見もの・読みもの日記

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南蘋派もいろいろ/江戸の花鳥画(板橋区立美術館)

2017-09-24 22:41:07 | 行ったもの(美術館・見仏)
板橋区立美術館 館蔵品展『江戸の花鳥画-狩野派から民間画壇まで-』(2017年9月2日~10月9日)

 このところ、行きっぱなしでレポートを書いていない展覧会がかなりある。なかなか時間が取れないためだが、頑張って書く。この展覧会は先週、東日本を台風が取り過ぎようとする直前に行った。不穏な天候のせいか、お客さんが極端に少なかったが、いい展覧会なので、行かないなんてもったいない。なんと無料だし!

 展示室は2室あって、どちらから見てもいいのだが、順路のとおり第1室「狩野派の花鳥画」から見るのがおすすめである。はじめは狩野宗信の『花鳥図押絵貼屏風』。宗信(?-1545、祐雪とも)は狩野元信の長男である。六曲一双屏風で、室町水墨画ふうの花鳥画が12枚、貼り付けられている。どれも可愛いが、竹にミミズク、牡丹にジャコウネコ(たぶん)が私のお気に入り。常信の『四季花鳥図屏風』は、墨画に金砂子散らしの大画面。木々の微かな緑と鳥にだけ彩色が施されていて、幻想的でオシャレ度が高い。

 少し時代が下って、狩野惟信(養川院)の『四季花鳥図屏風』は、右隻の春景も、左隻の秋景も、童画のようにちんまりまとまっている。明るく上品で、高級和菓子の包装紙みたいだが、嫌いじゃない。右隻の主役は、桜の木の下のキジだが、隅の梅の木に鳩がいて、徽宗の『桃鳩図』を思い出していた。描かれた鳥の種類の解説が添えられていたが、ヤマガラとかオオルリとか見たことないなあ。シロガシラは名前も知らなかった。

 第2室は「民間画壇の花鳥画」で、やっぱりこっちのほうが格段に面白い。いきなり諸葛監(1717-1790)の『白梅ニ鳥図』『罌粟ニ鶏図』に魅了されて動けなくなる。南蘋派というか、少し若冲を思わせる画風である(※どこかで聞いた名前だと思ったら、5年前の展覧会『我ら明清親衛隊』でもチェックしていた)。本名は清水又四郎、日本人である。

※『罌粟ニ鶏図』(部分):写真は撮り放題。


 黒川亀玉(二代)の『松ニ唐鳥図』は、嘴や首筋の羽毛が赤い、エキゾチックなインコを描く。宋紫山の『鯉図』は目つきが悪く、ぬらぬらしたウロコの輝きも怪しげで化けて出そう。北山寒厳の『花鳥図』は明清の新しい墨画を思わせる。墨の濃淡がリズミカルで、鳥の表情やポーズにも生命感がある。このひと、本名は馬孟煕と云い、明人の末で、父の馬道良は「浅草橋明神の宮司」だったと私はメモしてきたのだが、調べても「浅草橋明神」が分からない。書き取るときに間違ったのか、気になっている。それにしてもヴァン・ダイクにかけて凡泥亀と号したとか、田能村竹田が「長生きしたなら谷文晁と名声を二分したであろう」と評したとか、いろいろ気になる画家である。

 椿椿山の『君子長命図』は、竹と蝶と猫を描いて「君子」「長」「命」を表したというのだが、「猫(ミョウ)」が「命(ミョウ)」というのがよく分からない。椿山の独創か、中国にもある見立てなのだろうか。ほかにも酒井抱一、鈴木其一、長谷川雪旦、柴田是真などの花鳥画が出ていた。同館のファンにはおなじみの工夫だが、公式の作品名とは別に、親しみやすいタイトルが添えられているのが楽しい。岡田閑林『花鳥図押絵貼屏風』の「鳥のフレンズが大集合」には笑ってしまった。展覧会ごとに考えるのかなあ。

 そういえば最近、「永遠の穴場」という自虐ネタPRが秀逸ということで評判になっていた。長年のファンとしては、このまま「永遠の穴場」であり続けてほしいと本気で思っている。でも近所にコンビニ(2軒も)ができたときは、正直、嬉しかった。


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