もう心静かに、写経しているのを、失礼してカシャッとした。ちょっと早めに着席をした。前回のものを見たり、今日の願い文はと、考えているうちに、満席になった。今月も、はじめての方もおられる。法話は、山岳信仰の地、奈良の大峰山で、五、六時間かかる、おやまかけの修行を済ませてきたと。昔からの言い伝えに、このおやまかけの修行の行者が、ぶつぶつとも、人の悪口を言っていたのを聞いた高僧が、一喝して、向かいの山へ、行者を、吹き飛ばしたと。悪口は、言うべきでない。人は、それぞれ自分の考えを持っている。他人様のことは、他人様のことなので、悪口はしないようにと。日頃の行いのことの、法話だった。もし、なにか、いやな気持をしているならば、いやな気持は、この写経場に置いていって下さいとの、法話の〆だった。
ひと月ぶりの写経。つゆの晴れ間で、木々のみどりが、眩しい。境内は、家族ずれが、四、五組。男女二人ずれも、数組。ちょっと年配の男性が、本堂を見上げ、白い犬を連れた人も、参拝していた。白い犬は、おおはしゃぎして、人を追い、走り回ってる、にぎやかな境内だった。梵鐘を打ち慣らす音が強く、ごおぉぉぉぉぉ--んと。遠慮気味に静かに、ごぉぉ-んと、新緑の木々の葉を伝わって、響いていた。梵鐘の音の余韻は、日頃の煩悩を、包み込んで、打ち消して、くれるのかも。