またも読書の話。図書室で探して目についた本を。今回も伊坂幸太郎さんの作品。
クジラアタマの王様。
内容的にはこれまで見たことのない感じの作品です。通常文学作品は文字で風景をイメージさせます。この作品は途中途中に「挿絵」というか「イラスト」というかがあります。数ページにわたって「マンガ」のようなストーリーが。その部分と文章のリンク。作者の挑戦が示させれています。
ストーリーはまるで今の日本を示しているような感じ。「新型インフルエンザ」が流行した時の話がありました。それはまるで今の日本での「コロナ禍」と同じような状況。最初に感染した人が「絶対悪」のように捉えられる。家や個人情報が特定され必要以上にバッシングを受ける。はぁーってなります。
話は読んでもらってからかなと。「現実」と「夢」が複雑に絡み合う。が、「夢の中で勝ったら現実でも勝てる」という眉唾ものの話が出てきて。目の前で起こっている事に対して「夢の中で勝てればこちらでも勝てる」というやりとり。最後はかなり上手くまとまったと思います。「現実で勝てば夢の中でも勝てる」という話になる。やはり今やるべきは目の前のことに対してどうするかです。
相変わらず様々な部分に伏線が貼られていてそれが回収される。「インフルエンザ」の話であったり、「マシュマロ」の話であったり。繋がりが出てくるので一気に読むことができます。
ファンタジー的な要素もありながら、「今」と「人の在り方」について考えさせられる。ここは本当に大きな話かなと。本当はあれこれの場面に触れたいのですが。「猫が鼠と戦った」というお寺に行ったところから全てがつながっていく。「え?この人も?!」みたいな(笑)。書きたいですがネタバレは避けたいので。
ただ「夢」と「現実」のリンクだけではない。作品の内容と我々が生きている世界が「リンク」している。この作品自体は2019年。コロナ禍がまだそこまで大きな話になっていなかった時だと思います。その時に「最初の感染者」に対するマスコミの対応であったり、「炎上」と言われる何か起きた時に過剰にバッシングする。叩くだけ叩いておいて事実と違ったら「あーそうなの」みたいな感じで流す。それも「現実」です。
いい作品でした。また読みたいと思います。