「和田典子 - Fancy dim light」 Yuka Sasahara Gallery

Yuka Sasahara Gallery千代田区神田岩本町4
「和田典子 - Fancy dim light」
10/16-11/20


「shallow sleep "good bye"」2010

Yuka Sasahara Galleryで開催中の和田典子個展、「Fancy dim light」へ行ってきました。

作家、和田典子のプロフィールなどは同画廊WEBサイトをご覧ください。

和田典子 Noriko Wada@Yuka Sasahara Gallery

2005年に京都市芸術大学の修士課程を修了した後、最近では高橋コレクションのneoneo展に出品があった他、本年のVOCAにも選出されています。

今思うとVOCAの時の記憶がないのが不思議でなりませんが、ともかくも画廊に入った瞬間、強く惹かれるものを感じたのは私だけではないかもしれません。モチーフは何気ない日常の、例えばソファに座る少女などでしたが、ともかくそのタッチ、とりわけカラフルでうねるような線描には鮮烈な印象を与えられました。

リボンにも例えられるという明るいピンクやイエロー、そしてブルーなどが組み合わさった線はそれ自体が生き物のように這いつくばり、人間や家具などのイメージを作り上げています。まるで組紐です。緩やかに組み合わされた紐状の線が、絵画に懐かしいようでいてどこか新しい感覚を吹き込んでいました。

11月20日まで開催されています。
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「アメリカ抽象絵画の巨匠 バーネット・ニューマン」(Vol.2・レクチャー) 川村記念美術館

川村記念美術館千葉県佐倉市坂戸631
「アメリカ抽象絵画の巨匠 バーネット・ニューマン」(Vol.2・レクチャー)
9/4-12/12



少し時間があいてしまいましたが「Vol.1」(速報写真)に続きます。川村記念美術館で開催中の「アメリカ抽象絵画の巨匠 バーネット・ニューマン」のプレスプレビューに参加してきました。

展示の概要、会場の風景などは前回のエントリでも簡単に紹介しています。 宜しければご覧ください。

「アメリカ抽象絵画の巨匠 バーネット・ニューマン」(Vol.1・速報写真) 川村記念美術館

さて今回はプレビュー時に行われた前田希世子学芸員のレクチャーについてまとめてみます。ご鑑賞の参考になれば幸いです。


*解説中の前田学芸員


展示のプランについて

川村記念美術館で初めてのニューマン展。一度やりたいと思っていた。
作品は必ずしも時系列に並べているわけではない。各作品に合うスペースを探して展示している。
章解説などをなるべく取っ払った。かわりに鑑賞のヒントになりうるニューマン自身の言葉を紹介している。
一般的に抽象絵画はタイトルに意味を持ち得ないことが多いが、ニューマンは作品のメタファーになっていることがある。よって見る人とのつながりを考え、タイトルを目立つ位置に掲示することにした。

ニューマンとは~画面の中の感情をくみ取る~

ニューマンは1905年にニューヨーク生まれた、アメリカ現代美術を代表する作家である。
ポロックやロスコらのNYスクールの作家はいわゆる田舎出身の者が多いが、ニューマンは紛れもなくニューヨークの出身である。
抽象平面に線を引いたものなど、一般的にミニマルで感情移入しにくい作家という印象があるが、今回はむしろ画面の中の心情を汲み取れるような展示を試みた。

存在せよ1~ニューマンをニューマンたらしめた作品~


バーネット・ニューマン「存在せよ1」1949年 油彩、カンヴァス メニル・コレクション、ヒューストン

自らのスタイルを確立したニューマンの出発点の作品である。
大きなキャンバスに一本の細い線(ジップ)が描かれている。見る側はまず最初の軸として中央のジップに目線をあわせ、そこから左右に開かれた赤い面へ視点を移すことになる。
タッチが画面の中央部だけでなく全体に同じ重さをもって表されていることが分かる。
ニューマン画においてこの筆の痕跡は大変に重要だ。
ジップは中心線というよりも見る者に何かを語りかけるものであり、また自分の存在を露にする一種のアピールとしての装置ではないだろうか。
2002年にフィラデルフィア美術館とテートモダンでニューマンの展覧会があったが、その時は修復中で出品されなかった。久々の公開である。

