
「カツベン!」 周防正行監督 ☓☓☓ 東映
新作ごとに目の付け所が個性的な周防監督が今作では日本にしかいなかったという「活動弁士」を取り上げ、映画が発明されてからトーキーになるまでのほんの一時期にスポットを当てコメディに仕上げました。
子どもの頃から活動映画に魅せられていた染谷俊太郎(成田凌)はおとなになってからはなんとニセ弁士として泥棒一味の片棒を担いでいました。ある時、大金とともに逃げ出した俊太郎は潰れかけていた小屋青木館の夫婦(渡辺えり、竹中直人)に拾われます。呼び込みや掃除などの雑用をしていましたが、泥酔して眠り込んでしまった弁士(永瀬正敏)の代役として舞台に上がり観客の喝采を浴びるのでした。弁士として活躍が期待された矢先、かつての泥棒仲間が大金を取り戻しに現れます。一方青木館はヤクザが牛耳るライバル館に次々弁士を引き抜かれていくのでした。どっちを向いてもトラブルだらけの中、幼馴染の梅子(黒島結菜)との再会が俊太郎の心を揺さぶるのでした。
あれこれ事件がてんこ盛りすぎです。泥棒一味とのいくつかのエピソードはいくつか割愛し、「活動弁士」の魅力をもっと見せても良かったのではないかと思います。フィルム映画については「編集が自由にできる」といういい点も燃えやすいという弱い点もストーリーの中でわかりやすく見せていました。
タバコは、主役級では売れっ子弁士役の高良健吾が一度喫煙したくらいですが、観客席からいくつもの紫煙がモクモク上がり、そればかりが気になってなかなか内容に集中できませんでした。確かに当時はそうだったのかもしれませんが、タバコの場面だけ忠実に再現するのはなにか別の意図があるのではないかと勘ぐってしまいます。特に俊太郎が子役の場面でも同様に煙が上がっていて職場で無理やり受動喫煙の健康被害を受けている姿は子役たちへの虐待、それも監督という権力を持つ立場の大人からのパワハラではないかと思います。こういう作品に芸術文化振興財団から助成金が出ているのも納得しかねます。