都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「神道の形成と古代祭祀」 國學院大學博物館
國學院大學博物館
「神道の形成と古代祭祀」
10/14~12/10
古代の祭祀と、神道の形成について、文献資料や出土品から探る展覧会が、國學院大學博物館で開催されています。
「日本書紀巻21」 舎人親王ほか撰 原典:奈良時代・養老4(720)年 江戸時代刊 國學院大學図書館 ほか
そもそも神道という言葉は、いつ、どこで現れたのでしょうか。答えは、8世紀に編纂された日本書紀で、記述の中に、初めて神道の語が採用されました。書紀では、唐の三教のうちの道教に相当する存在として、神道を位置付けました。モデル自体は唐にあったそうです。
ただし唐の道教が、帝室と老子を師に仰いだ一方、神道は天皇の祖のみを天神としました。皇孫のみが国家を治めるという理念を示したことで、日本独自の国家宗教としての神道が確立しました。
神道の出典も中国に依拠します。六朝時代に起きたという神滅、神不滅論争で、肉体が滅んでも、永続する霊魂のことを、神道と呼びました。つまり元来は、仏教用語でした。それが採用された理由として、留学僧の関与が想定されているそうです。
「伊勢太神宮禰宜謹解申儀式并年中祭行事事」 皇大神宮(宮司大中臣真継ほか)解 藤井成章筆 原典:平安時代・延暦23(804)年 江戸時代写 國學院大學図書館
伊勢神宮に関する資料が目を引きました。「伊勢太神宮禰宜謹解申儀式并年中祭行事事」は、804年に神宮が神祇官に提出したもの(展示品は写し)で、祭具の準備や執行、収納など、一連の祭祀のプロセスを細かに記しています。
「内宮御神宝図」 弘化2(1845)年 國學院大學図書館
また、神宮で使用された神宝や装束を描いたのが、「内宮御神宝図」や「内宮御装束図」でした。神宮の祭祀は、7世紀後半頃より体系化しましたが、神宝や装束が、古代の古墳の副葬品に共通しているという指摘もあります。何らかの関わりがあったのは間違いないかもしれません。
「内行花文鏡」 伝福岡県宗像市 沖ノ島出土 古墳時代・4世紀 國學院大學博物館
そして時代は遡ります。古墳時代です。のちに神道と呼ばれる国家的祭祀の原型が、同時代にあると定義した上で、様々な出土品から、神々が祀られた形を明らかにしていました。
「靭型埴輪」 埼玉県本庄市出土 古墳時代・6世紀 國學院大學博物館 ほか
そもそも古墳時代の祭祀は、弥生後期の西日本各地の墓制が統合して成立しました。そして、5世紀頃、「治天下大王」の君臨した地域に、祭式が定型化して普及しました。
「美濃ケ浜遺跡出土遺物」 山口県山口市 古墳〜飛鳥時代・6〜7世紀 國學院大學博物館
古墳への埋葬品は、何も祭祀遺物だけではなく、農耕具、調理具などの日用品や、武器も含まれています。また最近の調査から、祭祀行為そのもののほかに、祭祀への準備や収納の状況についても解明が進んでいるそうです。
「建鉾山遺跡出土遺物」 福島県白河市 古墳時代・5世紀 國學院大學博物館
製塩遺跡として知られる美濃ケ浜遺跡(山口県)も同様で、発掘調査から、様々な財を象った石造の模造品を製造していたことが分かりました。また建鉾山遺跡(福島県)では、いわゆる神宝が、信仰の対象であった磐座の周囲に納められていました。巨岩を庫に見立てたとも考えられています。
ラストは律令国家形成前後の神祇祭祀の動向です。7世紀後半以降には、古墳時代の祭祀体系が成文化されます。神祇令が置かれ、神祇行政が執行されました。それにより、伊勢神宮、神社、祭料の様式などが確立しました。