ジップのスタイルをとる前のニューマン


バーネット・ニューマン「無題」1944年 ワックスクレヨン、オイルクレヨン、紙 バーネット&アナリー・ニューマン財団 他

ニューマンのジップスタイル以前の作品を展覧する。
3点のクレヨン画。ニューマンがマサチューセッツで休暇中に描いた。
1948年にジップのスタイルを確立したニューマンは、こうした初期の作品を気に入らないものとして殆ど破棄してしまった。本作はニューマンの妻によって残された僅かなものの貴重な数点である。
作品からはシュルレアリスムの影響が感じられる。まるで生物がうごめいているようなモチーフはジップ後のニューマンと全く関係が見られないが、クレヨンの塗り方や紙の質感へのこだわりはあまり変わらないかもしれない。
ニューマンは後、自らの1940年代の絵は死んでいると言って憚らなかった。

異教的空虚~シュルレアリスム~


バーネット・ニューマン「異教的空虚」1946年 油彩、カンヴァス ワシントン・ナショナル・ギャラリー

ニューマン初期の油彩の作品。ここでも注目したいのは絵具の多彩な塗り方である。
黒の絵具によって中央の円が描かれ、その周縁を厚塗りのペパーミントグリーンが埋めている。この部分はナイフで絵具が置かれている。また赤い部分は引っかき傷のようなタッチで表されている。
ニューマンはキャンバスに絵具をどう置くのかについて強い関心を払っていたことが見て取れる。

18の詩編~版画~


バーネット・ニューマン 「18の詩篇」題扉」1963-64年 リトグラフ、紙 富士ゼロックス株式会社 他

様々な色面にジップをのせた一連の版画作品。
ジップと色を変えることで多様な表情を引き出すことに成功している。
元々のタイプは多くないが、石や紙の種類、またサイズから色を変えている。
ジップを含め、紙、色の変化で作品全体の印象がどう変わるのかが良く分かるのではないだろうか。
また色には思いがけないほど立体感があることにも注目したい。
ニューマンはこれらの作品を「一枚一枚手に取るように見るべきものだ。」と額装を許さなかった。

夜の女王1~縦のスタイル~


バーネット・ニューマン「夜の女王1」1951年 油彩、カンヴァス 国立国際美術館 

国立国際美術館の所蔵品。国内にあるニューマンの油彩画は本館の「アンナの光」とこの作品だけである。
タイトルはモーツァルトの「魔笛」のソプラノの主役と同じ。深い紺色は夜をイメージさせる。また縦に伸びる長く白いジップは、オペラの夜の女王における音階を上がっていくアリアを連想させはしないだろうか。
上から下へ進むジップは空間を支配している。縦に長いこのスタイルの代表的作品と呼んでいいだろう。

名1~ジップと運動~


バーネット・ニューマン「名1」1949年 油彩、マグナ、カンヴァス ダロス・コレクション、スイス

ジップが4本あるが、その塗り方が違うことに注目したい。
太いものは比較的均一に、また細いものは強弱がつけられていることが分かる。また一番右のジップはマスキングテープを使っている。
グレーの色面は刷毛で描いたような質感が追求されている。
ジップを様々な間隔で描くことにより、画面全体にいくつかの長方形と正方形を生み出している。
どのジップを中央に捉えるかによって、左右に開かれる形が変わっていく様子が興味深い。
そういった意味でジップの作品の中でも特に動きのあるものだと言えるだろう。

ここ2~ニューマンの珍しい彫刻~


バーネット・ニューマン「ここ2」1965年 コルテン鋼 ダロス・コレクション、スイス

珍しいニューマンの彫刻作品。棒が縦方向へと力強く伸ばされている。
ニューマンにおける作品の正面性は極めて重要。
作品の正面に立った時、背景の壁が白いキャンバスに、そして棒がジップを表しているように見える。
ジップの世界を三次元として表した作品だとも言えるのではないか。

