あまでうす日記

あなたのために毎日お届けする映画、本、音楽、短歌、俳句、狂歌、美術、ふぁっちょん、詩とエッセイの花束です。

すべての言葉は通り過ぎてゆく 第69回 

2019-06-09 13:29:11 | Weblog


蝶人狂言綺語輯&バガテル―そんな私のここだけの話op.312



「剣璽等承継の儀」は天皇家固有の神道儀式だから、国家とは無縁の儀式であり、その場に三権の代表者等が出席すること自体が政教分離を命じた憲法第20条1項、3項、および第89条に違反している。5/1

おお人々よ、「国の幸せと国に一層の発展、そして世界の平和を祈る」という言葉を下支えしている社会的・歴史的・階級的・思想的・人間的基盤について新しい目を向けてみようではないか。5/2

おいおい、なんで伝統的な友好国のイランから石油を輸入しないんだ。さすが令和一代男、安倍蚤糞。国民ことに沖縄県民の声は全く無視するくせに、トランプから言われたことなら、どんな理不尽なことでもハイハイと服従するんだね。5/3

平成は、日本中が土地投機に踊ったバブル経済の崩壊で始まった。それでも1990年代前半、日本経済は上向くと国民の多くが信じていたし、この国にはまだ細川連立内閣を誕生させて55年体制を終わらせるくらいのエネルギーはあったのだ。高村薫(朝日新聞19/4/30朝刊より)5/4

とはいえ、急激な景気後退は日本経済の零落を明るみに出し、90年代後半には山一証券や日本長期信用銀行などが廃業に追い込まれて、日本社会は「失われた10年」とささやかれ始めた。高村薫(朝日新聞19/4/30朝刊より)5/5

レイワとかテンノウとかアベとか、嫌なことを忘れるために久しぶりにカール・ベームの指揮でモザールの「レクイエム」を視聴。劇伴はウィーンフィルではなくウィーン交響楽団だが、ヤノヴィッツ、ルードヴィヒ、シュライヤー、ベリーの独唱とウイーン国立歌劇場合唱団の献身が、空前絶後の感動を呼ぶ。5/6

賃金が上がらなくなり、終身雇用が崩れ始めて非正規雇用が増加するにつれて、生活にも閉塞感が広がって、日本人は普遍的な価値観より、内向きで刹那的な生き方へと傾斜していった。死傷者6千人の地下鉄サリン事件でさえ市井と無縁のカルト事件として片付けてしまったことがそれを如実に物語っている。高村薫(朝日新聞19/4/30朝刊より)5/7

さらに「ウィンドウズ95」がもたらしたネット社会の爆発的拡大と進化は、私たちが日常的に接する情報量を飛躍的増大させ、人と人との物理的な距離を不可視化して、コミュニケーションのかたちを一変させた。高村薫(朝日新聞19/4/30朝刊より)5/8

生まれながらに特別な役割を持つ人の存在を認めることは、生まれながらに卑しい人の存在を認めることと同じだ。後藤正文「朝からロック」(2019/5/8朝日新聞朝刊より)5/9

エヴァ・ガードナー、ジェーン・マンスフィールド、アニタ・エクバーグ、ジーナ・ロロブリジダ、ラクエル・ウェルチ、ソフィア・ローレンたちと結婚した男性は、根性があるなあ。5/10

そしてiPhoneの発売から11年、スマートフォンはいまや身体の一部になり、私たちはまさに日常と非日常の境目が溶けだした世界を生きている。大人も子供も日夜スマホで他者とつながり、休みなく情報を求めて指を動かし続ける。高村薫(朝日新聞19/4/30朝刊より)5/11

そうして現われては消える世界と戯れている間、私たちはほとんど何も考えていない。スマホは、出口が見えない社会でものを考える苦しさを忘れさせる、強力な麻酔になっているのである。(高村薫・朝日新聞19/4/30朝刊)5/12

久しぶりに「素人喉自慢」を見たが、鐘一つがなくなって、どんなに下手くそでも最低2つ、まあまあ程度の歌に3つも鐘が鳴る。そして出演者全体がチームのようになって手拍子を打ったりしている。一体どうなってるんだ、公凶放送。5/13

平成は阪神淡路大震災や東日本大震災をはじめ未曾有の自然災害が頻発した時代だが、大都市神戸が震災で火の海になっても、東北沿岸で1万8千人が津波に呑まれても、福島第一原発が全電源を失って爆発しても、日本社会の思考停止は基本的に変わることはなかった。(高村薫・朝日新聞19/4/30朝刊)5/14

