都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「サウンド&アート展 -見る音楽、聴く形」 アーツ千代田3331
アーツ千代田3331
「サウンド&アート展 -見る音楽、聴く形」
2021/11/6〜11/21
アーツ千代田3331にて開催中の「サウンド&アート展 -見る音楽、聴く形」を見てきました。
20世紀に入ると音楽は、旧来の楽器を超えた音や視覚的要素を取り込み、これまでにはない新たな表現を生み出しながら、多様に展開してきました。
そうした20世紀から現代へと至る新たな楽器に着目したのが「サウンド&アート展 -見る音楽、聴く形」で、会場には未来派の制作した楽器から日本の現代美術家らによる自動演奏装置など約40点が公開されていました。
さて端的にピアノやギターといった一般的な楽器をイメージしていると、思いもよらない内容に驚かされるかもしれません。というのも、会場に並んでいるのは、かたちからしておおよそ楽器とは思えない作品ばかりで、そもそもどこから音が出るのか想像すらつかないものも少なくありませんでした。
フランソワ・バシェ「勝原フォーン」 2017年修復
フランソワ・バシェの「勝原フォーン」とは、1970年の大阪万博のために制作された17点のうちの1点で、当時の日本人助手への謝意を示すために「勝原」と名づけられました。フランソワ・バシェは、兄のベルナールとともに1950年代より音響彫刻を手掛けていて、大阪万博では鉄鋼館のディレクターだった作曲家の武満徹に招聘されて作品を作りました。まるで植物の葉を開いて並べたようなかたちも面白いのではないでしょうか。
マーティン・リッチズ「Thinking Machine」 2007年
マーティン・リッチズの「Thinking Machine」は、球が楽器の中を行き来しながら音を発する作品で、あたかも工作機械のような姿を見せていました。これも知らなければ楽器とは思えない構造といえるかもしれません。
ルイジ・ルッソロ「イントナルモーリ」 1985年(オリジナル:1913年)
イタリアの未来派のルイジ・ルッソロが発明した「イントナルモーリ」とは、世界初のノイズ楽器と呼ばれていて、作家はこの楽器を20台以上制作して演奏会を開きました。しかしその後、第二次世界大戦によってすべて失われてしまうと、日本では1985年に多摩美術大学芸術学科により再制作されました。
明和電機「セーモンズII」 2014年 「マリンカ」 2001年 「ザ・スパンカーズ」 2012年
現代美術家が手がけるオブジェや彫刻の楽器も見過ごせないかもしれません。まず目立っていたのはナンセンスマシーンで有名な明和電機で、「マリンカ」や「ザ・スパンカーズ」、それに「電動ノックマンジャンボ」の複数の作品が展示されていました。
西原尚「勤奮機械」 2021年
この他では宇治野宗輝の「The District of Plywood City」や西原尚の「勤奮機械」も目立っていたかもしれません。また一切の電気を用いない自動演奏装置であるinvisi dirの「KO-TONE スパイラル木琴」も意外なメロディを奏でていました。
宇治野宗輝「The District of Plywood City」 2011年
今回の展覧会で嬉しいのは、全部で3つの楽器のデモンストレーションがあることでした。そのうち宇治野宗輝の「The District of Plywood City」は毎時00分と30分、また明和電機の「マリンカ」などは毎時15分、さらにinvisi dirの「KO-TONE スパイラル木琴」は毎時45分に実演がスタートして、それぞれ自由に聴きながら動画に収めることもできました。(アーティストトーク開催時は除く)
金沢健一「音のかけら」 2007年
また体験コーナーでは、金沢健一の「音のかけら」や明和電機の「オタマトーンジャンボ」、それにベルナール・パシェの考案した「教育音具」などを演奏することも可能でした。
松本秋則「竹音琴(チクオンキン)」 2012年
そのうち松本秋則の「竹音琴(チクオンキン)」とは竹を用いたサウンド・オブジェで、チップ全体を持ち上げて手を離すと、ゆっくりと落ちながらカラカラといった涼しげな音色を奏でていました。
invisi dir「KO-TONE スパイラル木琴」 2016年
体験コーナーの楽器を打ち鳴らしたり、楽器の実演を聞いていると気がつけば1時間近く経っていました。音楽から現代アートファンまで幅広く楽しめる展覧会といえそうです。
明和電機「オタマトーンジャンボ」 2010年 「電動ノックマンジャンボ」 2020年
新型コロナウイルス感染症予防の観点から日時指定制が導入されました。専用サイトより事前にチケットを購入する必要があります。
ただし各時間枠の定員を絞っている上、会期も短いために、土日を中心に予約で埋まる傾向があります。まずは予約状況を確認してから出かけられることをおすすめします。
一部の作品を除いて撮影も可能です。11月21日まで開催されています。
「サウンド&アート展 -見る音楽、聴く形」 アーツ千代田3331(@3331ArtsChiyoda) 1階メインギャラリー
会期:2021年11月6日(土)〜11月21日(日)
休館:会期中無休
時間:12:00~18:00
*最終入場は17:30まで。
料金:一般1200円、高校・大学生600円、中学生以下300円。
*予約サイト料金。当日券はプラス300円。
場所:千代田区外神田6-11-14 アーツ千代田3331 2階
交通:東京メトロ銀座線末広町駅4番出口より徒歩1分、東京メトロ千代田線湯島駅6番出口より徒歩3分、都営大江戸線上野御徒町駅A1番出口より徒歩6分、JR御徒町駅南口より徒歩7分。
