都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「VOCA展 2011」 上野の森美術館
上野の森美術館(台東区上野公園1-2)
「現代美術の展望 VOCA展 - 新しい平面の作家たち - 」
3/14-3/30
上野の森美術館で開催中の「現代美術の展望 VOCA展2011 - 新しい平面の作家たち」へ行ってきました。
本年の受賞者は以下の通りです。(以前、こちらのエントリでもまとめてあります。)
VOCA賞 中山玲佳
VOCA奨励賞 後藤靖香
VOCA奨励賞 森千裕
佳作賞 熊澤未来子
佳作賞 澤田明子
大原美術館賞 上田暁子
また出品作家、及び推薦委員については公式WEBサイトをご覧ください。
VOCA展出品作家/推薦委員@上野の森美術館
本年も上記各委員より推薦された40歳以下の作家、計36名の平面作品が展示されていました。
後藤靖香「あきらめて」 顔料ペン、墨、カンバス 240.0×400.0cm
まず私の中で最も印象に深かったのは、奨励賞を受賞した後藤靖香の「あきらめて」です。横4mにも及ぶ大画面に黒一色で描かれているのは、彼女が常にモチーフとしていた戦時中の日本の兵隊でした。
オールを持って漕ぐ彼らの形相はまさに必至で、ボートから今にも落ちるのではないかと思うほどに前のめりなって力強く波をかき分けています。
これは作家自身の親戚に取材し、シベリア出兵時に仲間を捜索する水兵とのことでしたが、シンプルなモノクロームの世界には他の作品からは得難いリアルな緊迫感が立ち上がっていました。
モノクロームとは一転、今度は赤と白のみでどこか不穏な空間を表現したのは横野健一の「繋がる」です。
木版を制作するように板を彫りながらも紙に転写せず、そのまま支持体にしてしまうという技法自体も興味深い点がありますが、鬱蒼と生い茂る木立とあばら屋、また絡み合う犬と亡霊のように立つ男の姿からは、それぞれ剥き出しの生と死が交錯してぶつかり合っているような混沌とした世界を感じてなりません。血のように一面に滴る赤もまた鮮烈な印象を与えていました。
混沌と言えば熊野海の「Emission Nebula」もそうした言葉が似合う作品ではないでしょうか。
ケバケバしいまでのピンクのマグマを噴出する奇岩の奥には宇宙が垣間見え、下に広がる巨大な湖にはビキニ姿でくつろいだり何故かスーツや和装の格好をして歩く人達などが何ら脈絡なく描かれています。
さながら楽園か観光地を思わせる光景と、すぐ後ろに展開する破滅的な惨事とが、奇妙なほど均衡しているのがまた面白いと思いました。
縦横2メートルや3メートルと非常に大きな作品が目立つ中で、いつもの小さなサイズで作品を展示しているのが青山悟です。
「審査員たち/絵画の考察」の2点の刺繍は縦20センチ超、横30センチほどに過ぎませんが、その主題は今回の展覧会に問題を投げかけるものとなっています。当然ながらその技術はもとより、コンセプトにも感心させられる面の多い作品でした。
その他では推薦の山下裕二氏が「二十一世紀に復活した近世初期風俗画」と称する小池真奈美の「あたま山」も忘れられない一枚です。今も昔も変わらない日本人の桜の下でのどんちゃん騒ぎが時空を超え、どこかバーチャルな感覚で描きだされました。
平面以外のジャンル、つまりはパフォーマンスや立体の印象が強い雨宮庸介やパラモデルのいわゆる絵画を見られたのも収穫でした。
森千裕「Eternal itching(SAYONARA)」 透明水彩、鉛筆、水彩紙、木製パネル 145.0×210.0cm
地震の影響により関連のイベントは殆ど中止されてしまいましたが、作家の授賞式とトークが急遽、会期末の3月29日(火)に設定されました。
[VOCA展2011アーティストトーク/授賞式] 3月29日(火)
15:00~ アーティストトーク VOCA賞:中山玲佳/奨励賞:後藤靖香
16:15~ 授賞式(17時閉館)
中山玲佳「或る惑星」 アクリル、カンバス 130.0×388.0cm
3月30日までの開催です。
