■當麻寺(当麻寺)(奈良県葛城市)
お盆旅行3日は月曜日で、多くの美術館や博物館が休みのため、寺めぐりに当てることにした。前日に奈良博で『中将姫と當麻曼荼羅』を見たご縁で、久しぶりに当麻寺を訪ねた。境内には何組か拝観客の姿があった。本堂で當麻曼荼羅(文亀本、室町時代)を拝観。色鮮やかな貞享本に比べれば、全体に茶色くくすんだ色合いだが、何が描かれているかは分かる。
金堂と講堂は無人で、案内の音声がエンドレスで流れていた(以前より管理が緩くなったかも)。金堂は、たいへん古い塑造の弥勒菩薩坐像を囲む四天王立像(3躯は飛鳥時代、多聞天のみ鎌倉時代)がやっぱりよい。飛鳥時代の仏像が、博物館のガラスケースの中でなく、自然な空気の中にいらっしゃるのがとても尊い。講堂は広々した空間で、定朝様式の阿弥陀如来坐像を中心に、僧形の妙幢菩薩立像など、平安・鎌倉の古仏が静かに並んでいらっしゃった。中之坊の庭園(香藕園、蘇州庭園みたいな名前だなあ)と霊宝館も拝観させてもらった。
仁王門(東大門)の左右には、世界平和と疫病(コロナ)終息を祈願する巨大な草鞋が片方ずつ立てかけてあった。いつか、こんな年もあったと振り返ることができるようになればよいが。こちらはウクライナカラーの草鞋。
門前のお茶屋さん「茶房ふたかみ」に入り、冷房の効いた店内で氷いちごミルクをいただき、身体を冷やす。前回、2004年7月に参拝したときも猛暑で、門前で氷宇治金時をいただいた記憶があるのだが、同じお店かなあ。
参道の古い家の玄関には、ときどき変わったかたちの注連縄が飾られていた。右向きと左向きがあるのも面白い。調べたら、当麻寺の門前の天満宮(菅原神社)に由来する天神講の注連縄だそうだ(※葛城市のホームページ)。
■聖徳宗総本山 法隆寺(奈良県生駒郡)
続いて、2021年が聖徳太子の千四百年御聖忌記念で盛り上がったものの、なかなか行きにくい法隆寺へ。ネットで検索したら、当麻寺駅→橿原神宮前→近鉄郡山と近鉄線を乗り継ぎ、近鉄郡山駅前から1時間に1本のバスに乗れば、法隆寺前に行けることが分かった。
法隆寺、ブログで探すと2008年5月に拝観したのが最後のようだ。ずいぶんご無沙汰していたのだなあ。まずは西院伽藍へ。五重塔・金堂・大講堂を順番に拝観する。五重塔の塔本塑像が、以前より見やすくなっている気がしたが、光線の加減かもしれない。
西院伽藍の出口で「次は隣の聖霊院にお行きなさい」と声をかけられたので、素直に従う。お堂に上がると須弥壇の奥には、無表情な黒塗の扉の厨子が横一列に並んでいる。小さな参考写真を見て思い出した。この厨子の中には、華やかな蓮池の壁画を背景に、聖徳太子・山背大兄・殖栗王らの像が安置されているのだ。去年、奈良博と東博の『聖徳太子と法隆寺』展で見て、こんな像が法隆寺にあったっけ?と戸惑ったものだ。特別な法要のときを除いては、こんなふうに全く存在を消しているのだな。聖霊院でいただいたご朱印は、むかしと変わらない「以和為貴」の四文字で、お坊さんが「和を以て貴しと為すと読みます」と、ひとりひとりに申し添えていらした。
続いて大宝蔵院へ。ここは前回も来た記憶がある。入ってすぐにいらっしゃる夢違観音菩薩像は、北海道立近代美術館で開催される『国宝・法隆寺展』に出陳のため、翌日8/16から拝観中止になるところだった。お会いできたご縁に感謝し、無事にお帰りくださいませ、とご挨拶申し上げる。あどけない子供のような六観音像、大御輪寺から移されたと伝えられる地蔵菩薩像など、最近の展覧会の記憶を思い出しながら参観した。そして、やっぱり百済観音像は大きくて美しい。
東院伽藍(夢殿)まで足を延ばして感じたのは風景の変化。かつては修学旅行の団体客であふれていた道が閑散としており、露店も全く出ていなかった。個人的には、今の風景のほうが好きだが、お寺さんの経営面では大変だろう。あと、中高生くらいで強制的に古い寺を見に来る体験は、あったほうがいいのではないかなと思う。中宮寺は、本尊・菩薩半跏像(伝如意輪観音)が、すでに北海道に旅立たれているという案内を見たので、今回はパス。雲行きが怪しくなってきたので、あわててバス停に戻り、奈良市内のホテルに戻った。