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音楽千夜一夜第446回
リヒヤルト・シュトラウス、ベートーヴェン、モザール、ウエバー、それに「指輪」以外のワーグナーのオペラを集めた43枚組のCDを、例によってちびちび聴きましたが、どれもこれも涙がチョチョ切れるなかったのは、恐らく演奏のせいではなく、このVENIASという怪しいレーベルの録音&リマスターのせいでしょう。
圭角を鑢でこそぎ落してぐにゃぐにゃに柔らかくなった音は、耳には優しくてもかのガッツ・マエストロの真情、あの荒らぶる魂の震動を直截に伝えることは出来ず、2002年に亡くなった愛犬ムクの耳には届いても人間の心には届かない。
口直しに96年5月16日に朝比奈隆がシカゴ響に客演してブルークナーの5番を振った映像を見物したのですが、これは良ござんした。
支配人ヘンリーフォーゲルが彼の「アルプス交響曲」を聴いて感銘を受け、当時のシェフ、バレンボイム(彼は朝比奈が希望した8番を自分が振ると称して振らせなかった。意地悪!)を説得して実現した曰くつきの歴史的演奏会ですが、まことに感動的ずら。
フィナーレのショルテイ仕込みのブラスの咆哮もさることながら、第2楽章の弦と管のインチメイトな対話が絶品でした。これは当時の大フィルなど日本のオケではもたらし得なかったすこぶるつきの感興ではないでしょうか。
初めてのデモは砂川基地なりき滑走路囲む鉄条網 蝶人