*開館日時:会期中無休。10:00~17:00
「現代美術の展望 VOCA展 - 新しい平面の作家たち - 」
3/14-3/30
上野の森美術館で開催中の「現代美術の展望 VOCA展2011 - 新しい平面の作家たち」へ行ってきました。
本年の受賞者は以下の通りです。(以前、こちらのエントリでもまとめてあります。)
VOCA賞 中山玲佳
VOCA奨励賞 後藤靖香
VOCA奨励賞 森千裕
佳作賞 熊澤未来子
佳作賞 澤田明子
大原美術館賞 上田暁子
また出品作家、及び推薦委員については公式WEBサイトをご覧ください。
VOCA展出品作家/推薦委員@上野の森美術館
本年も上記各委員より推薦された40歳以下の作家、計36名の平面作品が展示されていました。
後藤靖香「あきらめて」 顔料ペン、墨、カンバス 240.0×400.0cm
まず私の中で最も印象に深かったのは、奨励賞を受賞した後藤靖香の「あきらめて」です。横4mにも及ぶ大画面に黒一色で描かれているのは、彼女が常にモチーフとしていた戦時中の日本の兵隊でした。
オールを持って漕ぐ彼らの形相はまさに必至で、ボートから今にも落ちるのではないかと思うほどに前のめりなって力強く波をかき分けています。
これは作家自身の親戚に取材し、シベリア出兵時に仲間を捜索する水兵とのことでしたが、シンプルなモノクロームの世界には他の作品からは得難いリアルな緊迫感が立ち上がっていました。
モノクロームとは一転、今度は赤と白のみでどこか不穏な空間を表現したのは横野健一の「繋がる」です。
木版を制作するように板を彫りながらも紙に転写せず、そのまま支持体にしてしまうという技法自体も興味深い点がありますが、鬱蒼と生い茂る木立とあばら屋、また絡み合う犬と亡霊のように立つ男の姿からは、それぞれ剥き出しの生と死が交錯してぶつかり合っているような混沌とした世界を感じてなりません。血のように一面に滴る赤もまた鮮烈な印象を与えていました。
混沌と言えば熊野海の「Emission Nebula」もそうした言葉が似合う作品ではないでしょうか。
ケバケバしいまでのピンクのマグマを噴出する奇岩の奥には宇宙が垣間見え、下に広がる巨大な湖にはビキニ姿でくつろいだり何故かスーツや和装の格好をして歩く人達などが何ら脈絡なく描かれています。
さながら楽園か観光地を思わせる光景と、すぐ後ろに展開する破滅的な惨事とが、奇妙なほど均衡しているのがまた面白いと思いました。
縦横2メートルや3メートルと非常に大きな作品が目立つ中で、いつもの小さなサイズで作品を展示しているのが青山悟です。
「審査員たち/絵画の考察」の2点の刺繍は縦20センチ超、横30センチほどに過ぎませんが、その主題は今回の展覧会に問題を投げかけるものとなっています。当然ながらその技術はもとより、コンセプトにも感心させられる面の多い作品でした。
その他では推薦の山下裕二氏が「二十一世紀に復活した近世初期風俗画」と称する小池真奈美の「あたま山」も忘れられない一枚です。今も昔も変わらない日本人の桜の下でのどんちゃん騒ぎが時空を超え、どこかバーチャルな感覚で描きだされました。
平面以外のジャンル、つまりはパフォーマンスや立体の印象が強い雨宮庸介やパラモデルのいわゆる絵画を見られたのも収穫でした。
森千裕「Eternal itching(SAYONARA)」 透明水彩、鉛筆、水彩紙、木製パネル 145.0×210.0cm
地震の影響により関連のイベントは殆ど中止されてしまいましたが、作家の授賞式とトークが急遽、会期末の3月29日(火)に設定されました。
[VOCA展2011アーティストトーク/授賞式] 3月29日(火)
15:00~ アーティストトーク VOCA賞:中山玲佳/奨励賞:後藤靖香
16:15~ 授賞式(17時閉館)
中山玲佳「或る惑星」 アクリル、カンバス 130.0×388.0cm
3月30日までの開催です。
*開館日時:会期中無休。10:00~17:00
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