思いますが、それと同じ理屈です。しかし木綿は何度も洗濯を重ねることで脂分が抜け、繊維の表面も程よく荒れて水や油を良く吸い取るようになります。日本人は古くからこの特性を良く知っており、家庭の中で着古した部屋着(この場合、浴衣のような和服を指していますが)をほどいて雑巾として使い、果ては台所のかまどの燃料とするまで徹底して活用していたのです。

 その様な文化的背景があったからこそ、明治の近代化がおこったとき機械や軍事装備のメンテナンスに欠かせない拭き物に最適な綿布を集め、雑巾をつくり工場や船舶会社あるいは軍に納品する、いわゆるウエス屋が産業として成立したのでした。ウエス業はまさに日本文化が生み出したユニークな業種だったと言えるかもしれません。

大江戸リサイクル事情 (講談社文庫)
石川 英輔
講談社

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