あまでうす日記

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新潮新装版・石田&清水校注「源氏物語三」を読んで

2017-06-15 14:24:57 | Weblog


照る日曇る日 第971回


本書であつかうのは「澪標」「箒木」「関屋」「絵合」「松風」「薄雲」「朝顔」「少女」「玉蔓」の9つの巻です。

皇統紊乱で三年間の須磨明石流謫を余儀なくされた源氏は、帰京後はじめは処女の如く終わりは脱兎の如き復活復権を遂げ、実子の冷泉帝を軸にした不動の権力の座をわがものとし、実務を内大臣にゆだねて六条に豪華絢爛なハーレムを立ち上げるのです。

東京ドーム何百倍の広大な敷地には、春夏秋冬の四季折々のうつくしい庭と木々と花々が配され、贅を尽くした四つの邸宅には、35歳の男ざかりの源氏と紫の上夫妻をはじめ、里帰りした中宮、明石の上、花散里の四人の女君を中心に、酒池肉林、阿鼻叫喚の優雅で華麗なハーレム・ノックダウンが夜な夜な繰り広げられたのです。

ここで特筆すべきは、なんでも源氏のいいなりになる都合のよいお人好しの女、花散里の存在です。彼女はその丑寅の館に、末摘花、空蝉(既に出家の身ですが)、玉蔓(夕顔の娘)、加えて意地悪な内大臣に雲居の雁を拉致されて傷心の日々を送る長男夕霧まで一手に引き受け、文句の一つもいわずに彼らをケアしメンテしているのですから、源氏としては大助かりだったことでしょう。

さりながら、自分の好きな女たちをいかに広大とはいえ一つの屋敷に囲うとは、雄の所有欲の誇示ならんか。ペルシアや中国、本邦後代の大奥に先例後例があるとはいえ、この男、いったいどういう神経をしているのかしらん。

ちなみに光源氏は、その美貌もさることながら、超絶的な性的魅力で並みいる女どもを悩殺したらしいことは、六条御息所をば、抜かずの何発かを何回も何回も繰り返してヤッタとき、あの高貴なクールビューティときたら、朝帰りする源氏を起きて見送ることができなかったことからも分かるでせう。

紫式部は藤原道長の情婦でありましたから、源氏のモデルは道長であり、(式部を含めた)源氏の女たちは、いずれも源氏=道長の強烈な性的威力に拝跪していたことを忘れてはなりません。

    自らの首を絞めるとはつゆ知らず彼奴らが決めた狂暴罪 蝶人


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