都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
『木村伊兵衛と画家たちの見たパリ 色とりどり』 目黒区美術館
目黒区美術館
『木村伊兵衛と画家たちの見たパリ 色とりどり』
2022/2/19~3/27
目黒区美術館で開催中の『木村伊兵衛と画家たちの見たパリ 色とりどり』を見てきました。
報道写真やポートレートの名手として知られる木村伊兵衛は、戦後に日本人写真家として初めてヨーロッパを取材すると、アンリ・カルティエ=ブレッソンらと交流しては、パリの街をカラーフィルムにて撮影しました。
その木村のパリでの写真を公開するのが『木村伊兵衛と画家たちの見たパリ 色とりどり』で、カラースナップ写真131点に加え、1910年から50年にかけてパリ留学を経験した画家らの作品が紹介されていました。
まず冒頭で目を引くのが、1階の受付奥に並ぶ木村のパリの街を捉えた写真で、あわせて井手宣通の『モンマルトル(巴里)』と近藤吾朗の『サン・ミッチェル通り』といったほぼ同時代の油彩画が隣りに展示されていました。まさに写真と絵画の双方にて、1950年代のパリの光景が響き合うすがたを楽しめるかもしれません。
続く2階では木村の写真が、「パリの街角」、「素顔のパリっ子」、「安らぐパリ」、「華やぐパリ」の4つのテーマに分けて展示されていて、木村が何気ない街角や庶民のすがた、また人々の親密な雰囲気といったパリのさまざまな表情を写している様子を目の当たりにできました。
一部の写真には、「年寄りは全部といっていいほど、写真のような黒い服装をしている。」や「日本の甘栗のような焼き栗をパリの人は好んでたべる。」などの木村の短いコメントが付されていて、パリの街や人々の様態を観察した心のうちを伺うこともできました。
またパリの街の印象だけでなく、「カラーで人間を写す場合は動きを巧く狙わないといけない。」といった技術的な内容が記されているのも興味深いかもしれません。木村は愛用のライカと開発されて間もない国産のカラーフィルムにてパリを撮影しましたが、フィルムの特性でもあった低感度の淡い色彩とコントラストを活かし、パリの空気や光の色までも繊細に捉えました。
そうした作品として『霧の夜、モンパルナス、パリ』や『赤い霧、モンパルナス、パリ』なども魅惑的かもしれません。木村自身、「霧の夜はネオンや電灯が霧でそまって、変った雰囲気が出る。」とコメントしていますが、幻想的な光景もカラーならではの持ち味のように思えました。
木村の写真に続き、最後にまとめて展示されているのが、パリ留学を経験した画家らの作品でした。いずれも目黒区美術館のコレクションで、荻須高徳の『パリのカフェ』や岡田謙三の『セーヌ河』といった油彩画だけでなく、小川千甕の『ルーブルのほとり』などの水彩、または同じく小川の『渡欧期のスケッチブック』といった鉛筆の作品など幅広いジャンルが揃っていました。
1950年代のパリは当時の著名な写真からがこぞって撮影しているものの、多くはモノクロで占められていて、カラーで捉えた木村の写真は比較的珍しいそうです。一連の写真を通して見ると、パリでの撮影を楽しんでいる木村の心持ちが伝わってくるかのようでした。
木村伊兵衛のカラー写真でめぐる1950年代のパリ。目黒区美術館で開催中の『木村伊兵衛と画家たちの見たパリ 色とりどり』展|Pen Online
3月27日まで開催されています。
『木村伊兵衛と画家たちの見たパリ 色とりどり』 目黒区美術館(@mmatinside)
会期:2022年2月19日(土)~3月27日(日)
休館:月曜日。但し3月21日(月祝)は開館、3月22日(火)は休館。
時間:10:00~18:00
*入館は17時半まで。
料金:一般800(600)円、大高生・65歳以上600(500)円、小中生無料。
*( )内は20名以上の団体料金。
住所:目黒区目黒2-4-36
交通:JR線、東京メトロ南北線、都営三田線、東急目黒線目黒駅より徒歩10分。
『木村伊兵衛と画家たちの見たパリ 色とりどり』
