照る日曇る日第1468回
平凡出版、マガジンハウスの編集者や雑誌、ライター、イラストレーターなどの活躍からインスパイアーされて描かれた、と思しき3人の女性の物語である。
男社会の壁と抗いながら自己表現の世界を獲得していく先駆者の歩みには作者共々拍手を惜しむものではないが、読み物としては冒頭から途中までの流れがぎこちなく、全体の構成がきちんとしていないために、安心して活字に目を委ねられない。
3人が生きた時代背景も書かれてはいるが、それはどこか紙芝居のセリフや映画の台本のト書きに似ていて、この作家独自の文体による生きた文章とはいえないのである。
そんななか全篇のハイライトは、1968年10月21日の国際反戦デーに主人公の3人が「参加」するシーンであるが、新宿駅騒乱の只中で「普通の」女性にインタビューしたり、服装をスケッチしたりできると考える作者の常識を疑わざるをえない。
今一度復活せよ羽生九段藤井渡辺全盛の世に 蝶人