
蝶人物見遊山記第294回
「戦時下の博物館と守り抜かれた名宝」と副題された開館90周年記念のコレクションです。
鎌倉は幸いにも米軍の空襲に遭わなかったのでじたばたせずとも「名宝」は護持されたわけですが、当時はそんなこととは夢にも思わないから、市長はじめ関係者たちが右往左往していたことが展示された書類を見ると分かります。
それより戦時中は、戦意高揚のための「元寇展」などを勇躍開催していたようなので、いささか微苦笑を誘うのですが、いや待てよ、このテーマはもしかすると本展の担当者が、私と同様に「今は戦前で間もなく戦争がやって来る」という瞬敏なる時代認識を抱懐しているからかも知れん、と思い当り、「さすが鎌倉国宝館の館長!」と、「いいね印」を3ヶ程送ってやりたくなりました。
しゃあけんど、その割には会場はふだんとあまり変わりがなかったのですが、強いていうならく常楽寺の本尊「文殊菩薩坐像」と東慶寺の「水月観音菩薩座像」、それと円覚寺の「北条時宗書状」が図抜けて面白かったのです。
なお本展は来る12月2日まで同館にて開催中。
時宗の書跡拙し国宝館 蝶人