ある晴れた日に第378回
身自らやられない限りは所詮他人事
君も僕も日一日と歳をとり顔面ぐちゃぐちゃのでぶでぶとなって死んでゆくのさ
「百犬図」数えてみればおよそ六十 五捨六入しましたね若冲さん
リヒテルのバッハやハイドンが腐ってゆく盤面に醜い亀裂が生じて
トランプがジョーカーを切る黒魔術世界はたちまち暗黒と化す
なんとか宮家のなんとか嬢がなんとか展を見に行ったとさそれがどうした
喉も潰れよ弦も切れよ江戸の昔をいまにかえす「絵本太功記」
大いなる歯痛に耐えつつ眺めたり国立劇場「絵本大功記」
無くなると聞けば急に食べたくなるあの懐かしい明治のサイコロキャラメル
1964年自由が丘の道場に私が預けた柔道着いまどこにあるんだろう
新宿のバー「ペルル」に「丹波高原」の名前で預けたジャック・ダニエル誰に呑まれてしまったんだろう
半世紀ぶりに旧全共闘仲間とそぞろ歩く皐月朔日新宿の夜
広島で米大統領が読みあげる嗚呼堂々の平和哲学
障ぐあいの本質などはさておきていたずらに屋上より垂らす怪しげな眼薬
正月の家族旅行で会議する仕事熱心な我らが都知事
全身をガンに冒された老人が今日もリストを弾いている
もしかすると大雨になるのではないかと案じていても朝には予報通りに晴れている
十指に余る巨乳を揺らすねえチャンがセフレになろうよと迫る広告
酔っ払いが切断された両足を呆然と眺めている昼下がりの小田急桜が丘駅
デロンギのエソプレッソマシン30周年断線しつつもまめに仕える
メーデーメーデーと救助信号を発しつつ労働者たちはとぼとぼ歩く
円よ上がれ株価よ下がれ安倍蚤糞を粉砕するべく
その方が上手な歌になるけれど稚拙なままにしておきたいんだ
憲法を冒涜し侮辱し毀損する者どもを厳罰に処すべし五月三日
ゲートルを足にぐるぐる巻きながら壮丁は兵士になっていった
もう二度とカメラを向けたくない光景にどんどん変えていく赤いブルドーザー 蝶人