「あんたまだ店開けてるの? 閉めないと駄目ですよ」
「やってられねえよ」
「ちゃんと閉めなさい」
「開けねえとやってらんねえっすよ」
「あんたのとこだけよ」
「私のとこは秘伝のタレがありますから」
「もうあんたのとこだけですよ」
「継ぎ足し継ぎ足し秘伝を守ってきたんです」
「もう捨てなさい」
「やってらんねえな」
「どうして早く閉めないの」
「私には守るべきものがあるんだい」
「守ったらいいのよ」
「今晩の晩ご飯、今晩のワンちゃんの晩ご飯、今晩のじいちゃんの晩ご飯……。たくさんご飯がいるんだい」
「みんなはどうなってもいいと言うの?」
「みんなのために店を開けなくちゃ」
「それはエゴだね」
「何がエゴだい」
「あんたエゴしかないのね」
「だったらそっちは?」
「言いたいことがあるなら言ってみなさい」
「この町を? この国を? この星を守るの?」
「当たり前でしょ」
「あんたはもっと大きなエゴじゃないの」
「つべこべ言わずにもう閉めなさい!」
「つべこべが聞いてあきれますね」
「つべこべは聞いてませんよ」
「やってらんねえ」
「なにおー」
「ちっくしょー」
「こらこら、君たちまた演劇ごっこやってるのね」
「ごっごじゃないよ」
「はいはい。もうちゃんとお昼寝しましょうね!」
「昨日もしたもん」
「そうね。今日もするの。毎日するのよ」
「先生、明日うちの店閉めるよ」
「そうなのね」
「パパとたくさん遊べるかな」
「いい子にしてたらきっと遊べるわ」
「わーい、寝ようっと!」