「サウンド&アート展 -見る音楽、聴く形」
2021/11/6〜11/21
アーツ千代田3331にて開催中の「サウンド&アート展 -見る音楽、聴く形」を見てきました。
20世紀に入ると音楽は、旧来の楽器を超えた音や視覚的要素を取り込み、これまでにはない新たな表現を生み出しながら、多様に展開してきました。
そうした20世紀から現代へと至る新たな楽器に着目したのが「サウンド&アート展 -見る音楽、聴く形」で、会場には未来派の制作した楽器から日本の現代美術家らによる自動演奏装置など約40点が公開されていました。
さて端的にピアノやギターといった一般的な楽器をイメージしていると、思いもよらない内容に驚かされるかもしれません。というのも、会場に並んでいるのは、かたちからしておおよそ楽器とは思えない作品ばかりで、そもそもどこから音が出るのか想像すらつかないものも少なくありませんでした。
フランソワ・バシェ「勝原フォーン」 2017年修復
フランソワ・バシェの「勝原フォーン」とは、1970年の大阪万博のために制作された17点のうちの1点で、当時の日本人助手への謝意を示すために「勝原」と名づけられました。フランソワ・バシェは、兄のベルナールとともに1950年代より音響彫刻を手掛けていて、大阪万博では鉄鋼館のディレクターだった作曲家の武満徹に招聘されて作品を作りました。まるで植物の葉を開いて並べたようなかたちも面白いのではないでしょうか。
マーティン・リッチズ「Thinking Machine」 2007年
マーティン・リッチズの「Thinking Machine」は、球が楽器の中を行き来しながら音を発する作品で、あたかも工作機械のような姿を見せていました。これも知らなければ楽器とは思えない構造といえるかもしれません。
ルイジ・ルッソロ「イントナルモーリ」 1985年(オリジナル:1913年)
イタリアの未来派のルイジ・ルッソロが発明した「イントナルモーリ」とは、世界初のノイズ楽器と呼ばれていて、作家はこの楽器を20台以上制作して演奏会を開きました。しかしその後、第二次世界大戦によってすべて失われてしまうと、日本では1985年に多摩美術大学芸術学科により再制作されました。
明和電機「セーモンズII」 2014年 「マリンカ」 2001年 「ザ・スパンカーズ」 2012年
現代美術家が手がけるオブジェや彫刻の楽器も見過ごせないかもしれません。まず目立っていたのはナンセンスマシーンで有名な明和電機で、「マリンカ」や「ザ・スパンカーズ」、それに「電動ノックマンジャンボ」の複数の作品が展示されていました。
西原尚「勤奮機械」 2021年
この他では宇治野宗輝の「The District of Plywood City」や西原尚の「勤奮機械」も目立っていたかもしれません。また一切の電気を用いない自動演奏装置であるinvisi dirの「KO-TONE スパイラル木琴」も意外なメロディを奏でていました。
宇治野宗輝「The District of Plywood City」 2011年
今回の展覧会で嬉しいのは、全部で3つの楽器のデモンストレーションがあることでした。そのうち宇治野宗輝の「The District of Plywood City」は毎時00分と30分、また明和電機の「マリンカ」などは毎時15分、さらにinvisi dirの「KO-TONE スパイラル木琴」は毎時45分に実演がスタートして、それぞれ自由に聴きながら動画に収めることもできました。(アーティストトーク開催時は除く)
金沢健一「音のかけら」 2007年
また体験コーナーでは、金沢健一の「音のかけら」や明和電機の「オタマトーンジャンボ」、それにベルナール・パシェの考案した「教育音具」などを演奏することも可能でした。
松本秋則「竹音琴(チクオンキン)」 2012年
そのうち松本秋則の「竹音琴(チクオンキン)」とは竹を用いたサウンド・オブジェで、チップ全体を持ち上げて手を離すと、ゆっくりと落ちながらカラカラといった涼しげな音色を奏でていました。
invisi dir「KO-TONE スパイラル木琴」 2016年
体験コーナーの楽器を打ち鳴らしたり、楽器の実演を聞いていると気がつけば1時間近く経っていました。音楽から現代アートファンまで幅広く楽しめる展覧会といえそうです。
明和電機「オタマトーンジャンボ」 2010年 「電動ノックマンジャンボ」 2020年
新型コロナウイルス感染症予防の観点から日時指定制が導入されました。専用サイトより事前にチケットを購入する必要があります。
ただし各時間枠の定員を絞っている上、会期も短いために、土日を中心に予約で埋まる傾向があります。まずは予約状況を確認してから出かけられることをおすすめします。
一部の作品を除いて撮影も可能です。11月21日まで開催されています。
「サウンド&アート展 -見る音楽、聴く形」 アーツ千代田3331(@3331ArtsChiyoda) 1階メインギャラリー
会期:2021年11月6日(土)〜11月21日(日)
休館:会期中無休
時間:12:00~18:00
*最終入場は17:30まで。
料金:一般1200円、高校・大学生600円、中学生以下300円。
*予約サイト料金。当日券はプラス300円。
場所:千代田区外神田6-11-14 アーツ千代田3331 2階
交通:東京メトロ銀座線末広町駅4番出口より徒歩1分、東京メトロ千代田線湯島駅6番出口より徒歩3分、都営大江戸線上野御徒町駅A1番出口より徒歩6分、JR御徒町駅南口より徒歩7分。
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