アンナの光~畢竟の大作~


バーネット・ニューマン「アンナの光」1968年 川村記念美術館

母アンナの死後3年経って描かれた作品。
大きなキャンバスに赤い色面が広がっていく。
一見、赤一色の平面は表情がないようにも思えるが、これも目を凝らすと刷毛の痕跡が残っていることが分かる。
タッチのざわめき、また繊細な色の移ろいからは、作品に込められている微妙な情感を感じとれるのではないだろうか。
見る人を包み込むような色彩は両端の白いジップによってさらに際立った。
常設では窓から自然光の差し込む空間に作品を置いているが、今回は完全人工光のみのホワイトキューブに展示している。(天窓も閉じてある。)
また空間そのものは常設よりも左右に広い。
赤の色彩、また表面の質感がさらに前面に押し出されるのではないだろうか。
この空間で作品そのものとじっくり向かい合って欲しい。

以上です。冒頭に展示の大まかな概要を説明した上で、個々の作品の解説が続くという流れになっていました。なおさらに突っ込んだ内容などについては前田学芸員のギャラリートークに参加されるのも良いかもしれません

学芸員によるギャラリートーク 12/3(金) 14:00-15:00(先着40名)

現在、同館ご自慢の園内では木々が色づき始めているそうです。(自然散策路)私も散歩をかねてそろそろ再訪したいと思います。

9/1より、東京駅と川村記念美術館を結ぶ高速バス路線が開通します。

12月12日まで開催されています。

注)写真の撮影と掲載については主催者の許可を得ています。
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「ブラティスラヴァ世界絵本原画展とチェコの人形劇」 千葉市美術館

千葉市美術館千葉市中央区中央3-10-8
「世界の絵本がやってきた ブラティスラヴァ世界絵本原画展とチェコの人形劇」
10/5-12/5



千葉市美術館で開催中の「ブラティスラヴァ世界絵本原画展とチェコの人形劇」へ行って来ました。

絵本原画展と聞くと、先だって板橋区美で紹介されたボローニャ国際絵本原画展も有名ですが、このスロヴァキアのブラティスラヴァ世界絵本原画展もそれに並ぶ世界最大規模の絵本のコンクール展です。(ともに同じ1967年に始まっています。)


マルチナ・マトロヴィチョヴァー「トレーシーの虎」

同展はこれまでに隔年で計22回ほど開かれてきましたが、いわゆる新人登竜門のボローニャとは違い、対象が出版済の絵本原画、つまりは既に出版界でキャリアを持つ作家を審査することで知られています。まさに「ベテランの作家の競演」(ちらしより引用)です。2009年の受賞作家、約20名(日本人作家を含む。)の作品が紹介されていました。


山口マオ「わにわにのおでかけ」

作風も内容も多様なので一概に言えませんが、私として魅力を感じたのはクレー画を連想させるピート・グロブラーの「色!いろいろ!」です。またもう一点、アンヌ・ベルティエの「文字を描いて」シリーズにも興味をそそられます。これはいわゆる文字を子どもに教えるための絵本ですが、左ページの文字から生まれた色々な単語の絵が右に描かれています。「S」が靴のヒール部分に変化するなどは思いもつきません。その発想の豊かさには終始感心させられました。


イジー・フデチェクによる家庭用劇場の人形より 「房糸をつけた悪魔」「角の生えた歯のある悪魔」「魔界の王子」「王様」 フルジム人形劇博物館蔵

さて後半のチェコの人形劇ですが、こちらこそ今回のハイライトとしても過言ではないかもしれません。そもそもスロヴァキアの隣国のチェコで人形劇が盛んだったとは初めて知りましたが、展示では19世紀以降、一般家庭向けに制作された何と170体にも及ぶ人形がそのセットと合わせて一同に会しています。ここは壮観です。何でもチェコの人形をまとまった形で展示するのは国内で初めてだそうですが、例えば悪魔しかり赤ずきんしかり、素朴ながらも様々な格好をした人形たちは見応え十分でした。


マルティーネクの劇場/ルドルフ・ハヴァラスによる家庭用劇場の人形より 「王様」「お姫様」 フルジム人形劇博物館蔵

またもう一つ見逃せないのは、実際の人気劇の映像が二本立てで放映されていることです。字幕はなく、筋を追うのは無理でしたが、動きの面白さなどは良く伝わってきます。映像はともに45分から55分前後と長めですが、一部でもかなり楽しめました。

