「都市への挿入 川俣正」 BankART Station、BankART Temporary、馬車道駅構内

BankART Station、BankART Temporary、馬車道駅構内
「BankART LifeⅥ 都市への挿入 川俣正」
2020/9/11~10/11



「BankART LifeⅥ 都市への挿入 川俣正」を見てきました。

1953年に北海道で生まれ、フランスに在住する川俣正は、公共空間で構造物を取り込んだインスタレーションを制作するなど、世界各地で精力的に活動してきました。

その川俣が2013年の「川俣正 Expand BankART」以来、久しぶりに横浜を舞台にしたのが「都市への挿入 川俣正」で、新高島のBankART Station、及び馬車道にあるBankART Temporaryと馬車道駅構内にて作品を公開していました。



まずBankART Stationでは、過去のアーカイブとも言える作品資料が展示されていて、今回のBankART Temporaryのための新作の模型も並んでいました。



中でも目を引くのは、かつてのBankART Studio NYKを木製パレットで覆った「Expand BankART」で、写真でも展示の光景を振り返ることができました。



私が初めて川俣の大規模なインスタレーションに出会ったのは、2008年に東京都現代美術館で開催された「川俣正 通路」で、当時は美術館をベニヤ板の通路に置き換えた空間そのものに強く戸惑ったことを覚えています。



「Expand BankART」では内部でも木製パレットを使い、まるで洞窟のような空間を築いていて、解体中の窓枠を用いた大掛かりな作品も記憶に残りました。



さて新高島より馬車道へと移動すると、改札外の吹き抜けに設置されていたのが、工事用のフェンスを使った新作でした。高さは約7.5メートルほどあり、頂点の部分は駅の天井にまで到達していて、中へ出入り可能な開口部が前後に開いていました。



下から見上げるとあたかもフェンスが雪崩れ落ちてくるかのようで、どことない恐怖感すら覚えましたが、単管を張り巡らせた構造は堅牢に築かれているようでした。



今回の個展に際して川俣は、横浜にて解体や建築の工事が多く行われているのを目にして、工事用のフェンスなどの建築資材を使うプランを練ったそうです。それを自身、「工事現場の中に工事現場を装った場を中に入れ込む」(解説より)と表現していました。少し離れて眺めるとミノムシのように見えましたが、おおよそ駅構内とは思えない不思議な光景にしばし目を見張りました。



この馬車道に直結する歴史的建造物のBankART Temporaryでも、同様のインスタレーションを公開していて、内外に工事用のフェンスが展開していました。



まず屋外では、半円型のバルコニー付近をフェンスが覆っていて、何やら人の顔にバンダナを被せているようにも見えました。



一方の内部では天井付近を波打つようにフェンスが巡らされていて、列柱の立ち並ぶ重厚な空間へ大きな変化をもたらしていました。



新型コロナウイルス感染症のために来日が不可能となった川俣は、作品の制作に際して、日本のスタッフへタブレットなどで指示を出し、リモートで完成させたそうです。



その制作の様子を捉えた映像も見応えがありました。今回の作品も会期を終えると全て取り除かれますが、構想、制作、解体のプロセス全体こそが川俣の作品と言えるのかもしれません。



10月11日まで開催されています。

「BankART LifeⅥ 都市への挿入 川俣正」 BankART Station、BankART Temporary、馬車道駅構内
会期:2020年9月11日(金)~10月11日(日)
休館:木曜日。但し10月8日を除く。
時間:11:00~19:00
料金:一般1000円、大学・専門学生・横浜市民600円、高校生以下・65歳以上無料。
 *「BankART Life VI」と「ヨコハマトリエンナーレ2020」、「黄金町バザール2020」を全て観覧できる「横浜アート巡りチケット」(一般2800円)あり。
住所:横浜市西区みなとみらい5-1 新高島駅地下1F(BankART Station)、横浜市中区本町6-50-1(BankART Temporary)
交通:みなとみらい線新高島駅より改札口を出てすぐ。(BankART Station)みなとみらい線馬車道駅1b出口よりすぐ。(BankART Temporary)
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