照る日曇る日第863回

1928年12月4日から翌年の6月19日まで大阪毎日新聞と東京日日新聞にリレー連載された「蓼喰ふ虫」を中心に変質狂的で奇妙な味わいを持つ怪奇小説「青塚氏の話」やもしこれが完成されていたらどんなに素晴らしい作品になっただろうち惜しまれる未完の傑作「顕現」ややはり未完に終わったスタンダールの「カストロの尼」やド・クインシーの「藝術の一種として見たる殺人に就いて」の興味津津たる翻訳などを美味しいおかずに添えた第14巻である。
「蓼喰ふ虫」は作者が相性の悪い妻君を相性の良さそうな知人に譲渡しようとして腐心した実話をもとに創作された中編であるが、終生女性に対して紳士的というより女性的に振る舞った作者の本心が吐露されており、淡路浄瑠璃のエピソードも効果的に挿入されていて面白く読める。
ぜんたいをとおして、離縁寸前の主人公夫妻の醒めた性愛と老人(妻の父親)と若い妾の熱いそれが対比されるように描かれているのだが、最後にどういう風の吹きまわしか、蚊張が吊られた真っ暗な部屋の中で男と義父の妾が二人切りになる。
「襖が明いて、五六冊の和本を抱へた人の、人形はらぬほのじろい顔が萌黄の闇の彼方に据わった」という二行で終わるこの小説を読みながら、胸をどきどきさせない人はいないだろう。
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