4月20日、中央大学駿河台記念館にて
第6回ネゴシエーション研究フォーラムに参加してきました。
今回の講師は、
認定NPO法人日本紛争予防センター(JCCP)事務局長の
瀬谷ルミ子さん、「紛争地域における交渉による平和構築」」と題してお話いただきました。
瀬谷さんはJCCP事務局長として、紛争地域における平和構築、治安改善、武装解除、社会再統合(DDR)等、実際に現地に入っての活動を続けておられます。そのため、我々の日常生活では気がつかないようなお話を沢山伺うことができました。
まず、紛争とは何かと言うことですが、広くは「複数間の意見の対立」のことを指し、当然夫婦喧嘩のような日常生活における揉め事も紛争に含まれます。しかし、一般に国際関係で紛争といった場合、それは「解決に武力や暴力を用いるもの」を指します。ここでは以下、紛争を後者の意味で用います。
第二次世界大戦が終結して以降、2009年までに世界で起こった紛争は442件、死者は1千18万7千242人に上るそうです。普段あまり意識していませんでしたが、当社と馴染みの深いフィリピンも戦後一貫して紛争地域に含まれていました。特に近年は紛争地域が固定化される傾向にあるそうです。それは、一旦紛争が起きると継続しやすいということと、崩れた信頼は回復することが難しいからだそうです。
瀬谷さんはそうした地域で実際に上記のような活動をされているのですが、一方的に援助するのではなく、紛争の加害者と被害者とが問題解決の担い手となれるよう、仕組みを構築したり、現地の人材を育成したりしているそうです。また紛争のタイプにも色々あり、大きく分けて①内戦・暴動、②部族間抗争、③テロ・ネットワーク型とあるそうですが、紛争のタイプや地域事情によってもそれぞれ平和構築のアプローチは異なってきます。JCCPではそうした複雑な事情に応じた様々なプログラムを実施し、実績を上げておられますが、いずれの場合にも、当事者が「自ら合意形成に至った」と思わせるような演出が大切だということです。
「平和とは生きる選択、生き方の選択がある状態のことである」という瀬谷さんの言葉に、現場と接しながら活動しておられる方の生々しさを感じました。長い間殺し合いを続け、被害者と加害者の間に複雑な感情が絡んでいる中、安易に和解や共存などと言うことはできないのであって、そこまでは難しくとも、まずお互いに生きる選択、生き方の選択がある状態を構築することができれば、とりあえずは平和なのだと。言われてみれば確かにその通りだと思いました。ただし、紛争の性質やとりあえずの平和の先に和解や共存があり得ることも確かです。
お話の中では、紛争解決の交渉、社会的自立支援、和解と共存、など様々な活動の具体例が挙げられていましたが、ここで全てをご紹介することはできません。一つ挙げるとすれば、事例の中に紛争で村を失った難民たちが自主的に村を再建するというものがありました。お話を伺っていて、このアプローチは「報徳仕法」(幕末期に600を超える荒廃した農村を復興、救済した二宮尊徳(金次郎)による再建策)に似ていると思いました。つまり、村の再興は一にも二にも個人および集団の意識にかかっているわけですが、集団についていていえば、1.リーダー(村長)に村を再興しようという意志があり、2.人々が村を再興する必要を感じており、3.JCCPさんが支援を実行できる立場・状況にあり、4.成果の出やすいところから順次着手する、これらの条件が揃って初めて村の再興が実現できたということです。
最後に武装解除等の交渉について言えば、何より合意形成に時間をかけること、そのために交渉当事者の抱えている様々な内部事情や外部事情を考慮し、妥結点を見出すために必要なあらゆる措置を採ること、そして平和構築は次世代の為の妥協の産物であるということも心得ておくことが必要であること、アメとムチの両方を使い分ける必要もあることなどが挙げられていました。理想論や理論ではない、あくまでも現実に即した交渉の視点は、我々の日常生活にも通じるものだったと思います。
繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした
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