見もの・読みもの日記

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2017京の夏の旅・花山天文台を訪ねる

2017-09-03 22:42:44 | 行ったもの(美術館・見仏)
恒例「京の夏の旅」(2017年7月8日~9月30日)による文化財特別公開。最近、新鮮味に欠けるなあと思っていたら、今年は予想もしていなかった新鮮な文化財の公開が加わった。昭和4年(1929)設立の京都大学仮花山天文台(かざんてんもんだい)である。日本の大学天文台としては、麻布狸穴にあった帝国大学東京天文台に次いで古い。

花山天文台は東山連峰の山の中にあるが、期間中は地下鉄東西線東山駅から45分間隔で無料シャトルバスが出ている。乗り場表示はなく「東山駅1番出口前より出発」という案内だったので、行ってみると、バスを待つ雰囲気の人の姿がチラホラあった。定員27名のマイクロバスで満員の場合は乗車できません、という断り書きがあったので心配していたのだが、これなら余裕、と安心する。バスが到着すると、少し奥まった日陰の空き地で待っている人がいたことが分かって慌てたが、なんとか乗車できた。

バスは蹴上を経由して東山ドライブウェイへ。途中、大きな寺院のような建物が見えたのは、阿含宗の施設らしかった。10分ほどで森の中のロータリーのようなところでバスを下りる(ここまでグーグルMAPのストリートビューあり)。シャトルバスの運転手さんは運転だけが任務らしく、特にガイドはしてくれない。まわりを見回すと「花山天文台特別公開」の看板が出ていたので、この道だろうと思って森の中へ入っていく。



石の大きな砂利道で、あまり歩きやすくはないが、平坦である。しばらく行くと右に旧漢字で「京都大學(角書き)花山天文臺」の文字を刻んだ石の門柱。左の門柱には「京都大学大学院理学研究科」(文字が新しい)とある。門柱だけで扉はなかった。



しばらく歩くと天文台の関係施設らしい建物があったが、ここは素通りして道なりに進む。と、突然、木立の中から本館(望遠鏡)の入口が現れる。白亜というより、少しクリーム色がかった、温かみのある外観。建物の中から「ようこそ。靴を脱いでお入りください」と受付の方が声をかけてくれる。



そして階段を上がって3階の観測室へ。羽目板を並べた木製のドーム天井は、白っぽい明るい色に塗られていた。私は、三鷹の国立天文台でも木製のドーム天井を持つ観測施設に入ったことがあるのだが、あそこは渋い焦茶色の板だった記憶があり、ずいぶん雰囲気が違うものだなと思った。



創建当時は口径30センチの望遠鏡だったが、現在は45センチの屈折望遠鏡が設置されている。円盤を重ねたようなものが下がっているのは重り。この上に紐付きの分銅のようなものが乗っているが、これを垂らすと、バランスに変化が生じて、重たい望遠鏡の方向を徐々に変えることができる。ドーム天井の開口部の方向を変える制御も、同様にかつては重りだけで行っていたそうだ。



3階の観測室を取り囲む展望台から。四角い建物は歴史館。小さなドームは太陽観測を行っている別館(望遠鏡)。その後ろが京都方面に当たるが、街の灯りは、ちょうど隣の峰がさえぎってくれるので邪魔にならない。左前方に開けているのは山科で、むかしは田んぼばかりだったが、近年、すっかり都市化してしまったとのこと。



歴史館には、古い観測器具などが展示されていた。これは子午儀と精密時計。



これは太陽分光写真儀(だったと思う)。



本館と歴史館には、それぞれ天文通のおじさんがいて、ガイドをしてくれた。花山天文台は早くから一般公開されており、関西のアマチュア天文ファンにとっては聖地みたいなもの、という話が印象的だった。第3代台長・宮本正太郎氏(1912-1992)の人となりについての話も面白く、アポロ11号計画に月面観測のデータなどを提供した功績により、記念の皿を贈られたが、それを灰皿として愛用していたとか。「NASAから、ほんまおおきに、ちゅうて絵皿を贈られましてな」と、ここではNASAの人も関西弁になるのが楽しかった。

なお、今回の特別公開の背景には「施設の老朽化や大学の財政難などを理由に廃止が検討されている」という厳しい現実があるようだ。うーむ、なんとかならないかなあ。

京大花山天文台ピンチ! 存続へ「宇宙科学館」構想を提案 元総長ら有志、スポンサー集めや寄付金呼びかけ(産経WEST 2016/11/5)

京都 花山天文台の将来を考える会
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