都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「16th DOMANI・明日展」 国立新美術館
国立新美術館
「未来を担う美術家たち 16th DOMANI・明日展 建築×アート」
2013/12/14-2014/1/26
国立新美術館で開催中の「未来を担う美術家たち 16th DOMANI・明日展 建築×アート」を見てきました。
今年で第16回目を迎えたドマーニ展。文化庁の新進芸術家海外研修制度の成果発表の場でもある展覧会。今年も絵画に彫刻にインスタレーションなど。多様な表現をとる作家が紹介されています。
会場内、一部作品を除いて撮影が可能でした。というわけで印象深かった展示を挙げてみたいと思います。
小笠原美環 展示室風景
まずは1973年生まれの小笠原美環。2002年にハンブルグの芸術大学を卒業。2011年にドイツに派遣された画家です。
小笠原美環「Bildung/学」2008年 油彩、キャンバス 個人蔵
出品は10点の油彩画。グレーやブラックなどの落ち着いた色合いによって表された窓や廊下。シンプルな室内空間です。しかしながら何かを惹き付けるような存在感がある。その静謐感と清潔感。光の仄かな陰影もまた美しい。
小笠原美環「Living/生」2010年 油彩、キャンバス
それに作品とホワイトキューブの相性も良いのではないでしょうか。思わず長居してしまいました。
そして川上りえ。1989年に東京藝術大学院工芸科の鍛金を修了。2006年にニューヨークに派遣された彫刻家です。
川上りえ「Zero Gravity」2013年 金属線
写真ではうまく伝わらないかもしれませんが、こちらも新美の広いスペースを活かしてのインスタレーション。素材は細い金属線です。それが天井から吊るされて、筒や梯子のように連なっている。中央部はサークルです。何やらカーテンにでも包まれているような感覚。観客は頭上に気をつけながら、その合間を縫うようにして進みます。
大野由美子「home」2013年 パズルピース
大野由美子の展示はインタラクティブです。タイトルは「home」。床面に広がるのは無数のパズルピース。家の象徴というパズルを観客が組み合わせていく。所々に見られるのは文字によるメッセージ。観客の手で作られたのでしょうか。しゃがんでパズルピースと向き合いました。
吉本直子「鼓動の庭」2009-2013年他 古着の白い衣類、椅子
ロンドンに派遣されたのは吉本直子です。作家はビクトリア&アルバート美術館のテキスタイルにインスピレーションを受けます。素材は何と白い古着のシャツです。それを数千枚も収集し、糊で固めてオブジェと化していく。遠目では古着とは分からないかもしれません。まるで紙のような質感。一枚一枚のシャツに蓄積された記憶や歴史。さながら本の堆く積もれた図書館の如く展開していました。
さて最後に私の一推しの展示を挙げましょう。それが榊原澄人。1980年生まれの比較的若い世代の作家です。ジャンルとしてはメディア芸術。2面の大型スクリーンによるアニメーション作品を展示しています。
榊原澄人「E in Motion No.7 /No.5」、「E in Motion No.2」2013年 ヴィデオインスタレーション、デジタルドローイング
これが実に魅せます。それこそヒエロニムス・ボスと現代世界を行き交うような世界観。悪魔的なモチーフに機動隊に原爆ドーム。さらには糾弾しあう人々と遊園地で遊ぶ人々。火山に地が裂けて稲妻が光る。この世の終わりと再生。雪原で淡々と進む刹那的なストーリー。渾然一体、摩訶不思議。ブリューゲルを彷彿させるような展開も。ともかくうまく言葉に表せませんが、次から次へと展開する魑魅魍魎のワンダーランド。アニメーションの動きも独特。細やかで微妙な動きです。ミニマル的とも言えるのではないでしょうか。ともかく時間を忘れて見入ってしまいます。
ちなみに榊原は2006年の文化庁メディア芸術祭のアニメーション部門で大賞を受賞しています。久々に強く惹かれる映像作家と出会いました。
さてここまではいわゆるアート部門です。実は今回のドマーニ展、これまでとは全く異なる仕掛けがあります。というのもタイトルにあるように「建築」が加わったこと。テーマは「未来の家」。43名の建築家が各ブースにて作品を提示する。これが展覧会に言わば厚みを与えています。
「16th DOMANI・明日展」建築家スペース
ベニヤ板で区切られた個々のブースは非常に狭く、一人当たりの展示はかなり小規模ですが、中身はバリエーション豊富です。一つ一つ追いかけると結構時間がかかりました。
最後は休館の情報です。年末年始は国立新美術館のメンテナンス休館に入るため、ドマーニ展もしばらくお休みとなります。休館期間は12月24日から1月7日まで。年内は既にお休みです。年始は1月8日(水)からオープンします。
土橋素子「Shells」/「Fence」2013年 布にアクリル絵具、壁にアクリル絵具、ポスター
「建築×アート」の新機軸のドマーニ。なかなか面白いのではないでしょうか。
2014年1月26日まで開催されています。
「未来を担う美術家たち 16th DOMANI・明日展 建築×アート」(@DOMANI_ten) 国立新美術館(@NACT_PR)
会期:2013年12月14日(土)~2014年1月26日(日)
休館:火曜日。年末年始(12/24~1/7)。
時間:10:00~18:00 *毎週金曜日は夜20時まで開館。
料金:一般1000(800)円、大学生500(300)円、高校生以下無料。
*プリントアウト用割引引換券(各200円引)
* ( )内は20名以上の団体料金。
住所:港区六本木7-22-2
交通:東京メトロ千代田線乃木坂駅出口6より直結。都営大江戸線六本木駅7出口から徒歩4分。東京メトロ日比谷線六本木駅4a出口から徒歩5分。
