都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「縄文2021―東京に生きた縄文人―」 江戸東京博物館
江戸東京博物館
「縄文2021―東京に生きた縄文人―」
2021/10/9〜12/5
江戸東京博物館で開催中の「縄文2021―東京に生きた縄文人―」のプレス内覧会に参加してきました。
明治時代にはじまった東京の縄文時代遺跡の発掘は、特に戦後の都市開発によって多く行われ、現在に至るまで約3800箇所もの遺跡が確認されてきました。
その東京の縄文に着目したのが「縄文2021―東京に生きた縄文人―」で、会場内には土偶や土器、また石器や骨格器、さらに丸木舟などの考古資料がたくさん公開されていました。
「大森貝塚」展示風景
まず冒頭で紹介されたのは、東京の縄文遺跡発掘の歴史で、1877年にエドワード・S・モースが調査したことで有名な大森貝塚の採集品が並んでいました。モースは横浜から汽車で新橋に向かい途中、大森あたりで貝殻が崖面に露出しているのを発見し、のちに調査をしていて、日本で最初の科学的遺跡発掘調査と言われています。
「山地の遺跡」展示風景
それに続くのが都内各地の遺跡と発掘品の展示で、新宿の落合遺跡や町田市の忠生遺跡、さらに青梅市の駒木野遺跡から採集された土器などが紹介されていました。
「台地の遺跡」展示風景
東京ではいわゆる縄文海進によって海岸線の沿っていた北区、台東区、港区、大田区に貝塚が集中していて、多摩ニュータウンや八王子市でも多くの集落遺跡が発見されました。
「土器と石器の副葬」展示風景
おもに都内で発見された石器や土器をはじめ、集落や弔いのあり方などから、当時の縄文人たちの暮らしについて考えているのも、今回の縄文展の特徴かもしれません。
「縄文石器の移り変わり」展示風景
このうちまず充実していたのは石器の展示で、草創期から早期、晩期にかけて変化した狩猟具、植物加工具、打製石斧、磨製石斧などが紹介されていました。
「土器の機能と美の変化」展示風景
また土器においても年代を追って展示されていて、うつわを試行錯誤して作った草創期、用途により作り変えて文様をつけた早期から前期、大型化が進んだ中期、さらに機能性を求めた後期から晩期への変化を追うことができました。
「土器の機能と美の変化」展示風景
こうした中には大変にデコラティブな造形をした土器がある一方、現代の生活においても違和感なく利用できそうな注口土器もあって、いわば土器の多様な姿を見て取れました。
「東京の縄文土偶100」展示風景
東京から発見された約100体の土偶を紹介した、「東京の縄文土偶100」と題した展示も見どころかもしれません。
「東京の縄文土偶100」展示風景
ここでは比較的小さな土偶が並んでいて、顔を前にして突き出し、両肩から手を垂らすハート型土偶の姿などに魅せられました。また中空土偶や遮光器系土偶の一部は北海道や東北地方で発見されたものと類似していて、縄文人たちの広域なつながりを知ることができました。
「環状集落再現模型」(1/20)
八王子市多摩ニュータウンNo.107遺跡をモデルに、集落の景観を20分の1のスケールで再現した「環状集落再現模型」も充実していたのではないでしょうか。
「環状集落再現模型」(1/20)
自然豊かな森の中、小川のそばで暮らす人々の様子も精巧に再現されていて、近づいて見るとあたかも縄文時代へと迷い込んだような臨場感を得られました。
「環状集落再現模型」(1/20)
集落の中央には墓地があり、その周囲に住居が建てられていて、人々が木を切り、木の実を拾ったりする姿や、人を埋葬する光景などを見ることができました。
「環状集落再現模型」(1/20)
縄文の人々は水が確保しやすく、また日当たりや水はけが良い場所に集落を築いたとされていますが、それは現代の人間が生活に求める条件と大きく変わらないのかもしれません。
「暮らしの中の道具類」展示風景 *右下は重要文化財「耳飾り」 縄文時代後期 江戸東京たてもの園