最後には人形を実際に動かせる体験コーナーまでが用意されています。ここは少々長居して、人形を動かしながら遊びました。

なお会期中、人形を使ってのデモンストレーションや人形劇の上演もあります。ともに予約不要なのでそちらに参加されるのも良いかもしれません。

糸操り人形のデモンストレーション 11月14日(日)、27日(土)
各日2回開催 14:00―14:30・15:00―15:30/荒川純子(人形劇団プーク)

人形劇上演「えんどう豆の上にねたお姫さま」(原作:アンデルセン) 11月21日(日)
各日2回開催 13:00―13:20・15:00―15:20/人形劇団MあんどB


千葉市美術館のyoutubeチャンネルで会場風景の動画が公開されています。

「ブラティスラヴァ世界絵本原画展とチェコの人形劇」展会場風景@ChibaCityMuseumofArt

本邦初公開のチェコの人形、一見の価値ありです。12月5日まで開催されています。
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「黙示録 - デューラー/ルドン」 東京藝術大学大学美術館

東京藝術大学大学美術館台東区上野公園12-8
「黙示録 - デューラー/ルドン」
10/23-12/5



デューラーを中核に、中世末期よりルドンへ至る黙示録図像を版画で辿ります。東京藝術大学大学美術館で開催中の「黙示録 デューラー/ルドン」へ行って来ました。

版画ファン待望の西美デューラー展の関連企画です。殆ど日本で紹介されたことのないというメルボルンの国立ヴィクトリア美術館の所蔵品をはじめ、藝大図書館、また版画ではお馴染みの町田市立国際版画美術館などの「黙示録」に関する版画が約100点ほど展示されていました。

展覧会の構成は以下の通りです。

プロローグ デューラー以前の黙示録図像
第1章 デューラー「黙示録」
第2章 デューラー以後の黙示録図像
第3章 近代:ルドン「ヨハネ黙示録」への道


はじめにも触れましたが、「西洋美術においてたびたび視覚化されてきた」(ちらしより引用)黙示録図像が、中世末期よりデューラーを挟んで、16世紀のマティアス・ゲールング、さらには19世紀のレーテル、ルドンらの手によってどのように描かれてきたのかを追う内容でした。


デューラー「聖ミカエル、竜を倒す」1497年頃 木版 メルボルン国立ヴィクトリア美術館

ともかくデューラーとあれば、いつも一点一点の濃密な描写に終始圧倒されてしまうわけですが、今回はそうした感想は横において、私の思った展示の興味深いポイントをあげてみます。

中世美術の魅惑

この展覧会、ずばり冒頭の掴みが抜群です。入口にはデューラーとほぼ同時代の15世紀末の作家、ハンス・ムルチャーの後継作家による「使徒聖ヨハネ」と「聖マリア」の二体の木彫像が待ち構えています。版画展ではサプライズとも言える導入ですが、ともにその素朴な造形美に心を引かれました。


作者不詳「最後の審判の時を告げる天使」 1465年頃 木版手彩色 町田市立国際版画美術館

またこのプロローグ部分において、デューラーに先行した作家らの版画も見逃せません。そもそもデューラーは自身の黙示録シリーズの制作のため、1485年刊行のグリューニンガー聖書などを下敷きとしましたが、そうした作品もあわせて紹介されていました。

黙示録と寓意~マティアス・ゲールングの「セバスティアン・マイアー『黙示録註解』木版挿絵連作」

デューラーの「黙示録」から約35年後、南ドイツのゲールングによって制作された一連の黙示録シリーズには、カトリックに対する痛烈な皮肉がこめられています。

 
マティアス・ゲールング「力強い天使」(左) 「力強い天使としてのプロテスタントの説教師」(右) 1544-58年 木版 町田市立国際版画美術館

作品は全て2点で1組です。左に黙示録のシーンを描き、右に特にカトリックを糾弾する内容の寓意を描きました。

例えば燃え盛るバビロンを表した「バビロンの没落」が「カトリックの崩落」に置き換えられ、さらには同じくバビロンの淫婦のモチーフが何と教皇に写し変えられたりしていました。表現力としてはデューラーに及ばないものの、展覧会の総数の半分以上を占める60点ほどの連作は見応え十分です。今回のハイライトと言っても良いかもしれません。