「未来を担う美術家たち 16th DOMANI・明日展 建築×アート」
2013/12/14-2014/1/26
国立新美術館で開催中の「未来を担う美術家たち 16th DOMANI・明日展 建築×アート」を見てきました。
今年で第16回目を迎えたドマーニ展。文化庁の新進芸術家海外研修制度の成果発表の場でもある展覧会。今年も絵画に彫刻にインスタレーションなど。多様な表現をとる作家が紹介されています。
会場内、一部作品を除いて撮影が可能でした。というわけで印象深かった展示を挙げてみたいと思います。
小笠原美環 展示室風景
まずは1973年生まれの小笠原美環。2002年にハンブルグの芸術大学を卒業。2011年にドイツに派遣された画家です。
小笠原美環「Bildung/学」2008年 油彩、キャンバス 個人蔵
出品は10点の油彩画。グレーやブラックなどの落ち着いた色合いによって表された窓や廊下。シンプルな室内空間です。しかしながら何かを惹き付けるような存在感がある。その静謐感と清潔感。光の仄かな陰影もまた美しい。
小笠原美環「Living/生」2010年 油彩、キャンバス
それに作品とホワイトキューブの相性も良いのではないでしょうか。思わず長居してしまいました。
そして川上りえ。1989年に東京藝術大学院工芸科の鍛金を修了。2006年にニューヨークに派遣された彫刻家です。
川上りえ「Zero Gravity」2013年 金属線
写真ではうまく伝わらないかもしれませんが、こちらも新美の広いスペースを活かしてのインスタレーション。素材は細い金属線です。それが天井から吊るされて、筒や梯子のように連なっている。中央部はサークルです。何やらカーテンにでも包まれているような感覚。観客は頭上に気をつけながら、その合間を縫うようにして進みます。
大野由美子「home」2013年 パズルピース
大野由美子の展示はインタラクティブです。タイトルは「home」。床面に広がるのは無数のパズルピース。家の象徴というパズルを観客が組み合わせていく。所々に見られるのは文字によるメッセージ。観客の手で作られたのでしょうか。しゃがんでパズルピースと向き合いました。
吉本直子「鼓動の庭」2009-2013年他 古着の白い衣類、椅子
ロンドンに派遣されたのは吉本直子です。作家はビクトリア&アルバート美術館のテキスタイルにインスピレーションを受けます。素材は何と白い古着のシャツです。それを数千枚も収集し、糊で固めてオブジェと化していく。遠目では古着とは分からないかもしれません。まるで紙のような質感。一枚一枚のシャツに蓄積された記憶や歴史。さながら本の堆く積もれた図書館の如く展開していました。
さて最後に私の一推しの展示を挙げましょう。それが榊原澄人。1980年生まれの比較的若い世代の作家です。ジャンルとしてはメディア芸術。2面の大型スクリーンによるアニメーション作品を展示しています。
榊原澄人「E in Motion No.7 /No.5」、「E in Motion No.2」2013年 ヴィデオインスタレーション、デジタルドローイング
これが実に魅せます。それこそヒエロニムス・ボスと現代世界を行き交うような世界観。悪魔的なモチーフに機動隊に原爆ドーム。さらには糾弾しあう人々と遊園地で遊ぶ人々。火山に地が裂けて稲妻が光る。この世の終わりと再生。雪原で淡々と進む刹那的なストーリー。渾然一体、摩訶不思議。ブリューゲルを彷彿させるような展開も。ともかくうまく言葉に表せませんが、次から次へと展開する魑魅魍魎のワンダーランド。アニメーションの動きも独特。細やかで微妙な動きです。ミニマル的とも言えるのではないでしょうか。ともかく時間を忘れて見入ってしまいます。
ちなみに榊原は2006年の文化庁メディア芸術祭のアニメーション部門で大賞を受賞しています。久々に強く惹かれる映像作家と出会いました。
さてここまではいわゆるアート部門です。実は今回のドマーニ展、これまでとは全く異なる仕掛けがあります。というのもタイトルにあるように「建築」が加わったこと。テーマは「未来の家」。43名の建築家が各ブースにて作品を提示する。これが展覧会に言わば厚みを与えています。
「16th DOMANI・明日展」建築家スペース
ベニヤ板で区切られた個々のブースは非常に狭く、一人当たりの展示はかなり小規模ですが、中身はバリエーション豊富です。一つ一つ追いかけると結構時間がかかりました。
最後は休館の情報です。年末年始は国立新美術館のメンテナンス休館に入るため、ドマーニ展もしばらくお休みとなります。休館期間は12月24日から1月7日まで。年内は既にお休みです。年始は1月8日(水)からオープンします。
土橋素子「Shells」/「Fence」2013年 布にアクリル絵具、壁にアクリル絵具、ポスター
「建築×アート」の新機軸のドマーニ。なかなか面白いのではないでしょうか。
2014年1月26日まで開催されています。
「未来を担う美術家たち 16th DOMANI・明日展 建築×アート」(@DOMANI_ten) 国立新美術館(@NACT_PR)
会期:2013年12月14日(土)~2014年1月26日(日)
休館:火曜日。年末年始(12/24~1/7)。
時間:10:00~18:00 *毎週金曜日は夜20時まで開館。
料金:一般1000(800)円、大学生500(300)円、高校生以下無料。
*プリントアウト用割引引換券(各200円引)
* ( )内は20名以上の団体料金。
住所:港区六本木7-22-2
交通:東京メトロ千代田線乃木坂駅出口6より直結。都営大江戸線六本木駅7出口から徒歩4分。東京メトロ日比谷線六本木駅4a出口から徒歩5分。
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