妻君が「2階でムカデを1匹殺したわ」というので、「そういえば僕もこないだ1匹殺したな」と返事したら、「それならちょうどよかったわ。いつも2匹セットでいるものね」とまた返事した。夫婦の会話5/15

妹よ、僕は樹木と蔓の囲む硝子玉にように明るい空間の、核心をなすひとつを見たのだ。そのなかには、妹よ、娘に成長したきみが入っていた。きみは燃えるように美しい恥毛で下腹部をかざっているほかは、全裸の躰じゅうをバターの色に輝かせて、その傍らには、再生し回復した犬ほどの大きさのものがつきそっていた。大江健三郎「同時代ゲーム」5/16

復興の名の下、被災地では大量のコンクリートを投じた巨大堤防の建設が進み、原発は各地でなおも動き続け、いつの間にか持続可能な新しい生き方へ踏み出す意思も機会も失って、私たちは今に至っている。(高村薫・朝日新聞19/4/30朝刊)5/17

「とんとある話。あったか無かったかは知らねども、昔のことなれば無かった事もあったにして聴かねばならぬ。よいか? はい。」(柳田国男が蒐集した昔話を語り始める際の決まり文句)大江健三郎「M/Tと森のフシギの物語」「同時代ゲーム」より5/18

思えば、この30年間に世界経済は激変し、中国のGDPは今や日本の3倍である。日本のお家芸であった製造業の多くは苦境にあり、次世代の5G技術でも米中に遠く及ばない。(高村薫・朝日新聞19/4/30朝刊)5/19

世界が猛烈なスピードで変わり続ける一方、この国は産業構造の転換に失敗し、財政と経済の方向性を見誤ったまま、なおも経済成長の夢にしがみついているのだが、老いてゆく国家とはこういうものかもしれない。(高村薫・朝日新聞19/4/30朝刊)5/20

思想家の加藤典洋氏が71歳で死んだ。もう半世紀以上前、彼がまだ国会図書館に勤務していた頃、東京文化会館で若杉弘指揮都響でブラームスの交響曲を聴いた夜のことが懐かしく思い出される。門君と北島君も一緒だった。黙祷。5/22

「命ちりじり 日ちりじり」by近松半二「妹脊山婦庭訓三段目・妹山背山の段」より5/23

自民党の一党支配に逆戻りして久しい政治がそうであるように、この国にはもはや変化するエネルギーが残っていないのだ。(高村薫・朝日新聞19/4/30朝刊)5/24

その一方で深刻な少子高齢化も、企業の多くに賃上げの体力がないまま進む貧困と格差の拡大も、とうの昔に破綻している原子力政策も、平成の30年間に、私たちが見て見ぬ振りをし続けた結果の危機でもある。(高村薫・朝日新聞19/4/30朝刊)5/25

平成が終わって令和が始まる今、何よりも変わる意思と力を持った新しい日本人が求められる。どんな困難が伴おうとも役目を終えたシステムと組織をここで逐次退場させなければ、この国に新しい芽は吹かない。常識を打ち破る者、理想を追い求める者、未知の領域に突き進む者の行く手を阻んではならない。(高村薫・朝日新聞19/4/30朝刊)5/26

全世界に史上最大の災厄を齎しつつある人物を国賓に迎えて鼻高々の、この国に史上最大の災厄を齎しつつある人物を眺めていると、つくづく世も末だと思わずにはいられない。5/27

去年の今頃は、ヘイケボタルはもちろんだが、滑川には若アユの大群が押し寄せ、ウグイスに混じって私の大好きなホトトギスが鳴いていた。初夏のわが目を楽しませてくれるのはホタルだけということか。5/28

テレ朝「白い巨塔」は、原作、脚本、演出が3拍子揃ってなかなか面白かった。私の嫌いな岡田准一が熱演、やはり大嫌いな沢尻嬢まで好演、ケンイチなど他の役者も良かったが、
原作と違って「病死せずにゴーマンかまし続ける超悪党財前」の姿を見たかったずら。5/29

今日が終われば明日が来て、またその次に明後日という日が来ることが、なんか空恐ろしいことのように、あえていうなら、奇跡のようにも思われる。いつかは絶たれる、細く長い、1本の灰色の線。5/30

お隣の逗子で生まれたピアニスト宮沢明子、ベルギーのアントワープに死す。78歳。すでに泉下の人となった宇野功芳が激賞しようがしまいが、かつてトリオ・レコードから出ていたモザール全集やハイドンのソナタは良かった。哀悼。5/31

     軍艦も戦闘機も要らんからその全額を年金に廻せ 蝶人
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