眠れない夜の言葉遊び

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、夢小説

カルタ語の戦い

2020-01-14 12:58:00 | 短い話、短い歌
 かるたに憧れた。かるたの形に、絵のついた札に、一文字の拡大に、読み上げられる調べに、伸び行く手先に、荒れる畳に……。かるたの持つ個性に、かるたを囲むすべてに。かるたに憧れた。憧れるままに、かるたの切れ端を拾うように歌っていた。嗚呼。歌っても歌っても、かるたの形にはなれなかった。かるたの形を知っていても、かるたの本質を知ることはなかった。かるたとは何だろう。かるたに憧れた。かるたは謎だった。かるたは遥か遠くに見えた。それを読み上げる声も、きっと遠い星からのものに違いなかった。かるたの一つにはなれなかった。僕は歌った。憧れを秘めながら、歌い続けた。



かのいろは
かるたはダブル
ミーニング
イルカオルカの
詩歌をかけた

(折句「鏡石」短歌)
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不戦敗と硝子細工

2020-01-14 08:27:00 | 夢追い
 敵は長考に沈み、実際困ったような顔をしていた。指されたのは一番ありがたい手で一気に勝勢となり気づくと敵玉が詰んでいた。こんなことってあるのかな。「どう指されても自信がなかったです。例えば……」そうして僕が示す手はどれも冴えない。感想戦では常に聞き手だったが、すべての変化で僕が悪くなる順は現れなかった。おかしなことがあるものだ。次の対戦者はサイトーさんだ。「サイトーさんってあのサイトーさんですか?」受付でたずねるとどうも違う人のようだ。サイトーさんは攻めの棋風でとても勉強熱心な方らしい。年齢は非公開とのことだ。

 外食はどこにも入るスペースがなかった。仕方なく地べたに座り込んでパンを千切り千切り食べた。すぐそばを迷惑そうに通り過ぎる人が後を絶たない。地べたの文化が浸透していないのか。あるいは、僕の地べたセンスがよくなかったのだろうか。(ドア付近の地べたなのが疑問手だったか)露骨に嫌な顔を向けながら、悪口まで言って行く人がいる。それも一般論のような口振りで言うのだ。おかげで夜は人生の本を読んだ。気づくと7時だった。少し仮眠しなくちゃ。

 1時間程眠ったつもりが正午を回っていた。まだ対局に間に合うだろうか。会場に急行して受付でパスポートを提示した。近頃はセキュリティーがいちいち厳しい。空いたスペースではイベントの硝子細工教室が催されていた。なかなかの盛況振りだ。対局会場の方に向かうと外まで熱気があふれていた。「ちょっとすみません」ギャラリーをかき分けて前に進んだ。ボードにトーナメント表が貼られている。途中で棒線で消されているのが僕の名前だ。(やっぱり間に合わなかったか)サイトーさんがずっと上まで勝ち上がっている。そっか。じゃあ硝子細工だ。
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