○コリン・トレボロウ監督『ジュラシック・ワールド新たなる支配者』(TOHOシネマズ日本橋)
話題作をさっそく見てきた。設定は、前作『炎の王国』から4年後。ロックウッド邸を抜け出した恐竜たちは、世界中に生息地を広げてしまった。バイオ企業のバイオシン社は、イタリアの山中に恐竜たちのサンクチュアリを設置し、保護と研究を進めていた。
オーウェンとクレアは、カリフォルニア山中の山小屋にクローン少女であるメイジーをかくまって暮らしていた。森の奥には、ヴェロキラプトルのブルーと、ブルーが単性生殖で産んだベータが住んでいた。ある日、メイジーとベータは、ともに密猟者に拉致され、地中海のマルタ島を経て、バイオシン・サンクチュアリへ連れていかれる。オーウェンとクレアは、運び屋のケイラの操縦する飛行機でこれを追った。
同じ頃、アメリカ中西部では、巨大イナゴの大群に穀物畑が食い荒らされる被害が多発していた。しかし、なぜかバイオシン社の品種だけは被害を受けない。疑念を抱いた古植物学者のエリー・サトラーは、旧知の古生物学者アラン・グラントに協力を求める。二人は、バイオシン社に在籍するマルコム博士の仲介を得て、サンクチュアリ地下の研究施設に潜入する。
そして、二組の潜入者は、それぞれ目的を達するものの、サンクチュアリに大火災と大混乱を引き起こし、恐竜たちが大暴れする事態になる(お約束)。バイオシン社のCEOドジスンは、自分の利益だけを確保して逃亡しようとするが、恐竜に阻まれる(お約束)。
メイジーは、バイオシン社で出会ったウー博士から、早世した母親シャーロットの話を聞く。シャーロットは優れた遺伝学者で、自分の遺伝病を修正したクローンであるメイジーをこの世に残した。巨大イナゴの災厄を創り出してしまったウー博士は、その誤りを修正するために力を貸してほしいと懇願し、メイジーはこれを受け入れる。ウー博士は、オーウェンらとともにサンクチュアリから退避。そして、悪人たちは一掃され、人類と恐竜が本格的に「共存」する世界が到来した。まあ、めでたしめでたしと言ってよいのか、ひとまず調和的な終わり方だった。
私は、1993年の『ジュラシック・パーク』第1作を劇場で見た世代である。そんなに好きな映画ではなかったはずだが、繰り返しテレビ放映を見るうちに、このシリーズのファンになってしまった。今でもどちらかといえば『パーク』シリーズのほうが好きなので、本作に『パーク』のサトラー博士とグラント博士が登場したのはとても嬉しかった。当たり前だが、二人ともきちんと年を取っていた。第1作では、けっこういい雰囲気になった二人だが、その後は別々の人生を歩んできて、30年ぶりに再会という設定がまたよい。第1作では活躍の場が少なくて、なんのためのキャラクターか分からないという批判もあったマルコム博士が、ファンに愛され続けているのも面白い。
しかし最終回答は、人類と恐竜の「共存」かあ…。第1作の恐竜は、完全に人智を超えた存在、善悪の彼岸の怪物(モンスター)で、人間が安全を保つには「住むところを分ける」以外の解決策はなかった。それが『ワールド』では調教可能になり、人間くさい表情を見せ、視聴者の感情移入を許すようになる。生臭い血の匂いのする恐怖シーンはすっかり減り、派手なアクション、高度なSFXを安心して楽しめる作品になってしまった。夢物語の「共存」で美しく幕を引くのは、いまの時代に人々が求めるものの反映かなと思った。私はもう一回、第1作が見たくなった。