見てきました。
旧作のベルばらはあまり内容を覚えていなかったので新鮮な気持ちで見ることができました。吉田愛監督ということでミュージカル風の作風となりましたが、歌とイメージが挿入されるに止まり、人物たちが歌に合わせてダンスをするという形ではなかったので、あくまで物語のイメージを浮かび上がらせる装置という印象でした。旧作のイメージに囚われず、マリーアントワネットを中心とした煌びやかな世界のディテールが劇場作品という説得力を作っていたような気がします。中でもミュージカル的なイメージ空間ではキャラクターが存在する窓から窓への受け渡しなど、漫画のコマの考え方の延長からコマを越境するようなイメージが続き、また情報量に圧倒されました。演出的なアイディアだけでなく作画とCGの合わせや色彩、撮影など各セクションが浮くような形でなく、一体となって迫ってきて、画面の総合力の高さが感じられました。
構成としては前半がマリーアントワネット、後半がオスカルに焦点を当てているように思えたかな。前半が煌びやかに画面を彩る派手なシーンが多数見られますが、後半はそうしたシーンがあまりなく、制作上の都合なのかもしれませんが、マリー/オスカルで分かるならある程度納得のいく見せ方だったのかなという風に思えました。
沢城みゆきのオスカルは説得力が感じられて、現代のオスカルとして受け入れやすい感じだったかな。オスカルの死について、旧作は物悲しい気がしていました。オスカルの死が悲しい出来事を呼び込んだような印象もあったので。ただ今作はオスカルが男として育てられてその生涯を全うしたことを革命の成功と絡めて見せていて、そこに意味があったことを印象付けられている気がしました。多くの兵士たちがなぜオスカルについていくのか、なぜオスカルが肯定される存在なのか、というその意義を主張する感じが現在に本作を蘇らせる意味を感じさせてくれました。
オスカルの心情については丁寧に描写されている気がしていましたが、飛躍を感じたのはアンドレと一夜を共にする辺り。なんだろう、オスカルがアンドレに女性性を見せるための描写というのがやや不足していたように感じたんですよね。最終的には納得させられるんですが、人を導くカリスマ性、ある種の王としての振る舞いからのギャップも強く、自分が何か見落としていたのかもかなと思いつつも、ちょっと引っかかったシーンだったかな。
全体的に楽しんで見ることができたので、吉田愛監督の次回作も楽しみです。
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