ある晴れた日に 第529回

この世では絶対的にあり得ない「完全かつ最終的な解決」
「トイレのあと洗面台を奇麗にせよ」と芦田淳氏のたまう
右翼とは席を同じうせずという奇妙な悪癖今に残れり
半蔵門の国立劇場のわが指定席は3階12列60番なり
傾ける壺より流る白き滝果てなく落ちて音は聞こえず
Vermeerとはおらっちのことかとフェルメール言い
1122 2525 2951 9674 願いを込めてナンバープレート
町内のどこいらへんに行ってるの私が廻した回覧板
日曜の朝から草を刈る人のエンジンの音ひたすら煩し
塚本は絢爛豪華なシェヘラザード寺山は恐山に鳴るグリーグの抒情小曲
この節はラフマニノフ的ロマンチストは世界のどこにもいなくなった
地下駅に轟きわたる騒音を我ら黙してひたすら耐えおり
格下に取りこぼさない人だけをチャンピオンと人は呼ぶなり
今日だけはカチャーシーを踊っていいぞ玉城デニー明日からぐあんばれ
金正恩と恋に落ちたトランプさんけたくそ悪いぞブタブタ同士
北国の緑のベール脱ぎ捨てて大地は猛き姿現す
全世界をハラハラドキドキさせてやるそれだけがトランプの生甲斐
中原の中也が死んだ病院で今年も健康診断をする
幽冥の境で招くや曼珠沙華
格別の感慨もなく過ぎてゆく昨日と同じ誕生日の今日
おこがましくもジャーナリストを名乗る君 生きながら殺される覚悟はあるか?
この一番というところで負けてしまうそういう人は昔からいた
中国の観光客で一杯だ江ノ電のなか江の島のなか
昼間からライトを点けて走っている法令順守の車たちは
一面の荒れ地に戻りし庭園に餌を求める一羽のヤマバト
予報士が明日は晴れたり曇ったり所によって俄か雨という
「ヘリ空母」いつ空母に化ける変わるのか「いずも」に群がるカメラマンたち
レストランの厨房で働く人々はいつどんなものを食べているのか
うずたかく書斎に積んだ本たちに一指も触れず死んでいくのか
土日には外出しなくなりましたこの街は観光客のもの
霹靂は晴天の日にやって来て我ら茫然空仰ぐのみ 蝶人