都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「引込線 2015」 旧所沢市立第2学校給食センター
旧所沢市立第2学校給食センター
「引込線 2015」
8/29-9/23
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旧所沢市立第2学校給食センターで開催中の「引込線 2015」を見てきました。
2008年のプレ展より既に5回目を数えた旧所沢ビエンナーレこと「引込線」。会場は所沢市郊外にある旧学校給食センターです。
未だ配管や調理器具などの給食設備も残っている施設。また現在は同市の災害用緊急物資の保管場所としても利用されています。
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「引込線2015」会場風景
この特異なスペースでの展示です。いわゆるホワイトキューブは殆どありません。少なくとも会場からして他の現代美術の展示とは一線を画しています。
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白川昌生「首のない馬」 2015年 合板・アクリル絵具
給食センターの鉄筋が木馬のイメージと重なります。白川昌生の「首のない馬」です。正面からでは青い何らかの設備にしか見えない鉄筋類。ベニヤ板です。横から見ると確かに馬の形をしています。床面に緑色の破片が広がっていました。何と馬の小便を模しているそうです。驚かされます。
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五月女哲平「White,black and the others」 2015年 アクリル・キャンバス
絵画を床に直置きしています。五月女哲平の「White,black and the others」です。全部で3つでしょうか。高さは30センチもないかもしれません。黒い枠に真っ白な面。ちょうど三角形を描くように置かれています。この床置きの絵画、解説の言葉を借りれば墓標なのだそうです。使われなくなった給食センターを言わば弔うための墓標。小さくとも存在感がありました。
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保坂毅「そらしま」ほか 2015年 アクリル・寒冷紗・MDFボード
14本の柱が給食センターの空間に対応します。保坂毅です。端的に柱と言っても色は様々。白や蛍光色を取り込んだストライプ状のものもあります。また四角ではなく六角柱といった形も独特です。ほぼ斜めに立て掛けられています。天井には既存の銀色の配管、そして青い鉄筋。そこに柱が介入しては新たな景色を生み出します。何とも言い難い緊張感を生み出していたのではないでしょうか。
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戸田祥子「壁の解放」 2015年 写真・アクリル
私が特に惹かれたのが戸田祥子です。タイトルは「壁の解放」。元々センターにあった台車でしょうか。その上には写真が何枚も置かれ、タイルがプリントされています。もちろんこのタイルの写真は作品のすぐ横にある壁からとられたもの。まるでタイルが壁から剥がされては新たな役割を与えられたかのようです。給食センターの場に依拠してもいます。
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戸谷成雄「襞のかたまり」 2015年 木・灰・アクリル
引込線の実行委員長を務める戸谷成雄の新作は球体でした。「襞のかたまり」です。お馴染みのチェーンソーで木に無数の襞が付けられた立体、内部は空洞だそうです。荒々しい表面は何やら龍の鱗、はたまたワニの皮などを連想させます。ごろっと床に4つ並んで転がっています。この重量感。場を引き締めていました。
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遠藤利克「空洞説ー黒化」 2015年 木・鉄・セメント・タール・火
同じく球体なのが遠藤利克の「空洞説ー黒化」です。元々、遠藤は箱状、ないしプール状の立体のほかに円環状の作品も手がけてきましたが、今回は完全なる球と言って良いでしょう。球は「円環の空洞が閉じた状態」(解説シートより)でもあります。そこに遠藤は死を見出しました。黒化した表面からは炭の独特のにおいが漂ってもいます。宇宙から落下して燃え尽きた隕石の欠片。そうした印象も受けました。
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利部志穂「垂直の波」 2015年 金属・木・鏡・ガラス・その他・不要となったもの
給食センター横の倉庫を用いたインスタレーションです。利部志穂の「垂直の波」。ベニヤ製でしょうか。文字通り大きな波の構造物が縦に立ち、手前の空間ではアルミの輪、あとはプラスチックの配管かもしれません。宙吊りになっています。そして床にはビニール。給食用の食器を入れる金属製のカゴもあります。さらに下を見やれば割れたガラス片が散っています。センターの素材を取り込んでいるのでしょうか。空間全体を作品に巻き込んでもいます。
