あまでうす日記

あなたのために毎日お届けする映画、本、音楽、短歌、俳句、狂歌、美術、ふぁっちょん、詩とエッセイの花束です。

チャールズ・ブコウスキー著・中川五郎訳「英雄なんかどこにもいない」を読んで

2020-09-10 11:33:49 | Weblog

照る日曇る日第1461回


本邦未公開、未収録の短編集であるが、抜群に面白い。浴びるように酒を食らい、20歳も年下のとびっきりの美女を朝まで抱いて、前から後ろから3度も4度も気を遣り、しかる後その細部を精妙に描写して三文雑誌用に書き殴り、読んだ男に夥しい精液を溢させ、お互いなんとか幸せに生き延びる。でもただのポルノ作家かといえば、ウノコウイチロウ、カワカミソウクンなどとは全然次元が違う。素晴らしくリアルな文章。セックスの喜びこそが人世最高最大の悦びでることを「追体験」させてくれる、泣けるような稀代の名文なである。
「私はチエーホフ、バーナードショー、アーウイン・ショウ、ゴーゴリ、トルストイ、バルザック、シェイクスピア、エズラ・バウンドなどにとても幻滅させられている。彼らは現実やほんとうの生活そのものを前にして、「文学的な型」をはめようとしているように思える。彼らは人生そのものはひどいものかもしれないが、自分たちだけはうまく切り抜け、自分たちの特別なやり方で語れる限り大丈夫なのだという態度に身を落としてしまっているのだ。それでも問題ない。もしもゲームを楽しみたいだけならば」
我らがブコウスキーに比べたら、ヘンリー・ミラーやヘミングウエイなんか屁みたいなもんだ。


  横須賀のヴェルニー公園の入口で何処を睨むや「陸奥」の大砲 蝶人
コメント
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