デューラー、そしてルドン


オディロン・ルドン「…之に乗る者の名を死といひ」1899年 リトグラフ 国立西洋美術館

デューラーの黙示録が放ったインパクトは、遥か時代を下ってルドンにも影響を与えます。ルドンが「ヨハネ黙示録」の連作を手掛けたのは、彼が20年に渡って石版画を作り続けた最後の時期でした。展示では直接の比較はありませんが、図録などで改めて見比べるのもまた面白いかもしれません。

会場は藝大美術館の地下展示室のみです。(階上の2つの展示室は共催の「明治の彫塑 ラグーザと荻原碌山」)まだ西美を見ていないので何とも言えませんが、この規模なら二館のはしごも十分に可能だという印象を受けました。



というわけで、本編の西美の「アルブレヒト・デューラー版画・素描展」も早めに出かけたいと思います。

「黙示録論/D・H ロレンス/ちくま学芸文庫」

12月5日まで開催されています。
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「草間彌生 水玉宇宙の星たち」 丸の内ハウス

丸の内ハウス千代田区丸の内1-5-1 新丸ビル7階)
「草間彌生 水玉宇宙の星たち」
10/25-11/14



丸の内ハウスで開催中の「草間彌生 水玉宇宙の星たち」へ行ってきました。

同フロアは新丸ビルのいわゆるレストランゾーンにあたりますが、その中のいくつかのポイントで草間彌生のインスタレーションが紹介されています。


「宇宙にとどけ、水玉かぼちゃ」2010

中央エレベーターを降りてすぐ目に飛び込んでくるのがメタリックなカボチャ、「宇宙にとどけ、水玉かぼちゃ」(2010)です。中は草間カラーとも言える赤一色で塗られていました。



通路部分にもドットが鮮やかに配されています。トイレの入口もこの通りでした。


「水玉強迫」インスタレーション(2010)

さて展示のメインとなるのが、ちょうどエレベーターフロアの裏に位置するサロンルームと呼ばれるスペースです。入口を抜けるとご覧の通り、水玉強迫のマネキンがお出迎えしてくれました。



そしてその奥の部屋、「I'm Here, but Nothing」(2006)こそハイライトです。暗がりの部屋に色とりどりのドットがライトアップされています。まさに水玉の宇宙空間が実現していました。



かつてニュートーキョーコンテンポラリーズを見た時と同様に、通常の飲食店スペースと違和感なく作品がコラボしているのも面白いと思いました。



平日は28時まで、日曜祝日も23時までオープンしています。(サロンルームは23時まで。開場は11時。)交通至便な東京駅前ということで、仕事帰りなどでも楽しめるのではないでしょうか。



11月14日までの開催です。なお入場は無料でした。
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「東大寺大仏展 期間限定 正倉院宝物 特別公開」 東京国立博物館

東京国立博物館台東区上野公園13-9
「東大寺大仏展 期間限定 正倉院宝物 特別公開」
11/2-11/21(展覧会会期は12/12まで)



上野の東大寺展もそろそろ佳境です。東京国立博物館で開催中の「東大寺大仏展 期間限定 正倉院宝物 特別公開」へ行って来ました。

目玉の「八角燈籠」をはじめ、東大寺にまつわる様々な文物にて大仏創建の偉業を辿る展覧会ですが、それには欠かせない正倉院の宝物がようやくお目見えしました。

本展に出品の正倉院宝物は以下の通りです。 (時代は全て奈良時代・8世紀)

「天平宝物筆」中倉35 1枝
「天平宝物墨」中倉36 1挺
「縹縷(開眼縷)」南倉82 1条
「福纈屏風 鸚烏武・象木」北倉44 2扇
「桂心」北倉88 一括
「桂心袋」北倉90 1口
「人参」北倉122 一括
「人参袋」北倉94-3 1口
「沙金桂心請文」 北倉168 1巻
「銀壺 乙」南倉13 1口
「斑犀如意及び素木如意箱」南倉51 1枚・1合
「金銅雲花形裁文」南倉162
「金銅鳳形裁文」南倉163 1枚
「墨画仏像」南倉154 1躯