2022/2/19~3/27
目黒区美術館で開催中の『木村伊兵衛と画家たちの見たパリ 色とりどり』を見てきました。
報道写真やポートレートの名手として知られる木村伊兵衛は、戦後に日本人写真家として初めてヨーロッパを取材すると、アンリ・カルティエ=ブレッソンらと交流しては、パリの街をカラーフィルムにて撮影しました。
その木村のパリでの写真を公開するのが『木村伊兵衛と画家たちの見たパリ 色とりどり』で、カラースナップ写真131点に加え、1910年から50年にかけてパリ留学を経験した画家らの作品が紹介されていました。
まず冒頭で目を引くのが、1階の受付奥に並ぶ木村のパリの街を捉えた写真で、あわせて井手宣通の『モンマルトル(巴里)』と近藤吾朗の『サン・ミッチェル通り』といったほぼ同時代の油彩画が隣りに展示されていました。まさに写真と絵画の双方にて、1950年代のパリの光景が響き合うすがたを楽しめるかもしれません。
続く2階では木村の写真が、「パリの街角」、「素顔のパリっ子」、「安らぐパリ」、「華やぐパリ」の4つのテーマに分けて展示されていて、木村が何気ない街角や庶民のすがた、また人々の親密な雰囲気といったパリのさまざまな表情を写している様子を目の当たりにできました。
一部の写真には、「年寄りは全部といっていいほど、写真のような黒い服装をしている。」や「日本の甘栗のような焼き栗をパリの人は好んでたべる。」などの木村の短いコメントが付されていて、パリの街や人々の様態を観察した心のうちを伺うこともできました。
またパリの街の印象だけでなく、「カラーで人間を写す場合は動きを巧く狙わないといけない。」といった技術的な内容が記されているのも興味深いかもしれません。木村は愛用のライカと開発されて間もない国産のカラーフィルムにてパリを撮影しましたが、フィルムの特性でもあった低感度の淡い色彩とコントラストを活かし、パリの空気や光の色までも繊細に捉えました。
そうした作品として『霧の夜、モンパルナス、パリ』や『赤い霧、モンパルナス、パリ』なども魅惑的かもしれません。木村自身、「霧の夜はネオンや電灯が霧でそまって、変った雰囲気が出る。」とコメントしていますが、幻想的な光景もカラーならではの持ち味のように思えました。
木村の写真に続き、最後にまとめて展示されているのが、パリ留学を経験した画家らの作品でした。いずれも目黒区美術館のコレクションで、荻須高徳の『パリのカフェ』や岡田謙三の『セーヌ河』といった油彩画だけでなく、小川千甕の『ルーブルのほとり』などの水彩、または同じく小川の『渡欧期のスケッチブック』といった鉛筆の作品など幅広いジャンルが揃っていました。
1950年代のパリは当時の著名な写真からがこぞって撮影しているものの、多くはモノクロで占められていて、カラーで捉えた木村の写真は比較的珍しいそうです。一連の写真を通して見ると、パリでの撮影を楽しんでいる木村の心持ちが伝わってくるかのようでした。
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— Pen Magazine (@Pen_magazine) March 1, 2022
木村伊兵衛のカラー写真でめぐる1950年代のパリ。目黒区美術館で開催中の『木村伊兵衛と画家たちの見たパリ 色とりどり』展|Pen Online
3月27日まで開催されています。
『木村伊兵衛と画家たちの見たパリ 色とりどり』 目黒区美術館(@mmatinside)
会期:2022年2月19日(土)~3月27日(日)
休館:月曜日。但し3月21日(月祝)は開館、3月22日(火)は休館。
時間:10:00~18:00
*入館は17時半まで。
料金:一般800(600)円、大高生・65歳以上600(500)円、小中生無料。
*( )内は20名以上の団体料金。
住所:目黒区目黒2-4-36
交通:JR線、東京メトロ南北線、都営三田線、東急目黒線目黒駅より徒歩10分。
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