都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「福田美蘭展 千葉市美コレクション遊」 千葉市美術館
千葉市美術館
「福田美蘭展 千葉市美コレクション遊」
2021/10/2~12/19
千葉市美術館で開催中の「福田美蘭展 千葉市美コレクション遊」を見てきました。
現代美術家の福田美蘭は、日本や西洋の美術品を参照しつつ、独自の視点から読み解き、さらに改変する絵画などを制作してきました。
その福田が千葉市美術館のコレクションとコラボレーションしたのが「福田美蘭展 千葉市美コレクション遊」で、会場には浮世絵や江戸絵画に着想を得て描いた作品が展示されていました。
福田美蘭「見返り美人 鏡面群像図」 2016年 平塚市美術館
まず冒頭に展開したのが「見返り美人 鏡面群像図」で、言うまでもなく菱川師宣の名作「見返り美人図」を引用した作品でした。ここで福田は師宣画の無背景を角度と向きの違う6枚の鏡面に見立てていて、映り込む姿を描いていました。
福田美蘭「二代目市川団十郎の虎退治」 2020年
鳥居清倍の「二代目市川団十郎の虎退治」を参照した同名の作品では、力でねじ伏せられようとする虎に新型コロナウイルスを重ね合わせていて、福田は単純に撲滅させるよりも、共生や共存を目指す方向性を絵画として示しました。端的に古典作品を引用しつつも、時事的な話題や世相を抉り取るように表現していくのも福田の魅力と言えるかもしれません。
そうした世相を取り込んだ作品の1つが、月岡芳年の「風俗三十二相 けむさう 享和年間内室之風俗」を参照した作品でした。ここで福田は煙たそうに団扇で避ける女性の煙の形に五輪マークを当てはめ、開催に際して賛否もあった東京五輪に対して懐疑的な人々の心情を表しました。
思いも寄らない作品の大胆な改変も福田の面白さではないでしょうか。例えば鈴木其一の「芒野図屏風」では、其一が描いた一面の霞に覆われた芒を3D画像に再構成し、立体視にて鑑賞するように表現していました。其一画のどこか抽象性を帯びた画面に新たな見方を呼び込む手法といえるかもしれません。
琳派の尾形光琳の名作「燕子花図屏風」を念頭においた作品では、燕子花の織りなすリズミカルなモチーフを、なんと青果店やスーパーで売られるほうれん草の束に見立てて描いていました。青々として瑞々しいほうれん草の束がそれこそ橋を築くように連なる光景は、確かに燕子花の世界と呼応するようで、意外極まりない描写に驚くばかりでした。
このほかにも天皇陛下の即位を祝うパレード「祝賀御列の儀」を伊藤若冲の「乗興舟」のようにて詩画巻として表したり、尖閣諸島の南小島のかたちを枯山水の石庭や波濤図に置き換えて表現するなど、まったく想像も及ばない世界を築き上げていました。
ラストの「十三代目市川團十郎白猿襲名披露口上」も迫力があったのではないでしょうか。ここで福田は江戸時代の疱瘡絵にちなみ、魔除けの赤を用いて新型コロナウイルスを退散させようとする超人的な姿を描いていて、護符としてにらみの目の部分の印刷した紙片を持ち帰ることもできました。
福田美蘭「大江山の酒呑童子退治」 2019年
会場内に一部衝立や構造物などを用い、古典と福田が描く現代の邂逅をインスタレーション的な空間にて楽しめるような構成も面白かったかもしれません。タイトルに「遊」とあるように遊び心が感じられるものの、パロディを通り越した福田の社会への批評的姿勢も垣間見えるように思えました。
最初の展示室のみ撮影が可能でした。
巡回はありません。12月19日まで開催されています。おすすめします。
「福田美蘭展 千葉市美コレクション遊」 千葉市美術館(@ccma_jp)
会期:2021年10月2日(土)~12月19日(日)
休室:10月4日(月)、10月11日(月)、11月1日(月)、11月15日(月)、12月6日(月)。
時間:10:00~18:00。
*入場受付は閉館の30分前まで
*毎週金・土曜は20時まで開館。
料金:一般1200(960)円、大学生700(560)円、高校生以下無料。
*( )内は前売り、市内在住の65歳以上の料金。
*常設展示室「千葉市美術館コレクション選」も観覧可。
*ナイトミュージアム割引:金・土曜日の18時以降は共通チケットが半額
住所:千葉市中央区中央3-10-8
交通:千葉都市モノレールよしかわ公園駅下車徒歩5分。京成千葉中央駅東口より徒歩約10分。JR千葉駅東口より徒歩約15分。JR千葉駅東口より京成バス(バスのりば7)より大学病院行または南矢作行にて「中央3丁目」下車徒歩2分。
「福田美蘭展 千葉市美コレクション遊」
2021/10/2~12/19
