闇にまぎれてtyojin cine-archives vol.2045~53
1)成瀬巳喜男監督の「乙女ごころ三人姉妹」
川端康成の「浅草姉妹」を成瀬巳喜男1935年に初トーキー化。長女を細川ちか子、次女を堤真佐子、三女を梅園竜子が演じるが、すでに満州国をでっちあげて中国との戦争になだれ込んでいた当時の世相や、浅草のレビューのださい衣裳や振り付けを垣間見ることができて興味深い。
2)成瀬巳喜男「女優と詩人」
1935年製作の童謡詩人!と女優のコメデイだが、あまり面白いとはいえないずら。成瀬もいろいろやたんだね。
3)成瀬己喜男「君と行く路」
1936年のモノクロ映画。舞台は鎌倉で当時の鎌倉駅前が出てくる。三宅由岐子作『春愁紀』という作品を元にした若い男女の悲恋物語だが、好きな同士が一緒になれないことをはかなんで、男女とも別々に自殺するという道行には納得できなかったずら。
4)成瀬巳喜男「桃中軒雲右衛門」
1936年の製作。浪花節の名人が芸のためにはすべてを犠牲にして打ち込む物凄い噺。しかし女を作るのは構わないが病気の妻を「普通の女としてではなく芸人としてい死ね」と伝言するだけで一度も見舞わず、死んでから枕元で浪花節を唸るというのはちと不可解ずら。
5)成瀬巳喜男「雪崩」
駆け落ちしてまで一緒になった女が、大人しすぎて気に食わないと離縁を企む男。人間「辛抱だといさめる父親。大仏次郎の原作というが、どうにも生煮えの1937年の駄作。
6)成瀬巳喜男「女人哀想」
不幸な結婚をして都合のよい嫁として使い倒された入江たか子が、ついに堪忍袋の尾を切らして夫に反逆して家を飛び出す。そのカタルシス!1937年の秀作。
7)成瀬巳喜男「鶴八鶴次郎」
1938年の製作で原作は川口松太郎。
山田五十鈴の鶴八は三味線、長谷川一夫の鶴次郎は新内語りの人気コンビのみならず相思相愛の仲。ひとたびは一緒になって座を立ち上げようとするが、その寸前で若気のいたりで話が壊れる。それから2年、再び2人は高座に上がって再起するが、女の幸せを慮る男が2人の絆を自分から断つのであった。成瀬の演出は見事なり。
8)成瀬巳喜男「あらくれ」
1957年の東宝作品。徳田秋声の原作を水木洋子が脚色し、成瀬のメガフォンで高峰秀子がまことに見事な演技をみせる。「浮雲」とは正反対の役柄だが、どんな逆境にあっても自分らしさを失わず逞しく生き続ける女の姿は美しい。
9)成瀬巳喜男「女の歴史」
モーパッサンの「女の一生」を笹原良三が1963年に巧みに脚色。名優高峰秀子が圧倒的な演技をみせる。賀原夏子、仲代達矢、山崎努、加東大介、宝田明などとのアンサンブルも見事。和解を遂げた高峰と星由里子が並んで雨の坂道を登るシーンは忘れがたい。それにしても昔はいい脇役が星の数ほどいた。
1億が今思うこと一斉に声に出したら物凄いだろう 蝶人