「2ちゃんねる」という掲示板を知ったのは、小谷野敦の『すばらしき愚民社会』によってであった。今から5年位前のことである。そこで子供っぽいのをからかうのに、「厨房」というレッテル貼りをするのが面白かった。「中学生の坊や」を縮めた言い方で、誤変換が隠語となったのである。その2ちゃんねるの元管理人が、麻薬特例法幇助の疑いで警察の事情聴取を受けた。覚せい剤購入を勧める書き込みを削除しなかったために、昨年11月から警察が乗り出してきたのだ。ここぞとばかり、テレビや新聞が書き立てている。「2ちゃんねる」を始めとするネット言論は、福島第一原発の事故について真実を暴こうとした。おかげで被曝を免れた人もいたのである。自分の意見を述べるのが下手な日本人が、実名を知られずに議論をする場をつくったというのは、それなりに意義があったと思う。一言書き込んで、とんずらも可能なのである。口角泡を飛ばすのではなく、少しばかりちょっかいを出すのであれば、エネルギーも消耗しないし、他人から恨まれない。しかし、その一方では、真面目さに欠けるというので、眉をひそめる人たちもいる。法に触れる書き込みは、厳しく罰せられるべきだろうが、イソップ寓話で「王様の耳はロバの耳」と井戸の奥に向かって、床屋が叫んでしまったように、人の口に戸は立てられないのであり、国家権力の乱用だけは慎むべきだろう。
←これからはネット言論が試されるときだと思う方はクリックを