音楽千夜一夜 第372回
イタリアの指揮者カルロ・マリア・ジュリーニがソニーに録れた晩年の演奏を聴きました。
収められているのはベルリンフィルとのモザール3大交響曲、スカラ座のオケと録音したベートーヴェンの9番を除く交響曲集、バイエルン放響とのシューベルトの交響曲、バッハのロ短調ミサ曲、コンセルトヘボウとのドボルザークの7,8,9番などですが、どれも遅いテンポで楽譜をじっくり重々しく鳴らしきっています。
こういう行き方はカラヤンとか昨今の若手指揮者のアプローチの対極に位置するもので、演奏技術の洗練に目もくれない愚直さ、謹厳実直で生真面目な音楽への迫り方において、かつての朝比奈隆やいまのベルナルド・ハイティングのそれに似たところもあります。
スカラ座とのベートーベンなどはその最たるものですが、聴いて面白いかどうかはおのずから別問題。私はこれら高い評価を受けた最晩年の演奏よりも、青年時代のモーツアルトのオペラなどのほうが遥かにエキサイトするのですが。
台風が来ないと心配していた奴がいたけれどほら見ろどんどんやってきたじゃないか 蝶人