「家族はつらいよ」 山田洋次監督 ☓☓
「東京家族」と同じメンバーですが、「~はつらいよ」のタイトルから連想されるように今作は喜劇としました。
40年以上連れ添った妻(吉行和子)が誕生日に夫(橋爪功)にねだったのは「離婚」でした。同居している長男夫妻(夏川結衣、西村雅彦)、税理士をしている長女夫妻(中嶋朋子、林家正蔵)、そして次男(妻夫木聡)はやっとプロポーズをし、両親に挨拶に来た婚約者(蒼井優)も交え一同揃って家族会議を開きます。いわゆる熟年離婚の行き着く先はどうなるのでしょうか。
「男はつらいよ」では毎作その時代の矛盾や弱者たちが取り上げられ、また権力への風刺も織り込まれ社会的な意味もある喜劇でした。しかし、この作品は笑いのツボを踏襲しているだけで単なる熟年離婚に振り回される家族を描いただけの意味のない作品となってしまいました。
特に女性の描き方は全くの「昭和」そのもので、小津安二郎監督の「東京物語」での原節子が脚光を浴びたのはあくまでもあの時代(1953年)としては革新的だったというだけです。それを60年以上立って同じような女性像を描いても古臭いだけです。ラストで再び甲斐甲斐しく夫の世話をする妻の姿には呆れてものがいえません。共同脚本の平松恵美子は何のための共同脚本だったのでしょうか。今の社会にはたくさんのひずみや搾取があります。それを可視化することができなかった山田洋次の作品を観て満席の観客は何の元気ももらえず肩を落として帰っていったように思います。
タイトルデザインだけはちょっとおしゃれでしたが。
タバコは、橋爪功ひとりが何回か喫煙します。それが原因か救急車で運ばれることになります。しかし、その時の医者(笑福亭鶴瓶)は「酒はいけません。」と釘を刺しますが、タバコについては触れず、結局退院するとまた喫煙してしまいます。次男の婚約者は看護師という立場にありながら、その喫煙について何も言いません。ひとこと「タバコは毒ですよ」くらい言って欲しかったです。愛犬の前でも喫煙し可哀想でした。