ただ宮殿形式の神宮が整備された時代においても、全ての神社に本殿や神庫があったわけではありませんでした。上多賀宮脇遺跡(静岡県)に見られるように、依然として磐座の元に、鏡などを納めたこともあったそうです。
「人形」(模造) 奈良県奈良市 平城京跡出土 原品:8世紀 國學院大學博物館 ほか
また古墳時代に由来する呪術的な人形などを納めることもありました。さらに祭祀において、道教的な方術が流入していたことも判明しているそうです。祭祀のあり方は、地域や時代において変容していて、何も一朝一夕に全てが完成したわけではありません。
続く常設展にも神道関連の作品が展示されていました。あわせて見るのが良さそうです。
会場内でアンケートに答えると、解説の付いたパンフレットがもらえました。展示への理解も深まります。
「神道の形成と古代祭祀」会場入口
会場内、一部の資料を除き、撮影も可能です。(常設の神道展示コーナーは撮影不可。)
入場は無料です。12月10日まで開催されています。
「神道の形成と古代祭祀」 國學院大學博物館(@Kokugakuin_Muse)
会期:10月14日(土)~12月10日(日)
休館:10月23日(月)、11月20日(月)
時間:10:00~18:00
*入館は閉館の30分前まで。
料金:無料。
住所:渋谷区東4-10-28 國學院大學渋谷キャンパス内。
交通:JR線、東京メトロ銀座線・半蔵門線・副都心線、東急東横線・田園都市線渋谷駅より徒歩15分。渋谷駅東口バスターミナル54番乗り場より都営バス「学03日赤医療センター行き」で「国学院大学前」下車すぐ。JR線、東京メトロ日比谷線恵比寿駅西口ロータリー1番乗り場より都営バス「学06日赤医療センター行き」で「東四丁目」下車。徒歩5分。
「神道の形成と古代祭祀」
10/14~12/10
古代の祭祀と、神道の形成について、文献資料や出土品から探る展覧会が、國學院大學博物館で開催されています。
「日本書紀巻21」 舎人親王ほか撰 原典:奈良時代・養老4(720)年 江戸時代刊 國學院大學図書館 ほか
そもそも神道という言葉は、いつ、どこで現れたのでしょうか。答えは、8世紀に編纂された日本書紀で、記述の中に、初めて神道の語が採用されました。書紀では、唐の三教のうちの道教に相当する存在として、神道を位置付けました。モデル自体は唐にあったそうです。
ただし唐の道教が、帝室と老子を師に仰いだ一方、神道は天皇の祖のみを天神としました。皇孫のみが国家を治めるという理念を示したことで、日本独自の国家宗教としての神道が確立しました。
神道の出典も中国に依拠します。六朝時代に起きたという神滅、神不滅論争で、肉体が滅んでも、永続する霊魂のことを、神道と呼びました。つまり元来は、仏教用語でした。それが採用された理由として、留学僧の関与が想定されているそうです。
「伊勢太神宮禰宜謹解申儀式并年中祭行事事」 皇大神宮(宮司大中臣真継ほか)解 藤井成章筆 原典:平安時代・延暦23(804)年 江戸時代写 國學院大學図書館
伊勢神宮に関する資料が目を引きました。「伊勢太神宮禰宜謹解申儀式并年中祭行事事」は、804年に神宮が神祇官に提出したもの(展示品は写し)で、祭具の準備や執行、収納など、一連の祭祀のプロセスを細かに記しています。
「内宮御神宝図」 弘化2(1845)年 國學院大學図書館
また、神宮で使用された神宝や装束を描いたのが、「内宮御神宝図」や「内宮御装束図」でした。神宮の祭祀は、7世紀後半頃より体系化しましたが、神宝や装束が、古代の古墳の副葬品に共通しているという指摘もあります。何らかの関わりがあったのは間違いないかもしれません。
「内行花文鏡」 伝福岡県宗像市 沖ノ島出土 古墳時代・4世紀 國學院大學博物館
