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音楽千夜一夜第447回
1956年、57年、58年のバイロイト音楽祭における「リング」の実況録音を立て続けに聞いた。幕末ではそれなりに燃え上がるが、終始冷静であり、3年とも基本的には同じパターンの演奏である。
それにつけてもおやつはカールではないが、VENIAS盤のモノラル録音のありようは、まるで人工知能によるクナの再生を聞かされているようで、その安直な聞きやすさがかえって演奏の真実味を削ぐという逆効果をもたらしているようだ。
私としては自分が推薦できないCDについて記事にするのは精神衛生上もよくないのだが、なんせ敬愛する指揮者の決定版と信じたそれなりに高価な「箱買い」だったし、それだけにどたまに来て口惜しいので、いわゆるひとつの「反面教師」的録音としてあえて言及しておきたいのずら。
世間では「どうしようもない子」と言われてるその「どうしようもなさ」を抱きしめてやる 蝶人