映画「ハマのドン」を観た。
俺は自民党員だと藤木幸夫は言う。戦前の日本はどんどんおかしくなっていった。俺は子供心にそう感じたことを憶えている。そして今、あの頃と同じようにおかしくなっている。そんな風に感じられてならない。91歳。感性は少しも衰えていない。
主権在民と彼は言う。それがおかしくなっているということは、主権が別のところに移りつつあるということだ。つまり自民党の幹部がおかしくなっているということだ。それは日本の政治がおかしくなっているということに等しい。
何か変だと感じるのは大変重要なことだ。ゲーテは「直感は過たない。誤るのは判断の方だ」と書いている。ショーペンハウエルは「第一印象が最も正しい」と書いている。ドイツの知の巨人たちの言葉には真実がある。藤木幸夫の直感と印象は的を射ているのだろう。
自分の直感と第一印象をどれだけ信じられるかで、その人間の人間力が違ってくる。ころころと判断を変える人は信用されない。所謂ブレる人だ。藤木幸夫のブレのなさは問答無用で自分を信じることに由来する。厄介な人だが、信頼できる人でもある。
昔の人らしく、凝り固まったパターナリズムはあるが、藤木幸夫には感謝の気持ちがある。そこがアベシンゾーなどとは違うところだ。感謝を忘れた為政者は、最後は総スカンを食らって退場するだけだ。アベシンゾーの最期は、まさに因果応報である。ただ、勝手に退場するだけならいいが、戦前のように国をとんでもない方向に連れて行ってもらったら困る。藤木幸夫が危惧している通りだ。
自民党員でも腐っていない人間もいるのだということがわかってよかった。テレビ朝日にも意地がある人がいることも、わかってよかった。