照る日曇る日 第1385回
昔から絵が好きだった作家による美術関連短編集なり。画廊で展覧会を開くとその初日にオープニングパーテーを開くので、この小粋なタイトルがつけられたのだろう。遥かな昔、彼が小原流の機関誌に連載していた全国の美術館巡りのエッセイも、力の籠ったものだった。
さて本書の冒頭「ブリキの男爵」に登場するのは、最近亡くなったばかりの秋山祐徳太子であるが、以下、平出斉(この人は知らない)などの男女の画家やパフォーマーや画廊主、作家である。
いずれも美術関係者であり、そのいずれもが著者の友人知己をモデルにしたと思しく、登場人物の人柄がくっきりと浮かび上がるように、愛情とユーモアをもって肌理細かく描かれ、文壇がなんでこの秀才に芥川賞を与えなかったのかと腹立たしい。
また正統的な私小説?しか書けないといわれていたこの作家が、本作では女性を主人公にした老練な「をんな語り」を披露しているのも興味深い。
小諸なる古城のほとりで悠々自適の作家ではあるが、同級の井出隆選手こそ鬼籍に入ったとはいえ、直木賞作家高橋義夫、美術史家鈴木杜幾子選手が健筆を揮っている現在、超ヴェテラン作家の捲土重来、一大奮起に期待したいものである。
口と歯の間柄ゆえ善きことも悪しきこともすぐに伝わる 蝶人
昔から絵が好きだった作家による美術関連短編集なり。画廊で展覧会を開くとその初日にオープニングパーテーを開くので、この小粋なタイトルがつけられたのだろう。遥かな昔、彼が小原流の機関誌に連載していた全国の美術館巡りのエッセイも、力の籠ったものだった。
さて本書の冒頭「ブリキの男爵」に登場するのは、最近亡くなったばかりの秋山祐徳太子であるが、以下、平出斉(この人は知らない)などの男女の画家やパフォーマーや画廊主、作家である。
いずれも美術関係者であり、そのいずれもが著者の友人知己をモデルにしたと思しく、登場人物の人柄がくっきりと浮かび上がるように、愛情とユーモアをもって肌理細かく描かれ、文壇がなんでこの秀才に芥川賞を与えなかったのかと腹立たしい。
また正統的な私小説?しか書けないといわれていたこの作家が、本作では女性を主人公にした老練な「をんな語り」を披露しているのも興味深い。
小諸なる古城のほとりで悠々自適の作家ではあるが、同級の井出隆選手こそ鬼籍に入ったとはいえ、直木賞作家高橋義夫、美術史家鈴木杜幾子選手が健筆を揮っている現在、超ヴェテラン作家の捲土重来、一大奮起に期待したいものである。
口と歯の間柄ゆえ善きことも悪しきこともすぐに伝わる 蝶人