2018年に東京国立博物館にて「特別展 縄文―1万年の美の鼓動」が開かれ、全国各地の貴重な土器や土偶が公開されましたが、今回は東京の地域に限定し、特に縄文の人々の暮らしを掘り起こすような展示といえるかもしれません。細かな装身具などにも目を引かれました。
「多摩丘陵のビーナス(土偶)」 縄文時代中期 多摩ニュータウンNo.471遺跡出土 東京都教育委員会
WEBメディア「イロハニアート」でも展示の様子をご紹介しました。
「東京の土器や土偶が大集合!江戸東京博物館の『縄文2021―東京に生きた縄文人―』で知る縄文の人々の暮らし」イロハニアート
この他、東京の土偶のほかに長野県茅野市の2件の国宝、「土偶(縄文のビーナス)」(10月19日~11月14日)と「土偶(仮面の女神)」(11月16日~12月5日)とが会期を分けて公開されています。
すでに「土偶(縄文のビーナス)」の展示は終了し、「土偶(仮面の女神)」の公開が16日からはじまりました。こちらも注目となりそうです。
国宝の土偶以外は撮影が可能です。12月5日まで開催されています。
「縄文2021―東京に生きた縄文人―」 江戸東京博物館(@edohakugibochan)
会期:2021年10月9日(土)〜12月5日(日)
時間:9:30~17:30
*土曜日は19:30まで開館
*入館は閉館の30分前まで。
休館:月曜日。
料金:一般1300(1040)円、大学・専門学生1040(830)円、小学・中学・高校生・65歳以上650(520)円。
*( )内は20名以上の団体料金。
*常設展との共通券あり
住所:墨田区横網1-4-1
交通:JR総武線両国駅西口徒歩3分、都営地下鉄大江戸線両国駅A4出口徒歩1分。
「縄文2021―東京に生きた縄文人―」
2021/10/9〜12/5
江戸東京博物館で開催中の「縄文2021―東京に生きた縄文人―」のプレス内覧会に参加してきました。
明治時代にはじまった東京の縄文時代遺跡の発掘は、特に戦後の都市開発によって多く行われ、現在に至るまで約3800箇所もの遺跡が確認されてきました。
その東京の縄文に着目したのが「縄文2021―東京に生きた縄文人―」で、会場内には土偶や土器、また石器や骨格器、さらに丸木舟などの考古資料がたくさん公開されていました。
「大森貝塚」展示風景
まず冒頭で紹介されたのは、東京の縄文遺跡発掘の歴史で、1877年にエドワード・S・モースが調査したことで有名な大森貝塚の採集品が並んでいました。モースは横浜から汽車で新橋に向かい途中、大森あたりで貝殻が崖面に露出しているのを発見し、のちに調査をしていて、日本で最初の科学的遺跡発掘調査と言われています。
「山地の遺跡」展示風景
それに続くのが都内各地の遺跡と発掘品の展示で、新宿の落合遺跡や町田市の忠生遺跡、さらに青梅市の駒木野遺跡から採集された土器などが紹介されていました。
「台地の遺跡」展示風景
東京ではいわゆる縄文海進によって海岸線の沿っていた北区、台東区、港区、大田区に貝塚が集中していて、多摩ニュータウンや八王子市でも多くの集落遺跡が発見されました。
「土器と石器の副葬」展示風景
おもに都内で発見された石器や土器をはじめ、集落や弔いのあり方などから、当時の縄文人たちの暮らしについて考えているのも、今回の縄文展の特徴かもしれません。
「縄文石器の移り変わり」展示風景
このうちまず充実していたのは石器の展示で、草創期から早期、晩期にかけて変化した狩猟具、植物加工具、打製石斧、磨製石斧などが紹介されていました。
「土器の機能と美の変化」展示風景
また土器においても年代を追って展示されていて、うつわを試行錯誤して作った草創期、用途により作り変えて文様をつけた早期から前期、大型化が進んだ中期、さらに機能性を求めた後期から晩期への変化を追うことができました。
「土器の機能と美の変化」展示風景
