無煙映画を探せ  

映画のタバコシーンをチェック。FCTC(タバコ規制枠組条約)の遵守を求め、映画界のよりよい発展を願うものです。

家族はつらいよ

2016-03-14 | 2016日本語映画評


「家族はつらいよ」 山田洋次監督  ☓☓

 「東京家族」と同じメンバーですが、「~はつらいよ」のタイトルから連想されるように今作は喜劇としました。
 40年以上連れ添った妻(吉行和子)が誕生日に夫(橋爪功)にねだったのは「離婚」でした。同居している長男夫妻(夏川結衣、西村雅彦)、税理士をしている長女夫妻(中嶋朋子、林家正蔵)、そして次男(妻夫木聡)はやっとプロポーズをし、両親に挨拶に来た婚約者(蒼井優)も交え一同揃って家族会議を開きます。いわゆる熟年離婚の行き着く先はどうなるのでしょうか。
 「男はつらいよ」では毎作その時代の矛盾や弱者たちが取り上げられ、また権力への風刺も織り込まれ社会的な意味もある喜劇でした。しかし、この作品は笑いのツボを踏襲しているだけで単なる熟年離婚に振り回される家族を描いただけの意味のない作品となってしまいました。
 特に女性の描き方は全くの「昭和」そのもので、小津安二郎監督の「東京物語」での原節子が脚光を浴びたのはあくまでもあの時代(1953年)としては革新的だったというだけです。それを60年以上立って同じような女性像を描いても古臭いだけです。ラストで再び甲斐甲斐しく夫の世話をする妻の姿には呆れてものがいえません。共同脚本の平松恵美子は何のための共同脚本だったのでしょうか。今の社会にはたくさんのひずみや搾取があります。それを可視化することができなかった山田洋次の作品を観て満席の観客は何の元気ももらえず肩を落として帰っていったように思います。
 タイトルデザインだけはちょっとおしゃれでしたが。
 タバコは、橋爪功ひとりが何回か喫煙します。それが原因か救急車で運ばれることになります。しかし、その時の医者(笑福亭鶴瓶)は「酒はいけません。」と釘を刺しますが、タバコについては触れず、結局退院するとまた喫煙してしまいます。次男の婚約者は看護師という立場にありながら、その喫煙について何も言いません。ひとこと「タバコは毒ですよ」くらい言って欲しかったです。愛犬の前でも喫煙し可哀想でした。
 

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暗殺の森

2016-03-03 | 2016外国語映画評


「暗殺の森」(1970年) ベルナルド ベルトリッチ監督 伊仏西ドイツ ☓
 
 日本では1987年の「ラストエンペラー」で有名なベルトリッチ監督の40年以上前に公開された名作のデジタルリマスター版です。
 第二次世界大戦前夜のヨーロッパを舞台に少年期の罪の意識を抱えながら、おとなになった青年がファシストの暗殺者へと変貌していくさまを描きました。命令には冷酷に従うマルチェッロ(ジャン ルイトランティニャン)は反ファシズムの大学教授暗殺を命じられ、教授夫妻に近づきます。しかし、若く美しい夫人(ドミニク サンダ)に心を奪われます。一方、マルチェッロはプチブルの娘との婚約の話も進んでいました。愛しい気持ちと絶対的な命令の間で揺れる気持ちを暗く寒々しい風景で描いています。
 息を飲むような美しい場面とくすんでうら寂しい風景がどちらも心に残る作品で「映画は芸術である」ということを再確認させてくれます。デジタルリマスターという技術のおかげで名作が復活するのは嬉しいことです。
 タバコは、何人かが喫煙しました。製作の時代を考慮し(☓)です。


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シェル・コレクター

2016-03-01 | 2016日本語映画評


「シェル・コレクター」 PG12 坪田義史監督 日米合作 △

 離島で孤独に暮らす盲目の貝類学者に訪れた奇妙な体験を不思議な映像で描きました。
 美しい貝に魅せられ日々貝拾いをしている学者(リリー・フランキー)は海岸に流れ着いたいづみ(寺島しのぶ)を助けます。彼女は奇病を患っていましたが、イモガイの毒で治ってしまいます。それがうわさとなり同じ奇病の人が押し寄せます。その中には息子の光(池松壮亮)もいました。学者の静かな生活は一変してしまうのでした。
 海の中や緑の美しい映像に対して軍用機など環境を破壊する戦争の映像などが特殊に加工され対照的に描かれます。奇病も実はその環境破壊の影響なのかもしれません。また、それを治すのが貝という生命が持つ毒だとするならば、私たちは戦争などしている暇はないのではないでしょうか。「基地があるから戦争がある」というセリフもありました。
 タバコは、冒頭でボートの配達人が喫煙しました。(△)
 


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俳優 亀岡拓次

2016-03-01 | 2016日本語映画評


「俳優 亀岡拓次」 横浜聡子監督 ☓☓☓☓☓・・・モクモク賞候補

 声がかかればどんな役でも引き受けるベテラン脇役俳優の夢と現実を描きました。
 37歳独身の亀岡(安田顕)はさまざまな映画監督の作品に脇役として重宝に使われていました。乞われればどこの現場にも出かけ、どんな役でもいやがらず淡々と演じていました。長野へロケで出かけた際居酒屋のあづみ(麻生久美子)と出会い一目惚れしてしまいます。酔いつぶれて夢を見ていざ長野へと出かけますが・・・。
 「すんません」が口癖で気弱な性格に救われて地味に生きている、だけの物語でした。名脇役らしい場面がもっと楽しめるのかと思いましたが、軽く流されありふれた恋物語に落ちてしまい残念です。
 逆のパターンで、唐沢寿明が名スタントを演じた「イン・ザ・ヒーロー」は、映画製作の裏話が映画ファンには興味深く楽しめましたが、今作ではそういう面白さもなく、監督のスタイルの違いなども全然伝わって来ませんでした。「予告編」の面白さにだまされました。安田顕は「ビリギャル」のいやみだけど約束はしっかり守る教師役のような「主役を引き立てる役」に徹した方がいいのでは。
 タバコは、主役の安田が「すんません」とそばにいる人から常にもらいタバコをしていました。吸わなかったのが麻生久美子ぐらいでその他の主要な配役はほとんどが喫煙していました。もちろんタバコをくわえるだけ、の人も数人いましたが、明らかな「タバコ宣伝映画」でした。
WHOの勧告がニュースになり、妙に勘違いした映画製作者が、「権力に挑戦」とばかりにタバコ宣伝に乗せられそうです。日本ではタバコ宣伝そのものが権力への迎合なのですが。 


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