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冨井大裕「stroll piece #4」 2015年 デジタルプリント(77枚)
ほかにも現在、国立新美術館のアーティストファイル展に参加している百瀬文や冨井大裕も面白い。展示はセンター内、1階と2階部分のみならず、倉庫と一部屋外にも続いています。全25作家、25点。ボリュームもあります。
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水谷一「The Sublime is Now No.1-4」 2015年 紙・鉛筆・アルミフレーム
最後にアクセスの情報です。会場の旧給食センターは西武線の航空公園駅より道なりで約2.8キロほど。歩くと30分以上はかかります。
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旧所沢市立第2学校給食センター
航空公園駅より西武バスが有用です。おおよそ毎時4本。ただし最寄の「並木通り団地入口」から400メートルほどあります。ちょうどスーパーのヤオコーの裏手にあたりますが、必ずしも分かりやすい場所ではありません。事前に公式サイトで地図(アクセス)を確認されることをおすすめします。
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吉川陽一郎「行為のような演技をするということに間違いないだろう」 パフォーマンス
会期中、毎週末に行われるレクチャー、「ゼミナール給食センター」のほか、パフォーマンスイベントなども用意されています。充実のラインナップです。ちなみに私が出向いた時はちょうど吉川陽一郎がパフォーマンスをしていました。イベントなどにあわせて出かけても良いのではないでしょうか。
「ゼミナール給食センターとその他のイベント」(引込線2015)
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「引込線2015」会場入口
入場は無料です。9月23日まで開催されています。
「引込線 2015」(@hikikomisen) 旧所沢市立第2学校給食センター
会期:8月29日(土)~9月23日(水)
休館:会期中無休
時間:10:00~17:00
料金:無料
住所:埼玉県所沢市中富1862-1
交通:西武新宿線航空公園駅東口より徒歩30分。航空公園駅東口1番乗り場より西武バス所20-1系統「並木通り団地行き」または、新所03系統「新所沢駅東口行き」に乗り「並木通り団地入口」下車。バス停から約400m。駐車場あり。(台数限定)
「引込線 2015」
8/29-9/23
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旧所沢市立第2学校給食センターで開催中の「引込線 2015」を見てきました。
2008年のプレ展より既に5回目を数えた旧所沢ビエンナーレこと「引込線」。会場は所沢市郊外にある旧学校給食センターです。
未だ配管や調理器具などの給食設備も残っている施設。また現在は同市の災害用緊急物資の保管場所としても利用されています。
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「引込線2015」会場風景
この特異なスペースでの展示です。いわゆるホワイトキューブは殆どありません。少なくとも会場からして他の現代美術の展示とは一線を画しています。
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白川昌生「首のない馬」 2015年 合板・アクリル絵具
給食センターの鉄筋が木馬のイメージと重なります。白川昌生の「首のない馬」です。正面からでは青い何らかの設備にしか見えない鉄筋類。ベニヤ板です。横から見ると確かに馬の形をしています。床面に緑色の破片が広がっていました。何と馬の小便を模しているそうです。驚かされます。
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五月女哲平「White,black and the others」 2015年 アクリル・キャンバス
絵画を床に直置きしています。五月女哲平の「White,black and the others」です。全部で3つでしょうか。高さは30センチもないかもしれません。黒い枠に真っ白な面。ちょうど三角形を描くように置かれています。この床置きの絵画、解説の言葉を借りれば墓標なのだそうです。使われなくなった給食センターを言わば弔うための墓標。小さくとも存在感がありました。
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保坂毅「そらしま」ほか 2015年 アクリル・寒冷紗・MDFボード
14本の柱が給食センターの空間に対応します。保坂毅です。端的に柱と言っても色は様々。白や蛍光色を取り込んだストライプ状のものもあります。また四角ではなく六角柱といった形も独特です。ほぼ斜めに立て掛けられています。天井には既存の銀色の配管、そして青い鉄筋。そこに柱が介入しては新たな景色を生み出します。何とも言い難い緊張感を生み出していたのではないでしょうか。
