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「恋人たち」 PG12 橋口亮輔監督 ☓☓☓☓☓ PP JT
映画評でタバコが登場することはわかっていたので鑑賞の優先順位が低かったのですが、「キネマ旬報」でベストワンになったので、一般の批評家たちが選ぶ基準を勉強するために観ました。
妻を通り魔に殺されてから橋梁点検というまっとうな仕事をしているにもかかわらず、弁護士への費用などで経済的にも逼迫し、生きることにも絶望しているアツシ(篠原篤 キネマ旬報新人俳優賞受賞)、パートで弁当屋で働き夫と姑の世話をしている皇室と少女趣味のイラストや小説を書いている瞳子(成嶋瞳子)のちょっとした不倫、アツシが相談するゲイの弁護士(池田良)と恋人との別れ、などが描かれています。
ほとんど新人と思われる俳優が何人かの主役を演じ、そういう意味では新鮮な作品です。新鮮といえば「皇室」ネタが取り上げられているのも新鮮です。ただ、市井の中でそれぞれ悩み苦しみながらも生きている人々を描いているだけでラストでも何も問題は解決せず、「目をつぶったり」「諦めたり」することで「これからも生きていく」でしかない作品です。
ベテランの脇役、光石研、安藤玉恵、黒田大輔、山中崇、などがそれぞれの役どころをしっかりおさえていました。
個人的には、夫が食事中に茶碗を投げるなどの暴力は本当に許せないです。こういう暴力は放っておいていいのでしょうか。
タバコは、あからさまにJTがスポンサーになっているだけに登場人物の殆どが喫煙者という作品でした。タバコ会社から資金を受けているような作品に「芸術文化振興財団」が補助金を出すというのも日本ならではの奇妙な対応です。