そもそも正倉院とは「東大寺な宝物を納める蔵」(東博ニュースより引用)でしたが、今回はその中よりとりわけ大仏開眼時に用いられた品が紹介されていました。


「縹縷(開眼縷)」 奈良時代(8世紀) 正倉院宝物

まずその開眼会の必須アイテムとして注目したいのが全長200メートルにも及ぶ紐、「開眼縷」です。これは開眼の際、瞳を描く僧侶の筆に繋ぎ、その先を聖武天皇と光明皇后が握ったものですが、大切に保存されてきたからなのか、鮮やかに染まった空色の美しさには目を奪われます。これ一点でも当時の息吹が伝わってくるかもしれません。密かに前々から是非見たいと思っていた品だったので、ここは感激もひとしおでした。

また紐に続いて欠かせないのが「天平宝物筆」と呼ばれる筆です。こちらも開眼時に用いられたものですが、一般的な長さをゆうに超えた全長65センチの筆の姿に接すると、改めて大仏のスケールを感じとれるのではないでしょうか。まさに堂々たる姿でした。


「桂心」 奈良時代(8世紀) 正倉院宝物

さて一方、光明皇后ゆかりの品として興味深いのは、創建時に献納したもの一つ、「桂心」です。これは漢方薬の材料でもあり、またシナモンとしても知られている薬物ですが、当時は必要に応じて実際に使われたことから、百年後には10分1ほどになってしまったとのことでした。


「福纈屏風 象木」 奈良時代(8世紀) 正倉院宝物

いわゆる美術品としても見応えがあるのは、「福纈屏風 鸚烏武・象木」や「銀壺 乙」です。臈纈染めの屏風は奈良の正倉院展でもお馴染みですが、後者の壺における細やかな線刻もまた見事でした。唐風とされる紋様は何とも風雅です。獣を狙う狩人の動きも軽やかでした。

出品数は多くなく、また大仏開眼に関連する文物のみの公開とのことで、本家・正倉院展ほどの華やかさは皆無ですが、そもそもこうした品を東京で見られる機会など滅多にありません。ここは素直に楽しめました。

なお本展に関連し、平成館一階の企画展示室でも正倉院にまつわる染物の特集陳列が行われています。



特集陳列「東京国立博物館所蔵 正倉院の染物」

奈良時代の染物をまとめて見るチャンスです。お見逃しなきようご注意下さい。(また本館2階の国宝室では、伝聖武天皇筆の「賢愚経断簡」を11月14日まで展示。)


*本写真は内覧時に主催者の許可を得て撮影しています。

なおプレビュー時の展覧会の様子は以下のエントリにまとめてあります。宜しければご覧下さい。

「東大寺大仏 天平の至宝」 東京国立博物館(拙ブログ)

正倉院宝物出品期間中は無休です。11月8日、15日の月曜日も開館します。

ブログをお持ちの方に朗報です。 以下、リンク先の手順により展示のレビューを書くと、抽選で展覧会フィギュアやグッズが当たる企画があります。これからお出かけの方は参加されてみては如何でしょう。(画像などもダウンロード可能だそうです。)

展覧会レビュー あなたのブログに展覧会レビューを書きませんか? @todaiji2010(東大寺大仏展ツイッターアカウント)



11月13日(13:30~)には東博にせんとくんがやってくるイベントがあるそうです。

「期間限定 正倉院宝物 特別公開」は11月21日まで開催されています。*東大寺大仏展の会期は12月12日まで。
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11月の展覧会・ギャラリーetc