千葉市美術館で開催中の「福田美蘭展 千葉市美コレクション遊」を見てきました。
現代美術家の福田美蘭は、日本や西洋の美術品を参照しつつ、独自の視点から読み解き、さらに改変する絵画などを制作してきました。
その福田が千葉市美術館のコレクションとコラボレーションしたのが「福田美蘭展 千葉市美コレクション遊」で、会場には浮世絵や江戸絵画に着想を得て描いた作品が展示されていました。
福田美蘭「見返り美人 鏡面群像図」 2016年 平塚市美術館
まず冒頭に展開したのが「見返り美人 鏡面群像図」で、言うまでもなく菱川師宣の名作「見返り美人図」を引用した作品でした。ここで福田は師宣画の無背景を角度と向きの違う6枚の鏡面に見立てていて、映り込む姿を描いていました。
福田美蘭「二代目市川団十郎の虎退治」 2020年
鳥居清倍の「二代目市川団十郎の虎退治」を参照した同名の作品では、力でねじ伏せられようとする虎に新型コロナウイルスを重ね合わせていて、福田は単純に撲滅させるよりも、共生や共存を目指す方向性を絵画として示しました。端的に古典作品を引用しつつも、時事的な話題や世相を抉り取るように表現していくのも福田の魅力と言えるかもしれません。
そうした世相を取り込んだ作品の1つが、月岡芳年の「風俗三十二相 けむさう 享和年間内室之風俗」を参照した作品でした。ここで福田は煙たそうに団扇で避ける女性の煙の形に五輪マークを当てはめ、開催に際して賛否もあった東京五輪に対して懐疑的な人々の心情を表しました。
思いも寄らない作品の大胆な改変も福田の面白さではないでしょうか。例えば鈴木其一の「芒野図屏風」では、其一が描いた一面の霞に覆われた芒を3D画像に再構成し、立体視にて鑑賞するように表現していました。其一画のどこか抽象性を帯びた画面に新たな見方を呼び込む手法といえるかもしれません。
琳派の尾形光琳の名作「燕子花図屏風」を念頭においた作品では、燕子花の織りなすリズミカルなモチーフを、なんと青果店やスーパーで売られるほうれん草の束に見立てて描いていました。青々として瑞々しいほうれん草の束がそれこそ橋を築くように連なる光景は、確かに燕子花の世界と呼応するようで、意外極まりない描写に驚くばかりでした。
このほかにも天皇陛下の即位を祝うパレード「祝賀御列の儀」を伊藤若冲の「乗興舟」のようにて詩画巻として表したり、尖閣諸島の南小島のかたちを枯山水の石庭や波濤図に置き換えて表現するなど、まったく想像も及ばない世界を築き上げていました。
ラストの「十三代目市川團十郎白猿襲名披露口上」も迫力があったのではないでしょうか。ここで福田は江戸時代の疱瘡絵にちなみ、魔除けの赤を用いて新型コロナウイルスを退散させようとする超人的な姿を描いていて、護符としてにらみの目の部分の印刷した紙片を持ち帰ることもできました。
福田美蘭「大江山の酒呑童子退治」 2019年
会場内に一部衝立や構造物などを用い、古典と福田が描く現代の邂逅をインスタレーション的な空間にて楽しめるような構成も面白かったかもしれません。タイトルに「遊」とあるように遊び心が感じられるものの、パロディを通り越した福田の社会への批評的姿勢も垣間見えるように思えました。
【新着】東京五輪からコロナまで。江戸時代の名画と向き合いつつ、現代の世相へ鋭く切り込む、福田美蘭の約8年ぶりの展覧会。 https://t.co/mScxWoBJsh
— Pen Magazine (@Pen_magazine) November 7, 2021
最初の展示室のみ撮影が可能でした。
巡回はありません。12月19日まで開催されています。おすすめします。
「福田美蘭展 千葉市美コレクション遊」 千葉市美術館(@ccma_jp)
会期:2021年10月2日(土)~12月19日(日)
休室:10月4日(月)、10月11日(月)、11月1日(月)、11月15日(月)、12月6日(月)。
時間:10:00~18:00。
*入場受付は閉館の30分前まで
*毎週金・土曜は20時まで開館。
料金:一般1200(960)円、大学生700(560)円、高校生以下無料。
*( )内は前売り、市内在住の65歳以上の料金。
*常設展示室「千葉市美術館コレクション選」も観覧可。
*ナイトミュージアム割引:金・土曜日の18時以降は共通チケットが半額
住所:千葉市中央区中央3-10-8
交通:千葉都市モノレールよしかわ公園駅下車徒歩5分。京成千葉中央駅東口より徒歩約10分。JR千葉駅東口より徒歩約15分。JR千葉駅東口より京成バス(バスのりば7)より大学病院行または南矢作行にて「中央3丁目」下車徒歩2分。
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