見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

美しい暮らしのお手伝い/民藝の日本(日本橋高島屋)

2017-09-12 23:02:39 | 行ったもの(美術館・見仏)
タカシマヤ 日本橋店8階ホール 日本民藝館創設80周年記念『民藝の日本-柳宗悦と「手仕事の日本」を旅する』(2017年8月30日~9月11日)

 日本民藝館には何度も行っているので、新鮮味はないかな?と思いながら、寄り道してみた。展示品は見覚えのあるものが多かったが、飾り方が違うと、ずいぶん違った印象を持った。ひときわ目を引いていたのは、芹沢銈介による『日本民藝地図(現在之日本民藝)』(1941年)である。東北・関東(東日本)、中部・近畿(中日本)、中国・四国以南沖縄まで(西日本)が、四曲・六曲・四曲の屏風に仕立てられた巨大な色絵図だ。私は日本民藝館の展示で、一度だけ見たことがある。地産の民芸品マークが多い県と少ない県の差が激しいので「山形多いなあ」「千葉は少ないねえ」などの会話が聞こえた。私も初めて見たときは、同じことを思ったものだ。

 同じ展示室内には、地図に記載の民芸の現物、わっぱや刺し子や塗り物、陶磁器などが並んでいる。地図と同じ1930~40年代に採集された品が多い。比較的新しいものなので、展示ケースには収めず、露出展示である。デパートという環境、清潔な白い展示台と相まって、新品然として見える。着物や足袋、蓑や藁沓もあったが、実にきれいに保存されていることに、あらためて感心した。

 そのほか(さすがにケースに入っていたが)朝鮮陶磁の『染付秋草文面取壺』や伝・申師任堂(シンサイムダン)筆『草虫図』などの名品も見ることができて嬉しかった。五色の塗分盆とか螺鈿丸散らし菓子箱も私の好きな品。大津絵、泥絵、三春人形に鴻巣人形も来ていた。

 逆に、これは記憶にないと思ったものもいくつかある。木喰仏は、よく見る地蔵菩薩かなと思ったら、十一面千手観音だった。頭部は頭上面で膨れ上がってアフロヘアのようになっている。樹上面脇手があまり目立たないので、よく見ないと千手観音だと気づかない。大型本『木喰上人木彫仏』は、西洋の古書かと思ったら、背表紙は革装だが表紙には絣の布が使われていた。柳の著書。沖縄の型染による『山に草花文小襖』は、旧柳邸の小襖とのこと。

 最後に日本各地の民藝館地図があったのも興味深かった。私はなまけもので東京の日本民藝館しか行ったことがないのだが、倉敷、鳥取、松本、熊本、富山、大阪、出雲、豊田市、富山市にあるようだ。今度、少しずつ訪ねてみることを心がけよう。

 会場を出て、もうひとつ気になるパネルがあった。民藝運動と高島屋の長い関わりを紹介するもので「高島屋は、民芸運動の当初から彼らに共感し、民芸の普及を応援してきました」「各地の民芸展や、民芸に美を見いだす作家の展覧会など高島屋と民芸の関わりは100年近くにものぼります」という。へえ、知らなかった。最後は「これからも高島屋は、『美しい暮らしのお手伝い』の観点から誠実に作られた民芸の器や道具をご紹介していきたいと考えています」と控えめに誇らしげで、とてもいい。こういう企業、次の100年もなくならないでほしい。

※全国の高島屋に巡回予定:公式サイト
各地の民芸品の展示即売もあり。
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