月初めの恒例の私的スケジュール帳、「予定と振り返り」です。今月に見たい展示を挙げてみました。

展覧会

「救いのほとけ 観音と地蔵の美術」 町田市立国際版画美術館(~11/23)
「国宝 源氏物語絵巻」 五島美術館(~11/28)
「ファンタスマ ケイト・ロードの標本室」 東京大学総合研究博物館小石川分館(11/6~12/5)
「ブラティスラヴァ世界絵本原画展とチェコの人形劇」 千葉市美術館(~12/5)
「アンドリュー・ワイエス展」 埼玉県立近代美術館(~12/12)
「バウハウス・テイスト バウハウス・キッチン展」 パナソニック電工汐留ミュージアム(~12/12)
「幕末・明治の超絶技巧 世界を驚嘆させた金属工芸」 泉屋博古館分館(~12/12)
「開窯300年 マイセン 西洋磁器の誕生」 大倉集古館(~12/19)
「歌麿・写楽の仕掛け人 その名は蔦屋重三郎」 サントリー美術館(~12/19)
「麻生三郎展」 東京国立近代美術館(11/9~12/19)
「セーヌの流れに沿ってー印象派と日本人画家たちの旅」 ブリヂストン美術館(~12/23)
「茶陶の道―天目と呉州赤絵展」 出光美術館(11/13~12/23)
 #注:「国宝油滴天目茶碗」の出品期間は11/13~12/5限定。
「ラファエル前派からウィリアム・モリスへ」 横須賀美術館(10/30~12/26)
「日本美術院の画家たち」 山種美術館(11/13~12/26)
「福沢一郎絵画研究所 進め!日本のシュルレアリスム」 板橋区立美術館(11/20~2011/1/10)
 #講演会:「なぜ福沢一郎はこんなにも若者たちを惹きつけたのだろう」 大谷省吾(東京国立近代美術館主任研究員)11/28 14:00~
「アルブレヒト・デューラー 版画・素描展」 国立西洋美術館(~2011/1/16)
 #講演会:「デューラーの版画芸術―様式的展開」 越宏一(東京藝術大学名誉教授) 11/28 14:00~
「オランダのアート&デザイン新言語/東京アートミーティング トランスフォーメーション」 東京都現代美術館 (~2011/1/30)
 #トーク:「アピチャッポン・ウィーラセタクン アーティスト・トーク」 11/19 19:00~ 予約制。無料。
「カンディンスキーと青騎士展」 三菱一号館美術館(11/23~2011/2/6)

ギャラリー

「岩田俊彦 ラディウムーレントゲンヴェルケ(~11/20)
「村瀬恭子」 タカ・イシイギャラリー(~11/20)
「松山賢 - からっぽの偽物」 Galerie Sho Contemporary Art(~11/27)
「泉太郎 こねる」 神奈川県民ホールギャラリー(11/2~11/27)
「シェル美術賞 2010」 代官山ヒルサイドフォーラム(11/20~11/28)
「三瀬夏之介 だから僕はこの一瞬を永遠のものにしてみせる」 第一生命南ギャラリー(~11/30)
「ヤノベケンジ レヴィテイション」 山本現代(11/6~12/4)
「素晴らしき哉、人生。by 大畑伸太郎、片山大輔、高あみ」 YUKARI ART CONTEMPORARY(11/18~12/11)
「αM2010『複合回路』青山悟」 gallery αM(11/13~12/18)
「池田亮司」 ギャラリー小柳(11/11~12/25)
「伊庭靖子」 MA2Gallery(11/20~2011/1/16)

コンサート

未定



上野の注目すべき二つの版画展が始まりました。西美デューラー展と芸大美の黙示録展です。実は既に「黙示録」は拝見してきましたが、内容は西美の展示と相互に関連しています。そちらも早めに出かけたいです。



前々から楽しみにしていた展覧会が今月下旬より始まります。それが三菱一号館美術館で開催される「カンディンスキーと青騎士展」です。カンディンスキーについてはこれまでも回顧展などに接したことがありますが、公式サイトによれば青騎士についての展覧会は本邦初なのだそうです。またご当地ミュンヘンの美術館よりの出品も多いとのことでした。これは期待出来そうです。



MOTでも現代アート展がはじまりましたが、東大博物館の小石川分館でも興味深い企画が予定されています。「ファンタスマ ケイト・ロードの標本室展」は、オーストラリアの現代美術家、ケイト・ロードの作品を同博物館の「驚異の部屋」に引込むという異色の内容です。大きな話題となるやもしれません。