こうした中には大変にデコラティブな造形をした土器がある一方、現代の生活においても違和感なく利用できそうな注口土器もあって、いわば土器の多様な姿を見て取れました。
「東京の縄文土偶100」展示風景
東京から発見された約100体の土偶を紹介した、「東京の縄文土偶100」と題した展示も見どころかもしれません。
「東京の縄文土偶100」展示風景
ここでは比較的小さな土偶が並んでいて、顔を前にして突き出し、両肩から手を垂らすハート型土偶の姿などに魅せられました。また中空土偶や遮光器系土偶の一部は北海道や東北地方で発見されたものと類似していて、縄文人たちの広域なつながりを知ることができました。
「環状集落再現模型」(1/20)
八王子市多摩ニュータウンNo.107遺跡をモデルに、集落の景観を20分の1のスケールで再現した「環状集落再現模型」も充実していたのではないでしょうか。
「環状集落再現模型」(1/20)
自然豊かな森の中、小川のそばで暮らす人々の様子も精巧に再現されていて、近づいて見るとあたかも縄文時代へと迷い込んだような臨場感を得られました。
「環状集落再現模型」(1/20)
集落の中央には墓地があり、その周囲に住居が建てられていて、人々が木を切り、木の実を拾ったりする姿や、人を埋葬する光景などを見ることができました。
「環状集落再現模型」(1/20)
縄文の人々は水が確保しやすく、また日当たりや水はけが良い場所に集落を築いたとされていますが、それは現代の人間が生活に求める条件と大きく変わらないのかもしれません。
「暮らしの中の道具類」展示風景 *右下は重要文化財「耳飾り」 縄文時代後期 江戸東京たてもの園
2018年に東京国立博物館にて「特別展 縄文―1万年の美の鼓動」が開かれ、全国各地の貴重な土器や土偶が公開されましたが、今回は東京の地域に限定し、特に縄文の人々の暮らしを掘り起こすような展示といえるかもしれません。細かな装身具などにも目を引かれました。
「多摩丘陵のビーナス(土偶)」 縄文時代中期 多摩ニュータウンNo.471遺跡出土 東京都教育委員会
WEBメディア「イロハニアート」でも展示の様子をご紹介しました。
「東京の土器や土偶が大集合!江戸東京博物館の『縄文2021―東京に生きた縄文人―』で知る縄文の人々の暮らし」イロハニアート
この他、東京の土偶のほかに長野県茅野市の2件の国宝、「土偶(縄文のビーナス)」(10月19日~11月14日)と「土偶(仮面の女神)」(11月16日~12月5日)とが会期を分けて公開されています。
\いよいよ登場!/特別展「#縄文2021 ―東京に生きた縄文人―」では、ついに #国宝 仮面の女神(土偶)の展示が始まりました!(茅野市所蔵・尖石縄文考古館保管)迫力のある造形と精細な文様をぜひ会場でご覧ください!#江戸東京博物館 #縄文人 #縄文 #jomon pic.twitter.com/N0bU7NXJDh
— 江戸東京博物館 (@edohakugibochan) November 16, 2021
すでに「土偶(縄文のビーナス)」の展示は終了し、「土偶(仮面の女神)」の公開が16日からはじまりました。こちらも注目となりそうです。
国宝の土偶以外は撮影が可能です。12月5日まで開催されています。
「縄文2021―東京に生きた縄文人―」 江戸東京博物館(@edohakugibochan)
会期:2021年10月9日(土)〜12月5日(日)
時間:9:30~17:30
*土曜日は19:30まで開館
*入館は閉館の30分前まで。
休館:月曜日。
料金:一般1300(1040)円、大学・専門学生1040(830)円、小学・中学・高校生・65歳以上650(520)円。
*( )内は20名以上の団体料金。
*常設展との共通券あり
住所:墨田区横網1-4-1
交通:JR総武線両国駅西口徒歩3分、都営地下鉄大江戸線両国駅A4出口徒歩1分。
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