見もの・読みもの日記

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意外と真面目/へんな仏像(本田不二雄)

2013-06-05 23:25:14 | 読んだもの(書籍)
○本田不二雄『へんな仏像』 学研パブリッシング 2012.9

 表紙は黄金の天狗のような異形の顔面。これ、仏像じゃないだろ、と思ったが、「由来も形も不思議な神仏たちの大図鑑!」とあって、タイトルの「へんな仏像」は「へんな仏像・神像」を短縮させたものらしい。表紙(カバー)の裏から表まで、マントラのごとく埋め尽くす煽り文句の数々。

 本編の文章は、全て黒地に白の活字。そして「オールカラー総天然色」の言葉どおり、カラー写真満載。またその写真が、陰影を強調した、おどろおどろしい編集なのだ。これ、絶対本物を見たら、こんな印象じゃないだろう、というのが(経験的に)分かる。表紙の大杉大明神(茨城県稲敷市)でさえ、本編で見ると、もう少しフツーの木彫面である。

 アートディレクションは場末の歓楽街ふうにキッチュだが、よく読むと、仏像・神像の選択は意外に手堅く、解説も淡々としている。藤里毘沙門天(岩手県)や成島毘沙門天(岩手県)など、正統派に評価の高い仏像も載っており、岡本太郎が絶賛した万治の石仏も。先日、千葉市美術館の『仏像半島』展で見た真野寺の覆面観音が掲載されているのを見て、私は本書の購入を決めた。

 ほかに収載の神像・仏像で、私が見たことがあるのは、上野大仏(台東区)、獏王像(目黒区・五百羅漢寺)、千手千足観音(長浜市・正妙寺)。田光り観音(足立区・西光寺)は『足立の仏像』展で見たかな。お寺の名前を見ると「行ったことがある」のだが、仏像・神像に記憶がないものも多かった。鎌倉・光触寺の愛敬稲荷、青梅市・塩船観音寺のおしらさま、奈良・朝護孫子寺の二十八使者など。

 逆に自信をもって「未見」で、これは見たい!と思ったのは、加古川・教信寺の教信像。頭部のみが、瑞雲たなびく蓮華座に載っているという異形像である。悪夢にうなされそうだが見たい。あと、智恵光院の六臂地蔵、矢田寺の矢田地蔵(見てるだろうか?)、来迎院の勝軍地蔵。以上、全て京都市内である。地蔵菩薩って、基本がシンプルな優等生の造形だけに、異形風味が加わるとぞくぞくする。

 東京都内の珍しい仏像・神像もずいぶん紹介されていて、目を見張った。豊島区妙行寺の於岩稲荷の愛らしいこと(四谷のお岩稲荷とは別)。板橋区・安養院の摩訶迦羅天、見てみたい。品川区・安養院の紅頗梨色阿弥陀如来(ぐはりじきあみだにょらい)も。こんな美しい仏像が都内にあるとは知らなかった。いや、少し写真にだまされているかも。

 約60件のうち、1件だけ北海道の仏像があったのだが、今も髪が伸び続ける植髪鬼子母神って、これは怖すぎて見に行けない。
コメント (1)
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