見もの・読みもの日記

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神々と王者の姿/古代エジプト展(江戸東京博物館)

2021-03-17 21:07:00 | 行ったもの(美術館・見仏)

江戸東京博物館 特別展『国立ベルリン・エジプト博物館所蔵 古代エジプト展 天地創造の神話』(2020年11月21日〜2021年4月4日)

 ベルリン国立博物館のエジプト・コレクションから「天地創造の神話」をテーマに約130点の名品を展示する。ベルリン国立博物館群は、大英博物館、ルーヴル美術館などと並ぶ、ヨーロッパ最大級の規模と質の高さを誇る総合博物館で、なかでもエジプト部門は、アマルナ時代の優品を筆頭に数千年にわたるエジプト史を網羅する世界有数のエジプト・コレクションを誇るのだという。

 私はエジプト史やエジプト文化には全く詳しくないので、ぼんやりした気持ちで見に行った。会場前の大型モニタでは、犬頭人身の冥界の神アヌビスが「天地創造の神話」を紹介する短編アニメが放映されていた。世界の始まりは混沌とした原初の海「ヌン」で、やがて(途中省略して)大地の神ゲブと天空の女神ヌトが誕生する。これだけ聞くと、妙に日本神話に似ている。日本人に親しみを持ってもらおうという意図なのか、会場内のパネルにも「八百万(やおよろず)の神々」という表現が使われていた。確かに、会場にはさまざまな神々の像が展示されていた。獅子頭の女神、有翼の女神、山犬の姿やマングースの姿の神など。

 いま、記事を書きながら「アマルナ時代」という言葉にひっかかったので、調べたら、古代エジプト第18王朝の後半、アメンホテプ4世治世(紀元前1400-1300年頃)の歴史的・美術史的呼称だという。中国だと殷代にあたる。Wikiの「アマルナ時代」の記述を読むとおもしろい。アメンホテプ4世以前には、テーベのアメン神を祭る神官団が、ファラオにまさる強大な権力を有してた。アメンホテプ4世は、太陽神アテンをエジプトの神とする宗教改革を行い、神官団の影響から離れた。 この宗教改革によって、壁画や彫像、神殿建築、また文学においては文語体から口語体へと、伝統を否定する種々の試行錯誤が多岐にわたって行われ、写実や自然主義の傾向が強まった。

 確かにそうだ。会場に並ぶ大小さまざまな神像や王の肖像彫刻を見て、最初に感じたのは写実への強い志向である。たとえ頭部は獅子やハヤブサであっても、身体は、写実の範囲で理想を表現したものが多い。人目を驚かすような、わけの分からない造型がないことに感心していたのだが、エジプト美術全般ではなく、時代的な特徴なのかもしれない。あとのほうで、末期王朝時代のベス神という、短躯肥満で醜怪な神の像を見たときは、ちょっとほっとした。

 エジプトといえばミイラ、ということで、ミイラの棺も多数来ていた。人体にあわせた形で、美しい彩色文様で飾られたものが多い。鳥の姿や鳥の羽根模様を描いたものが目立つように感じたのは信仰と関係があるだろうか。それから、よく見ると、文様だと思っていたものの一部が、ヒエログリフ(古代エジプト文字)であることに気づいた。耳なし芳一ではないが、棺の表面がびっしり文字で覆われているものもある。これが私にも文字として読めたら、古代エジプト文化の印象がずいぶん変わるのではないかな、と思った。

 なお、なぜか現在『ライデン国立古代博物館所蔵 古代エジプト展』も全国巡回中らしい。4月に東京に巡回してきたら見に行こう。

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