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戸田祥子「壁の解放」 2015年 写真・アクリル
私が特に惹かれたのが戸田祥子です。タイトルは「壁の解放」。元々センターにあった台車でしょうか。その上には写真が何枚も置かれ、タイルがプリントされています。もちろんこのタイルの写真は作品のすぐ横にある壁からとられたもの。まるでタイルが壁から剥がされては新たな役割を与えられたかのようです。給食センターの場に依拠してもいます。
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戸谷成雄「襞のかたまり」 2015年 木・灰・アクリル
引込線の実行委員長を務める戸谷成雄の新作は球体でした。「襞のかたまり」です。お馴染みのチェーンソーで木に無数の襞が付けられた立体、内部は空洞だそうです。荒々しい表面は何やら龍の鱗、はたまたワニの皮などを連想させます。ごろっと床に4つ並んで転がっています。この重量感。場を引き締めていました。
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遠藤利克「空洞説ー黒化」 2015年 木・鉄・セメント・タール・火
同じく球体なのが遠藤利克の「空洞説ー黒化」です。元々、遠藤は箱状、ないしプール状の立体のほかに円環状の作品も手がけてきましたが、今回は完全なる球と言って良いでしょう。球は「円環の空洞が閉じた状態」(解説シートより)でもあります。そこに遠藤は死を見出しました。黒化した表面からは炭の独特のにおいが漂ってもいます。宇宙から落下して燃え尽きた隕石の欠片。そうした印象も受けました。
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利部志穂「垂直の波」 2015年 金属・木・鏡・ガラス・その他・不要となったもの
給食センター横の倉庫を用いたインスタレーションです。利部志穂の「垂直の波」。ベニヤ製でしょうか。文字通り大きな波の構造物が縦に立ち、手前の空間ではアルミの輪、あとはプラスチックの配管かもしれません。宙吊りになっています。そして床にはビニール。給食用の食器を入れる金属製のカゴもあります。さらに下を見やれば割れたガラス片が散っています。センターの素材を取り込んでいるのでしょうか。空間全体を作品に巻き込んでもいます。
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冨井大裕「stroll piece #4」 2015年 デジタルプリント(77枚)
ほかにも現在、国立新美術館のアーティストファイル展に参加している百瀬文や冨井大裕も面白い。展示はセンター内、1階と2階部分のみならず、倉庫と一部屋外にも続いています。全25作家、25点。ボリュームもあります。
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水谷一「The Sublime is Now No.1-4」 2015年 紙・鉛筆・アルミフレーム
最後にアクセスの情報です。会場の旧給食センターは西武線の航空公園駅より道なりで約2.8キロほど。歩くと30分以上はかかります。
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旧所沢市立第2学校給食センター
航空公園駅より西武バスが有用です。おおよそ毎時4本。ただし最寄の「並木通り団地入口」から400メートルほどあります。ちょうどスーパーのヤオコーの裏手にあたりますが、必ずしも分かりやすい場所ではありません。事前に公式サイトで地図(アクセス)を確認されることをおすすめします。
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吉川陽一郎「行為のような演技をするということに間違いないだろう」 パフォーマンス
会期中、毎週末に行われるレクチャー、「ゼミナール給食センター」のほか、パフォーマンスイベントなども用意されています。充実のラインナップです。ちなみに私が出向いた時はちょうど吉川陽一郎がパフォーマンスをしていました。イベントなどにあわせて出かけても良いのではないでしょうか。
「ゼミナール給食センターとその他のイベント」(引込線2015)
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「引込線2015」会場入口
入場は無料です。9月23日まで開催されています。
「引込線 2015」(@hikikomisen) 旧所沢市立第2学校給食センター
会期:8月29日(土)~9月23日(水)
休館:会期中無休
時間:10:00~17:00
料金:無料
住所:埼玉県所沢市中富1862-1
交通:西武新宿線航空公園駅東口より徒歩30分。航空公園駅東口1番乗り場より西武バス所20-1系統「並木通り団地行き」または、新所03系統「新所沢駅東口行き」に乗り「並木通り団地入口」下車。バス停から約400m。駐車場あり。(台数限定)
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