照る日曇る日 第1169回
22帖「玉鬘」から41帖「幻」までを扱う中巻は、源氏が権力の絶頂を極めながら生命の輝きを失い、ついにはこの世から姿を消してしまうまでを扱っている。
それは玉鬘が鬚黒のものになり、源氏の妻になった皇女女三の宮が柏木に犯されて子(薫)を胎み、刀折れ矢尽きた紫の上に続いて、我らが主人公光源氏が「雲隠」するまでの波乱万丈の物語であるが、こ訳者の角田光代は、その文学的センスを巧みに生かして、この全巻随一のクライマックスを見事な現代日本語に置き換えている。
また巻末に付された加藤克己の「解題」、とりわけ池澤夏樹の「解説」が才気煥発の名文章で、林望の訳業に匹敵する本編の出来栄えに錦上花を添えているようだ。

ヴ・ナロード サルガッソーで人民の海に潜ってみたがホンダワラがユラユラ揺れているだけだった 蝶人