出発を待っていると反対のホームに別の電車が入ってきた。座っていた人がバタバタと席を立って駆けていく。きっと向こうの列車の方が先に出るのかもしれない。急ぐわけでもないが、それほど皆が行くのならば……。流されるように僕は席を立った。その時、他の人もそのように思ったに違いない。多くの人が終着駅のように降りていく。勢いに押し出されるように僕はホームに運ばれた。それにはとどまらずにホームを越えて新しくやってきた電車の屋根にまで押し上げられたのだった。「うわーっ!」上にまで乗ったのは僕だけだった。なのに、誰も僕の方を見ていない。その時、既に電車は動き始めていた。「あっ、待って! 降ります! 降りまーす!」叫んでも電車は止まらない。宙に浮かぶと闇の中に弧を描き始めた。それはスパイを振り落とそうとする時の仕草だった。「酷いじゃないか! 僕はただ乗りすぎただけだぞ!」
部屋の中では
ずっと雨が降っている
天井に憎たらしい顔が浮かぶ
電気をつけても
窓を開けて空気を入れ換えても
なかなか消えない
目を閉じても
まだその辺に気配を感じる
ずっと雨が降っている
それはあいつの声だ
テレビをつけても
お気に入りの曲を再生しても
それは消えてくれない
「気になるのはその人のことを好きだから……」
おいおい
悪い冗談はやめてくれよ
そりゃそういう場合もあるだろうけどさ
そうじゃない場合の方が多いに決まってんだろ
(思い出したくなんてないんだよ)
・
独りになりたい時
僕は
独りの部屋を飛び出して
フードコートへ
そこにいる
見知らぬ人たちに囲まれて
僕はようやく独りになれる
もう独り怯えることはない
背筋を伸ばして 僕は独りだと言おう
ずっと雨が降っている
天井に憎たらしい顔が浮かぶ
電気をつけても
窓を開けて空気を入れ換えても
なかなか消えない
目を閉じても
まだその辺に気配を感じる
ずっと雨が降っている
それはあいつの声だ
テレビをつけても
お気に入りの曲を再生しても
それは消えてくれない
「気になるのはその人のことを好きだから……」
おいおい
悪い冗談はやめてくれよ
そりゃそういう場合もあるだろうけどさ
そうじゃない場合の方が多いに決まってんだろ
(思い出したくなんてないんだよ)
・
独りになりたい時
僕は
独りの部屋を飛び出して
フードコートへ
そこにいる
見知らぬ人たちに囲まれて
僕はようやく独りになれる
もう独り怯えることはない
背筋を伸ばして 僕は独りだと言おう