そして時代は遡ります。古墳時代です。のちに神道と呼ばれる国家的祭祀の原型が、同時代にあると定義した上で、様々な出土品から、神々が祀られた形を明らかにしていました。
「靭型埴輪」 埼玉県本庄市出土 古墳時代・6世紀 國學院大學博物館 ほか
そもそも古墳時代の祭祀は、弥生後期の西日本各地の墓制が統合して成立しました。そして、5世紀頃、「治天下大王」の君臨した地域に、祭式が定型化して普及しました。
「美濃ケ浜遺跡出土遺物」 山口県山口市 古墳〜飛鳥時代・6〜7世紀 國學院大學博物館
古墳への埋葬品は、何も祭祀遺物だけではなく、農耕具、調理具などの日用品や、武器も含まれています。また最近の調査から、祭祀行為そのもののほかに、祭祀への準備や収納の状況についても解明が進んでいるそうです。
「建鉾山遺跡出土遺物」 福島県白河市 古墳時代・5世紀 國學院大學博物館
製塩遺跡として知られる美濃ケ浜遺跡(山口県)も同様で、発掘調査から、様々な財を象った石造の模造品を製造していたことが分かりました。また建鉾山遺跡(福島県)では、いわゆる神宝が、信仰の対象であった磐座の周囲に納められていました。巨岩を庫に見立てたとも考えられています。
ラストは律令国家形成前後の神祇祭祀の動向です。7世紀後半以降には、古墳時代の祭祀体系が成文化されます。神祇令が置かれ、神祇行政が執行されました。それにより、伊勢神宮、神社、祭料の様式などが確立しました。
ただ宮殿形式の神宮が整備された時代においても、全ての神社に本殿や神庫があったわけではありませんでした。上多賀宮脇遺跡(静岡県)に見られるように、依然として磐座の元に、鏡などを納めたこともあったそうです。
「人形」(模造) 奈良県奈良市 平城京跡出土 原品:8世紀 國學院大學博物館 ほか
また古墳時代に由来する呪術的な人形などを納めることもありました。さらに祭祀において、道教的な方術が流入していたことも判明しているそうです。祭祀のあり方は、地域や時代において変容していて、何も一朝一夕に全てが完成したわけではありません。
続く常設展にも神道関連の作品が展示されていました。あわせて見るのが良さそうです。
会場内でアンケートに答えると、解説の付いたパンフレットがもらえました。展示への理解も深まります。
「神道の形成と古代祭祀」会場入口
会場内、一部の資料を除き、撮影も可能です。(常設の神道展示コーナーは撮影不可。)
「神道の形成と古代祭祀」より【石枕】重要文化財いつもはレプリカが展示してある「石枕」ですが、本物が見られるのは今だけ!千葉の姉崎二子塚古墳の棺から発見されました。亡くなった方の頭の下に置かれていたもの。側面に彫られた繊細な模様に注目☆#重要文化財 pic.twitter.com/jUrDcFqCQe
— 國學院大學博物館 (@Kokugakuin_Muse) 2017年11月13日
入場は無料です。12月10日まで開催されています。
「神道の形成と古代祭祀」 國學院大學博物館(@Kokugakuin_Muse)
会期:10月14日(土)~12月10日(日)
休館:10月23日(月)、11月20日(月)
時間:10:00~18:00
*入館は閉館の30分前まで。
料金:無料。
住所:渋谷区東4-10-28 國學院大學渋谷キャンパス内。
交通:JR線、東京メトロ銀座線・半蔵門線・副都心線、東急東横線・田園都市線渋谷駅より徒歩15分。渋谷駅東口バスターミナル54番乗り場より都営バス「学03日赤医療センター行き」で「国学院大学前」下車すぐ。JR線、東京メトロ日比谷線恵比寿駅西口ロータリー1番乗り場より都営バス「学06日赤医療センター行き」で「東四丁目」下車。徒歩5分。
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