照る日曇る日 第1262回
「世継曾我」「曾根崎心中」「心中重井筒」「国性爺合戦」「心中天の網島」の6つの浄瑠璃を集成。いずれも近松が心血を注いで書き上げた傑作で、このシナリオを読んでいるとまざまざと舞台の人形と大夫の朗唱と太棹の響きが聞こえてくるような気がする。
近松に心酔した信多純一氏の校注と解説がまた素晴らしく、江戸時代の浄瑠璃芝居の小屋や芝居の具体的な展開について述べ、「心中重井筒」と伊勢物語の関連を丁寧に跡付けたりするくだりには目から鱗が落ちる思いがする。
さりながら、もしも氏が眼疾に侵されなければ、本書は上下2巻の規模で世に贈られたはずと思えば、隴を得て蜀を望むの嘆を抱かざるを得ないのである。
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