三瀬夏之介の個展で都内二会場(イムラアートギャラリーと第一生命ギャラリー)で開催中です。第一生命ギャラリーのオープン時間は平日の午後のみとかなり厳しいところですが、なんとかこちらも拝見出来ればと思います。



常磐線沿線で二つのアートイベントが開催されることをご存知でしょうか。

「わくわくJOBAN-KASHIWAプロジェクト」 11/3~28
「松戸アートラインプロジェクト2010」 11/20~12/19

また松戸のイベントに関しては展示の他、北川フラム氏のシンポジウムなども予定されています。こちらもあわせて出かけたいです。



TOKYO ART BEATの最新号(2010年11-12月号)冊子のツイッター特集(Twitter的アートライフ。)に、私の拙いつぶやきを拾っていただきました。私のアカウントはともかくも、そちらでも紹介されているTABの他、リストも大変に重宝します。是非フォローしてみてください。

@TokyoArtBeat_JP
TokyoArtBeat_JPのリスト



それでは今月も宜しくお願いします。
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「三瀬夏之介展 ぼくの神さま」 イムラアートギャラリー東京

イムラアートギャラリー東京新宿区西五軒町3-7 ミナト第三ビル4階)
「五島記念文化賞美術新人賞研修帰国記念 三瀬夏之介展 ぼくの神さま」
10/29-12/11



イムラアートギャラリー東京のこけら落とし展、「三瀬夏之介 ぼくの神さま」へ行ってきました。

本展の概要、及び作家プロフィールについては同画廊WEBサイトをご覧ください。

三瀬夏之介展「ぼくの神さま」/作家略歴@イムラアートギャラリー

なお三瀬さんはご自身でWEBサイトツイッターアカウントもお持ちです。


「ぼくの神さま」(一部)2010年

さて同ギャラリーの新スペースを飾るのは、古今東西の神々の響宴する横10メートルにも及ぶ大作、「ぼくの神さま」です。三瀬自身がネット上の他、様々な媒体から収集したという神と呼ばれる多様なアイコンが、宇宙ともまたうねる大山脈とも、さらには彼岸の地ともとれる空間にあまねく存在するかのように描かれていました。


「ぼくの神さま」(一部)2010年

しかしながら、そうした神は決して何か敢然と光り輝くキリストの肖像画のように目立っているわけではありません。半ばカオスの中に殆ど埋没するかのようにうっすらと浮かび上がっています。これは三瀬の言う「大きな存在を信じたいけどどんなものはどこにもない。」の故なのでしょうか。それこそ亡霊のようにすぐ消えてゆくかのようでした。


「ぼくの神さま」(一部)2010年

しかし興味深いのは、その一部に東北、とりわけ山形の神が召喚されていることです。画面一番右の暗がりには、珍しい信仰の形式で知られるムサカリ絵馬のモチーフが描かれていました。三瀬は2009年に奈良から山形へと制作の拠点を移しましたが、そこから生じた変化の一つの表れと言えるのかもしれません。


「ぼくの神さま」(一部)2010年

ちょうど展示室の角にあたる金色の空間には驚かされました。そこには巨大な目がいくつも登場しています。冒頭の無を思わせる白から一転してのSF的な宇宙、そしてこの金の目と続く空間の連なりもまたダイナミックでした。その画中世界にのめり込んでいるといつしか神に見られていることに気がつきます。簡単に画の中に入り込むことは許されません。



なお本展にあわせて、本日から有楽町の第一生命ギャラリーでも個展がはじまりました。こちらも是非拝見したいものです。

「三瀬夏之介展」-だから僕はこの一瞬を永遠のものにしてみせる-@第一生命ギャラリー 11月1日(月)~11月30日(火)
 注)開館時間:12:00~18:00、休館日:土・日・祝日

羽鳥書店より待望の作品集が出ました。図版の美しさはもちろん、力の入ったテキストで読み物としても非常に充実しています。是非書店でご覧ください。

「冬の夏/三瀬夏之介/羽鳥書店」

12月11日まで開催されています。まずはおすすめします。

*関連エントリ(今年4月に行われた三瀬夏之介、鴻崎正武、赤坂憲雄各氏の対談)
「東北画は可能か?其の一」トークイベント アートスペース羅針盤
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